第79話 暴徒
剣と斧のような武器を手にした梶谷と深町は学生たちの先頭に立ち、
「どけよ、先輩っ!」
「こ、今度は引かねぇからなっ!」
と米村さんに向かって息巻いていた。
どうやらレアアイテムの横取りを企んでいる奴らのリーダーはこいつらだろう。
と、俺の姿が目に入ったようで、
「あっ、柴木っ! やっと出てきやがったな!」
「てめぇ、隠れてんじゃねぇぞっ!」
梶谷と深町が俺に視線を飛ばしてくる。
それをきっかけにして、外にいたほかの連中も、
「柴木、こっちに出てこいっ!」
「お前のせいでハードモードになったんだから、レアアイテムは寄こせよなっ!」
「てめぇに死神のデスサイスなんて渡してたまるかよっ!」
暴徒化したサッカーファンのごとき熱量でまくし立ててきた。
正確な数はわからないが、おそらく百人以上は集まっている。
外にいる連中と米村さんのグループが衝突したら大変なことになる。
俺はそれだけは避けなければと思い、
「米村さん、やっぱりみんなの協力は無しにしてもらえますか。このままだとみんなが危険な目に遭うかもしれないので……」
と米村さんに耳打ちした。
「いや、しかし……」
「大丈夫です、俺なら一人でもなんとかしてみせます」
向こうは百人超、それに比べてこっちは二十人ちょっと。
ぶつかり合ったらこっちに怪我人が出てしまう。
それならやはり俺一人で出ていった方が危険が少ない気がする。
「善くん、でも……」
「絶対に死神のデスサイスは俺が受け取りますから」
死神のデスサイスはドローンで届けられるとメールには書いてあった。
それならば外にいた方が手に入れやすいだろうし、俺も動きやすい。
「だ、だったらせめて僕だけでも協力させてくれないかっ? それでみんなにはここに残ってもらう。それならいいだろう?」
米村さんはそう言って俺の目をじっとみつめてくる。
ここまでずっとお世話になっているので無下には出来ない。
「わ、わかりました……じゃあ、俺と米村さんだけで外に出ましょう」
「ありがとう」
「ってわけだからメタムンはここで待っていてくれ」
『え~』
「頼むよ」
『うーん……わかったよ』
話がまとまったところで、
「おい、何こそこそ喋ってんだっ!」
「てめぇらいい加減にしろよっ!」
我慢の限界とばかりに梶谷と深町が大声を上げた。
「わかったから大きな声を出すなよ。俺と米村さんが外に出る、それでいいだろ」
「へっ、最初からそうすりゃあいいんだっ」
「死神のデスサイスはおれ様が奪い取ってやるから、覚悟しとけよっ!」
梶谷と深町が俺に啖呵を吐きかけてくる中、俺と米村さんは外にいる連中のもとへと歩みを進めるのだった。
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