第11話 自覚
ピピピピー!
ピピピピー!
ピピピピー!
「……ぅぅん」
俺は枕元に置いておいたスマホのアラーム音によって眠りから覚醒した。
アラームをとめ、あくびを一つ。
そしてゆっくりとテントから這い出る。
立ち上がり顔を上に向けると、木々の隙間から太陽が燦燦と光り輝いていた。
「ふぅ~、今日も暑いな」
☆ ☆ ☆
俺の名前は柴木善。
三ヶ月前、都内にある神里大学の入学式の最中に突如として起こった大地震により気を失った俺は気付いた時には絶海の孤島にいた。
孤島の名前は【魔物島】。
いや、本当にそんな名前なのかは正直定かではないが俺は一応そう認識している。
【魔物島】には未知の生物であるモンスターが棲みついていた。
さらにその【魔物島】ではレベルシステムが発現していて、倒したモンスターに応じて経験値を獲得し自身のレベルを上げることが出来るのだった。
それに加えてモンスターは便利なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理することが可能となっていた。
この島には俺以外にも人間がいる。
俺と同じく大学の入学式に出席していた同級生や教職員たちだ。
全員と顔を合わせたわけではないから正確な人数はわからないが、大体五百人ほどいると思われる。
そんな彼らは島の一ヶ所に居住地を作り協力し合って生活していた。
もちろん全員が全員というわけではなく、中には四、五人のグループや十人前後のグループを作って行動したり、数こそ少ないが一人で行動する者もいた。
かくいう俺もコミュ障という弊害のため、そんな彼らとは距離を置いて一人で行動している奇特な人間のうちの一人なわけだが。
☆ ☆ ☆
つい一週間ほど前、偶然出くわした神里大学の准教授だという中山さんに教えてもらった話では、大勢で共同生活をしている学生、教師たちのレベルはおおむね20~30程度だということだった。
というのも彼らは数人から数十人単位で協力して弱いモンスターだけを狙い、確実に倒して地道にドロップアイテムを集めるというスタイルをとっているからだそうだ。
そしてそのドロップアイテムを少しずつ分け合いながら細々と生活しているらしい。
なぜそんな効率の悪いことをしているのか中山さんに訊ねると「仲間が、主に学生たちがモンスターに大勢殺されたからだ」と彼らの代表者である学長が答えたそうだ。
そこで初めて俺はこの島で死人が多数出ていたことを知った。
中山さんは「共同生活に参加していない学生たちにも会ったことがあるんだけどね、たしか一番レベルの高い子が80くらいだったかなあ。すごいよね」と顔を上気させる。
それを聞いた俺は「え? レベル80? それってすごいんですか?」と他意なく返すと中山さんは「そりゃあすごいよ。だってレベルの上限ってきっと99だろうしさ。あの学生がこの島できっと一番レベルが高いと思うよ」と興奮した様子だった。
レベル99が上限……?
レベル80が一番……?
俺はこの時ようやく自分が強くなりすぎているということを自覚した。
そして自分のレベルはこの人には話さない方がいいかもしれないと思った。
――この時点で俺のレベルは756。
【魔物島】でありとあらゆるモンスターたちと戦いながら、三ヶ月という長いようで短い、短いようで長い期間を一人で生き抜いてきた俺は、文字通りレベルが桁違いになっていたのだった。