第106話 あれから……
俺とメタムンは再びレベルを上げ始めた。
すべては瞬間移動呪文であるアスドムを使えるようになるために。
【魔物島】の中央部には倒しても倒しても強力なモンスターが続々と湧いて出てきた。
俺はそれらを相手に戦いを続けていた。
そして一ヶ月が経ったある日のこと――
『グギャアァッ……!!』
ピピー、ピピー、ピピー!
フルメタルオーガを倒したことでスマホが鳴る。
俺は何気なくスマホを手に取り画面を見た。
するとそこには、
・フルメタルオーガを倒したことで62900の経験値を獲得しました。
・フルメタルオーガを倒したことで<転移装置>を入手しました。
・レベルが3上がり、レベル9137になりました。
と書かれてあった。
「転移装置……? なんだこれ」
初めて手に入れたアイテムだが、この時俺は何か予感めいたものを感じていた。
それはメタムンも同じだったようで、
『よくわからないけど使ってみようよっ!』
いつになく積極的にアイテムの使用をすすめてきた。
「ああ、でもその前に効果を見ないと……」
俺は転移装置の使用方法と効果をスマホの画面に出す。
「えーっと……このアイテムを起動させると、ちょうど一分後に半径百メートル以内の者を戸籍に書かれている住所に転移させる効果がある――って、えぇっ!!?」
『なになに、どういうことっ?』
メタムンが身を乗り出し訊いてきた。
「どういうこともなにも……このアイテムがあれば、アスドムなんか使わなくても、お、俺たち全員日本に帰れるぞ」
『えっ、ほんとっ?』
「ああ……そうだよ、俺たち帰れるんだ、あはははっ、あははっ」
思いがけないアイテムの入手によって、俺はMP10000になるのを待たずして日本に戻れることになったのだった。
☆ ☆ ☆
それからの俺の行動は早かった。
チャットで北原姉妹に転移装置というアイテムを手に入れたこと、そしてその効果について伝えた。
するとすぐさま返事が来て、【魔物島】にいる全員を一ヶ所に集めようということになった。
そういうことに関しては北原に任せるのがいいと思ったので、俺は北原にその役を半ば強引に押し付ける。
《集合場所は俺と北原が初めて、いや二回目か? にあった砂浜にしよう。そうだな、余裕をもって一ヶ月後でいいだろ》
俺はそれだけ書くとチャットを終えた。
「ってわけだ、メタムン」
『一ヶ月後だね』
「ああ……」
俺とメタムンは静かにうなずき合う。
――俺とメタムンの別れの日まであと一ヶ月。
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