第51話 仲間
「獲得経験値が2倍っ? 本当かそれ?」
『もっちろん。おいら嘘はつかないよ』
とメタリックスライムが答える。
自分と仲間になるとモンスターのアイテムドロップ率と獲得経験値が2倍になるとメタリックスライムは言うが……にわかには信じられない。
俺の仲間になりたいがためのでまかせかもしれないし。
しかし一刻も早くレベルを上げたい俺からしてみれば、アイテムドロップ率2倍はさておき、獲得経験値が2倍になるというのはかなり心を揺り動かされる。
『ねっ、だからいいでしょ。おいらを仲間にしてよっ』
「う~ん、今考えてるからちょっと待ってくれ」
『何を考えることがあるのさ、迷うことなんてないでしょっ。おいらを仲間にするだけで獲得経験値が2倍だよ、こんな好条件ほかにないよっ』
至極真っ当な意見を口にするメタリックスライム。
たしかにこいつの言う通りなのだが……いかんせん俺は一人で行動したいのだ。
俺が返答に詰まっていると、
『ねぇ、もしかしてだけど……』
とメタリックスライムが声のトーンを落として訊ねてくる。
『善って友達いないの?』
「な、なんだよいきなりっ!?」
不意に図星を突かれ俺は挙動不審になってしまう。
目を泳がせ、手をばたつかせながら、
「そ、そんなわけないだろっ」
とモンスター相手に見栄を張った。
『そっか。そうだよね。ごめん善。てっきり善って友達を作るのが怖いのかと思っちゃったよ。えっへへ、ごめんねっ』
「ははは、こ、怖いわけないだろ。馬鹿だなぁ」
言いつつ口元が震えているのが自分でわかる。
『だったらやっぱり問題ないよね。おいらが仲間になってもさっ』
「あ、ああ、うん、まあ……そうだな」
『へへ、やった! じゃあ今からおいらたちは仲間だよっ。よろしくね、善っ!』
「あ、ああ、そ、うん、よ、よろしく、メタ……メタ……」
『メタリンでもメタランでもメタムンでも好きに呼んでいいよっ』
「え、え~っと、じゃあ……メタムンで」
俺は頭の中が真っ白だったので適当に呼び名を決めていた。
『メタムンだね、オッケー!』
言うとくるりと空中で一回転する。
『まあ、大船に乗ったつもりで任せてよっ!』
「そ、そうだな、頼む……よ」
こうしてメタリックスライムのメタムンは俺と行動をともにすることになったのだった。
『えへへへっ』