第47話 腹痛
だがしかし俺に対して敵意をむき出しにしたものばかりではなく、チャットには俺に好意的な意見もちらほら見受けられた。
《前に柴木って人がわたしたちのことを助けてくれたよっ。とてもいい人だよっ》
《うちの村も柴木くんに救われたぞ!》
《多分だけど、うちらがモンスターに襲われていた時に助けてくれた無口な男子学生が柴木くんだと思う》
《僕なんて助けてもらったあと黄金の真珠ってアイテムまでもらって、使ったらレベルが10も上がったよ!》
《この柴木さんって人はあたしたちのために、この島を出る方法をみつけ出そうとして頑張ってくれてるんだよ、きっと。信じてあげよう!》
俺のこれまでの行いが知らず知らずのうちに少なからず俺の評価を上げていたようだった。
その甲斐あってかチャット上では、自分だけ【魔物島】を脱出しようとしていると俺を批難する声を上げる者たちがいる一方で、自分たちのために早く【魔物島】を攻略してくれているんだと俺を擁護し応援する声を上げる者たちも多く現れだした。
そしてチャットが始まってからわずか数分のうちに、島にいる学生たちの意見はほぼ半々に二分されたのだった。
☆ ☆ ☆
俺のいないところで俺を原因とした分断が起こっているのだから、俺からしたら迷惑なことこの上ない。
このゲームの主催者がいるとするならば、そいつは一体何を考えているのだろう。
意外と何も考えていないのかもしれない。
しかもスマホの画面には、誰かしらが俺の知らないうちに俺の写真を隠し撮りしていたようで、その写真までご丁寧にアップされている。
これでは島にいる全員が俺の存在を知るところとなってしまい、俺としては気の休まる時がなくなってしまうではないか。
そう考えた途端、お腹が急に痛み出す。
小さい頃からストレスに弱かった俺は、精神的に耐えられないことに直面すると腹痛を起こしてしまうのだ。
「はぁ……勘弁してくれ」
先が思いやられる気がして俺は小さく独り言ちた。




