第50話 メタリックスライム
『おいらはメタリックスライムだよっ。メタリンでもメタランでもメタムンでも好きなように呼んでねっ』
銀色のスライムは人間の言葉で流暢に話しかけてくる。
「すご……本当に喋れるようになったんだな」
実のところ半信半疑だったのだが、メタリックスライムとやらは気持ち悪いくらいに人語を操っていた。
『きみがおいらを喋れるようにしてくれたんだね、ありがとう! っていうか、さっきのおだんごもっとちょうだいっ。すっごく美味しかったんだ!』
「いや、悪い……さっきのだんごはあれ一個だけだ」
『え~、残念っ。でも、まあいっか。おいら人間の言葉を喋れるようになったし』
あっけらかんとメタリックスライムは言う。
『それできみの名前はなんていうの?』
「俺か? 俺は柴木善だけど」
『善っていうのかぁ。じゃあ善、これからよろしくねっ』
ウインクなどしてメタリックスライムは微笑んだ。
「え? これからよろしくってどういう意味だよ」
俺が疑問をぶつけると、
『おいら、善の仲間になることにしたからっ。えへへ』
とメタリックスライムは少し照れたように笑う。
「こらこら、何言ってるんだ、勝手なことを言うな。大体なんで俺の仲間になろうだなんて。俺は人間でお前はモンスターだろ」
『それがどうかしたの?』
メタリックスライムが不思議そうに首をかしげた。
「人間とモンスターは敵同士だろ。それが仲間になるとかおかしいじゃないか」
『でも、善はおいらのことを助けてくれたよね』
「それはそうだけどなぁ……」
スライムには手を出さない。俺は過去の出来事からそう心に決めていた。
その理由をメタリックスライムに説明するのは面倒なのでやめておくが。
『だから今度はおいらが善を助けてあげるよっ』
俺の都合などお構いなしに話を進めるメタリックスライム。
俺はモンスター相手にも言い負かされてしまうのか。
「いや、待て待て。お前が俺を助けるって? さすがにそれは無理だろ。自慢じゃないが俺はかなり強いぞ。仲間なんて必要ないくらいにな。ましてや正直言ってお世辞にも強そうに見えないお前に助けてもらうなんてまずありえないんだが」
少し冷たいような言い方になってしまったが、この際本当のことをばしっと言って諦めてもらうしかない。
そう考え口にしたのだがメタリックスライムにはまるで通じなかったようで、
『大丈夫だって。たしかにおいら強くはないけど、その代わりにすごい特性を持ってるからさっ』
自信満々に言い放つ。
「特性? なんだよそれ?」
『えっへへへ。なんとおいらと仲間になるとねー、善がモンスターを倒した時のモンスターのアイテムドロップ率が2倍に上がるんだー』
「えっ」
メタリックスライムはさらに続けて、
『しかもそれだけじゃなくて、善がモンスターを倒した時の獲得経験値も2倍になるんだよっ。ねっ、すごいでしょっ?』
まるで俺に褒めてもらいたくて仕方ないというように、ドヤ顔で俺の顔を見上げて言った。




