第65話 北原奏美
「き、北原……」
「柴木くん……」
驚きの表情を浮かべながらお互いの顔を見合う。
北原は四ヶ月前よりも髪が伸びていて、なんとなくだが大人びて見えた。
「柴木くんじゃないっ。何してるのこんなところでっ? 米村先輩も一緒だしっ。それに銀色のスライムもいるしっ。っていうかすっごい久しぶりじゃないっ? 四ヶ月ぶりくらいだよねっ、うわぁー、なんかすっごい懐かしい感じがするんだけどっ」
……大人びて見えたのは錯覚らしい。
北原は四ヶ月前に会った時と同様、無邪気な笑顔で話しかけてきた。
「いや、何してるって……北原がここにいるって米村さんに聞いたから、来てみたんだけど……」
「えー、わたしに会いに来てくれたのっ? 嬉しいこと言ってくれるじゃん!」
「この、このっ」と北原は肘で俺の腕を小突く。
こんな面倒なキャラだったかな?
「で、柴木くんは米村先輩と知り合いだったの?」
「うん、まあ。入学式の時にちょっとね」
「善くんのことが気になって僕の方から話しかけたんだよ」
と米村さん。
いまだにあの時米村さんが俺に声をかけてきてくれた理由が俺には理解できないままだが、まあ今となってはどうでもいいことか。
「そうだったんですか」
北原は「へー」とうなずきながら視線をメタムンに移した。
「で、このきれいなスライムはなぁに? 柴木くんのお仲間さん?」
『うん、そうだよっ』
「きゃっ、喋った!?」
メタムンが人間の言葉を喋ったことにびっくりして、北原は目を丸くする。
うーん、北原も可愛らしい声が出せるんだな。
俺は俺で北原のちょっとしたギャップに驚いていた。
『おいらはメタリックスライムのメタムン。善の友達さっ。おいらたち一緒に冒険してるんだっ。ねっ善っ』
「ああ、そうだな」
『大地も友達になったんだよねっ?』
「うん、僕たちも友達だよ」
『えっへへへ、そういうことっ』
と満足げにメタムンが笑う。
「へー、そうなんだ。じゃあわたしともお友達になってくれる?」
『もちろんいいよっ。じゃあ今から奏美もおいらの友達だからねっ!』
「うん、よろしくメタムンちゃんっ」
北原は四ヶ月前の積極性そのままに、会ったばかりのメタムンと友達になると、メタムンを抱き上げくるくるとその場で回った。
この四ヶ月の間、北原がこの島でどう生き抜いてきたのかは知らないが、以前となんら変わっていないような北原の言動を見て、俺はなぜだが嬉しい気持ちになった。




