第44話 視線
俺がチャームの指輪を破壊したことで、女子学生たちは全員広本の洗脳から解放された。
女子学生たちは広本に操られている間も意識はあったようで、俺が指輪を破壊した途端自由を取り戻した彼女たちは俺に感謝の意を伝え、それから一斉に広本のもとに向かっていき、みんなで殴りかかった。
泣いて謝る広本を見てさすがに少しだけ可哀想に思えたが、やはりそれは自業自得というものだろう。
俺はその後、地下牢にいた石栗さんに事の顛末を話して聞かせてから一緒に地下牢を出た。
そしてそこに集まっていた女子学生たちに再度感謝の弁を述べられた。
気恥ずかしくなった俺は適当に話を切り上げると石栗さんに顔を向ける。
「えっと、じゃあ俺もう行きますね。探してた女子学生もここにはいないようですし」
「ふむ、それでお前さん、どこへ行くんじゃ?」
と石栗さん。
「俺はこの島を出たいので、とりあえずモンスターを倒しながらまだ行ったことのない場所へ行ってみたいと思います」
「ふむ、そうか。気をつけてのう」
「石栗さんたちもあまり無茶はしないでくださいね」
「ふぉっふぉっふぉっ、心配せんでもこんな年寄りが無茶などせんわい」
自分で自分のことを年寄りと言って笑う石栗さん。
俺は笑っていいものかどうかと思案し、結局苦笑いを浮かべただけにとどめておいた。
「それじゃあ、お元気で……って言うのも変かもしれないですけど」
「じゃあのう」
俺は感慨深げに目を細めている石栗さんと笑顔で手を振る女子学生たちを背にして、一人再び歩き出すのだった。
☆ ☆ ☆
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NAME:シバキ・ゼン
Lv:1984
HP:1925 MP:1143
ATK:1846 DEF:1559
AGI:1563 LUK:1039
SPELL:キュア
:チャージ
:リリース
:アスドム
:ダークホール
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ダイヤモンドドラゴンを倒したことで俺はレベルアップを遂げていたらしく、それをスマホで確認していたところ、俺はふと誰かに見られているような感覚を覚えた。
気のせいかもしれない、そう思いしばらく歩き続けていたのだが、ブラックイエティというモンスターが襲ってきた時にまた視線を感じた。
俺はブラックイエティを一撃ではやばやと葬り去ると、すぐさま振り返り辺りを見回す。
だが視線は感じるものの人の姿はない。
なんなんだ……?
少しだけイラっとするも、どうしようもないので俺は再び先を急いだ。