第18話 腹の虫
「うおっ!? な、なんだっ? 消えたぞっ……」
北原すみれが一瞬で目の前から姿を消したことで俺は思わず声を上げる。
「透明になれるのかっ?」
「……い、いえ、透明になったわけでも、消えたわけでもありません……」
姿は見えないのに北原すみれの声が正面から聞こえてきた。
「……し、柴木さんが、私を認識できなくなったんです……」
「ってことは今も俺の目の前にいるのか? 俺がそれを認識できていないだけで?」
「……は、はい。もっと言うと、柴木さんは私がここにいることを知っているので、今も普通に会話が出来ていますけど……こ、この呪文を初めから使っていれば、誰も私の存在に気付くことはありません……」
「へー、そうなのか」
「……わ、私はこの呪文を使っていたので、い、今までモンスターにみつからずに姉を探すことが出来ていたんです……」
「ふーん、なるほどね」
とりあえず北原すみれが今日まで無事だった理由はこれでわかった。
「じゃあもう呪文を解いてくれていいぞ」
「……あ、えっと、そうしたいところなんですけど……こ、この呪文は唱えてから二時間経たないと効果がなくならないんです……な、なので、しばらくはずっとこのままです……す、すみません、最初に話しておくべきでした……」
「あ、そうなんだ……」
姿が見えないからわからないが、きっと北原すみれは心底申し訳なさそうに縮こまっているに違いない。
「わかったよ。まあ、問題ないんじゃないか。北原に会えるまでずっとそのまま消えていればいいさ」
話の流れでなんとなくそう言ったのだが、北原すみれは俺のこの発言を悪く取ったようで、
「……わ、私って……や、やっぱり、消えていた方がいいですか……?」
と今にも泣き出しそうな声を届かせる。
「え? あ、いや、別にそういう意味じゃなくてっ。変に誤解しないでくれ、その方が安全だと思ったから言っただけで他意はないよっ」
「……そ、そうなんですか……? そ、それなら、よ、よかった、です……」
きゅるるる~。
誤解が解けたと思った矢先、北原すみれのいるであろう方向から何やら奇妙な音が聞こえた。
一瞬それが何かわからなかったが、すぐにお腹が鳴った音だと気付く。
「もしかして、お腹すいてるのか?」
「……」
問いかけるも返事はない。
「もしそうなら向こうに焼いた鎧イノシシの肉があるけどさ」
「……」
またも返事はない。
何か機嫌を損ねるようなことでもしてしまったのだろうか。
「よかったら一緒に食べる?」
「……」
やはり返事はなかった。
俺は理由がわからず途方に暮れかけた。
とそんな時、
「…………い、いいんですか……?」
蚊の鳴くような声がかなり遠慮がちに返ってきた。
「ああ、全然いいよ」
「……あ、ありがとう、ございます……」
「じゃあ俺のあとをついてきてくれ」
「……は、はい……」
何はともあれ、こうして俺は北原すみれの姉である北原奏美探しに力を貸すことになった。
まずは読んでくださりありがとうございます!
読者の皆様に、大切なお願いがあります。
もし少しでも、
「面白そう!」
「続きが気になる!」
「期待できそう!」
そう思っていただけましたら、
ブクマと★星を入れていただけますと嬉しいです!
★一つでも、★★★★★五つでも、
正直に、思った評価で結構です!
広告下から入れられます!
テンションが跳ね上がって最高の応援となります!
何卒宜しくお願い致します。