第68話 二体の超巨大ドラゴン
『ギャアアアアァァァァオオオッ!!!』
『ギャアアアアァァァァオオオッ!!!』
二体の超巨大なドラゴンを見上げ米村さんが恐れおののき口を開く。
「あ、あれは……な、なんなんだっ……!?」
俺だけでなく、その場にいた全員が初めて目にするモンスターだった。
俺はそのモンスターたちの圧倒的な大きさに面食らう。
「米村さんっ!」
「あのモンスターは一体っ……!」
「米村さんっ……!」
するとどこからか学生たちが集まってきた。
米村さんのもとへと駆けつけ、皆一様に助言を請う。
「ど、どうすればっ……」
「おれたちを襲う気なんでしょうかっ……!」
「わたし、怖いですっ……!」
それを受けて米村さんは、
「と、とにかく避難しようっ。みんな必要な物だけ持ってすぐにここから離れるんだっ」
号令をかけ学生たちの避難をうながした。
「さあ、きみたちも早くっ。あのモンスターたちが僕たちに襲いかかってくる前になるべく遠くまで逃げようっ。あのモンスターたちは僕たちが束になっても勝てる相手じゃないっ」
「は、はいっ」
米村さんと北原もほかの学生たちのあとに続いて駆け出した。
だが俺とメタムンはその場にじっと立ちつくす。
「善くんっ、メタムンくんっ、何しているんだいっ。きみたちも早く来るんだっ!」
いつも落ち着き払っている米村さんにしては珍しく、かなり焦っている。
一目見てあのモンスターたちには勝てないと悟ったのだろう。
たしかに俺としても、今まで遭ったどのモンスターよりも強大な威圧感を肌でひしひしと感じる。
しかし――
「米村さん、俺はあのモンスターたちの相手をしますから、その間にみんなを連れて遠くまで逃げてくださいっ」
俺は俺にしかできないであろうことをやろうと決めたのだった。
別に見返りを求めての行動ではない。
ただこの時はそうしたいと心から思ったのだ。
もしかしたら俺は一人でモンスターを倒しレベル上げに興じているうちに、知らぬ間にモンスターとの戦いに喜びを覚えるようになってしまっていたのかもしれない。
だとしたら俺はどこかしら頭の回路がおかしくなっているのかもな。
「いくら善くんが強いといっても、あのモンスターをたった一人で相手に出来るのかいっ? それも向こうは二体いるんだよっ」
『善にはおいらがついているから二対二さっ!』
米村さんの問いかけにメタムンが声を大にして返す。
『大丈夫、善は負けないよっ!』
「メタムンくん……」
「そういうことですから、米村さんたちは早く離れてくださいっ」
「わ、わかったっ。でも無茶はしないでくれよっ!」
言い置くと米村さんは北原たちとともにその場を離れていった。
それを見届けてから俺とメタムンは上空を見上げる。
「待たせたな、超巨大ドラゴン! お前たちの相手は俺がするからなっ!」
『おいらもなっ!』
『ギャアアアアァァァァオオオッ!!!』
『ギャアアアアァァァァオオオッ!!!』
待ちわびたと言わんばかりに二体の超巨大ドラゴンたちは天高く雄たけびを上げた。