第67話 襲来
「じゃあ俺はそろそろ行くとするかな」
「えっ、柴木くん行っちゃうのっ?」
北原が心底驚いた様子で声を上げる。
「ああ、もう目的は果たしたし、これ以上ここにいる理由もないし」
北原姉妹の再会が時間の問題ならば、俺にはもうすることはない。
ここにいてもお互い気を遣うだけだし。
「すみれのこと待たないのっ?」
「ああ、だって俺と会ったら妹さんは間違いなくずっと謝り続けると思うんだ。それはさすがに悪いからさ、うん。だから、妹さんに会ったら俺は本当に気にしてないって伝えといて」
「うーん、すみれは柴木くんに直接会いたがってると思うんだけどなぁー。すみれにしては珍しいことなのに……」
北原が何か言っているが俺は無視して米村さんに向き直る。
「米村さん、ありがとうございました。勝手ですけど俺はここで失礼させてもらいます」
「もうすぐ朝ご飯の時間だけど一緒に食べていかないかい?」
「ありがたいんですけど、遠慮しておきます」
「そう、わかったよ」
「メタムンもそれでいいか?」
『おいらは善と一緒だったらなんでもいいよっ』
米村さんもメタムンも、俺が人見知りで大勢の人と顔を合わせるのが苦手なことを知っているからか、あっさりと俺の意見を受け入れてくれた。
「じゃあ……メタムン、戻ろうか」
『オッケー!』
「ちょっと柴木くん、まだ話は――」
北原が俺を呼び止めようとしたまさにその時、辺りが突然暗くなった。
「上だっ!」
との米村さんの声を受け、俺と北原が空を見上げると、
『ギャアアアアァァァァオオオッ!!!』
『ギャアアアアァァァァオオオッ!!!』
体長二十メートルはあろうかという超巨大なドラゴンが二体、大きな翼を広げて空を埋め尽くしていた。




