第20話 休息
「……ま、真っ黒、ですね……」
「あ、ああ」
俺が火を消し忘れていたせいで、せっかくの鎧イノシシの肉は食べられないほどに黒く焼け焦げていた。
「だ、大丈夫だ。食べ物はまだまだ沢山あるからさっ」
「……そ、そうなんですか……?」
「ああ、だから全然心配しなくていいから」
北原すみれを安心させるように言うと、俺はスマホを操作しすぐさま新たな食材を吟味する。
画面をスクロールしながら、
「えーっと、今のところは……一つ目サイの肉と電気ガエルの肉とツノウサギの肉とジャイアントバッファローの肉があるぞ。あとは薬草とか魔力草とかのハーブ類と、ライフシードみたいな種とか木の実なんかもいくつかあるな」
目に入った食材を順に言葉にしていった。
「何がいい? っていってもほとんど肉だけど」
「……な、なんでもいいです、お、お任せします……」
「そう? わかった」
俺は昨日手に入れた一つ目サイの肉を選んでタップすると、足元に出現したそれを早速火に当てる。
そしておよそ十分後、いい感じに火が通り食べ頃になったそれを俺は北原すみれに差し出した。
☆ ☆ ☆
「どう? 美味しい?」
「……す、すごく美味しい、ですっ……」
北原すみれは焼けた一つ目サイの肉を頬張ってから、声を弾ませた。
「それはよかった」
今度は自分用の肉を焼きながら俺はその返事に気分をよくする。
「……す、すみません、わ、私だけ先にいただいちゃって……」
「全然いいよ。それより会った時からずっと気になってたんだけどさ、俺たち同学年だろ? だったら敬語じゃなくていいぞ。俺もタメ口で話してるし」
「……い、いえっ、だ、大丈夫ですっ……わ、私、この方が落ち着くのでっ……」
「そうなの? まあ、それならいいんだけどさ」
焼けた肉の美味しそうなにおいを感じつつ、俺はそれにアクセントとしてすりつぶした薬草を塗り込んでいく。
薬草自体は少し苦い味がするのだが、こうすることで肉の旨味がより一層引き立つのだ。
「それともう一つ……きみにこれをあげるよ」
「……? こ、これはなんですか……?」
俺が差し出したものは茶色い小さな木の実だった。
「これはズタの実っていって、食べると一週間は飲み食いしなくても平気なんだ。特段美味しくはないんだけど非常食として一応持ってた方がいいかなと思ってさ」
「……は、はい……」
ズタの実はお化けコウモリから手に入れていたアイテムだ。
ここでの生活はいつ何が起こるかわからないので、お化けコウモリ狩りをしていくつか集めておいたのだ。
「別にいらないならいいんだけど」
「……あ、ほ、欲しいですっ……」
「そう、じゃああげる」
「……あ、ありがとうございます……」
受け取った北原すみれはじっとそれを凝視してから、大事そうにスカートのポケットの中にしまい込んだ……と思う。
「さて、そろそろ焼き上がったかな」
空腹も限界に近い。
俺は焼き上がった一つ目サイの肉に豪快にかぶりつくのだった。




