第23話 レベル
ピピー、ピピー、ピピー!
ウォータードラゴン三体を撃破したあとすぐに俺のスマホが大きな音を鳴らす。
モンスターを倒した時の合図だ。
俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、画面に視線を落とした。
「お、ラッキー。アイテムとレベルの両方だっ」
表示画面にはこう書かれていた。
・ウォータードラゴンを倒したことで9500の経験値を獲得しました。
・ウォータードラゴンを倒したことで9500の経験値を獲得しました。
・ウォータードラゴンを倒したことで9500の経験値を獲得しました。
・ウォータードラゴンを倒したことで<黄金の真珠>を入手しました。
・レベルが6上がり、レベル763になりました。
「黄金の真珠か、えーっと……」
アイテムの使用方法と効果を確認すると、
「なになに……黄金の真珠を砕き割るとレベルが10上がる、だって」
黄金の真珠はレベルを上げることの出来るアイテムだとわかる。
「レベルを10上げるのか……なんか微妙だな」
ウォータードラゴンという結構なレベルのモンスターが落としたアイテムにしては、いささか物足りないような気がするのは、俺のレベルが上がりすぎているせいだろうか。
俺はスマホの画面とにらめっこしつつ「うーん」とうなり声を上げる。
このアイテムを手にしたのが低レベルの時なら飛び跳ねて喜んだかもしれないがなぁ。
というのも【魔物島】における経験値テーブルは少し独特で、あくまで俺の体感だがレベルが低い時ほど、つまり弱い時ほどレベルが上がりにくく、レベルが高ければ高いほどレベルが上がりやすく設定されているようなのだ。
実際、俺のレベルは今現在すでに700を超えているわけだが、倒しているモンスターはレベル100の頃から正直大して変わっていない。
にもかかわらず、俺のレベルはいまだにぐんぐんと上がり続けているのだ。
どこかしらでレベルの上がり具合がゆっくりになってもよさそうなものなのに、その気配はまったくない。
もしこの【魔物島】というものをゼロからすべて創り出した者がいるのだとするならば、そいつはきっとゲームに疎い奴に違いない。
でなければこんなアホなシステムになっているわけがないからな。
だからレベルを1から2に上げるのとレベルを700から701に上げるのとでは労力に天と地ほどの差がある。
経験則によると、レベル700でも一定程度の強さのモンスターを数体倒すだけでおそらくレベルは上がる。
一方、レベル1の状態ではスライムくらいしか倒せるモンスターがいないため、レベルを1上げるのに獲得経験値の非常に少ないスライムを延々と狩り続けなくてはならないというわけだ。
まあ、そういう点では俺は恵まれていたのかもしれない。
なにせ一番最初に出遭ったのが最弱モンスターのスライムだったし、次に遭ったそこそこの強さと経験値を持つデビルヴァイパーはスライムのおかげで倒すことが出来たわけだしな。
なので俺はモンスターにもかかわらずスライムに対してだけは好意すら感じているのだ。
もちろん俺を助けてくれたスライムはもういないということはわかっているが、同じ種というだけでも充分尊い存在だ。
それゆえ、出遭ったモンスターは基本的に手当たり次第倒してきた俺でもスライムだけは倒さずに見逃すことにしていたのだった。
スマホをポケットの中にしまってからズボンのすそについた砂を払っていると、
『ピュイー!』
どこからともなく聞こえてくるモンスターの鳴き声。
噂をすればなんとやらだ。
俺が鳴き声のした方に顔を向けると、目線の先には小さくて可愛らしいスライムの姿があった。




