第104話 瀕死
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――――――? つ、冷たい……水……?
顔に水が当たる感触がして俺は覚醒した。
ゆっくり目を開けるとメタムンが目の前にいて、口に含んだ水を俺に飲ませようとしている。
「……メ、メ、メタムン……?」
『あっ、善っ! 気付いたんだねっ! よかったー、よかったよ善ーっ! 善、善ーっ!!』
「メ、メタムン……い、痛い……」
俺はまだ小さいままだった。
なのでメタムンにのしかかられてしまうとその重さで潰れそうになる。
『あっ、ごめん善っ』
メタムンは俺から離れると息を整える。
泣いていたのだろうか、目が充血している。
「メタムン……俺に水を飲ませてくれてたのか……?」
『うんっ。善がちっとも起きないから、おいらどうしようって』
「そっか……ありがとう、メタムン……」
全身がひどく痛む。
体を少しでも動かそうとすると激痛が走る。
それでもなんとか目だけを動かして周りを見ると、ノストラの効果だろう、辺り一面が吹き飛んでいた。
「そ、そうだっ。西崎はっ? ……西崎はどうなったっ……?」
『あいつなら死んだよ』
「えっ……?」
ノストラは大爆発を起こして俺を含め、周囲の者を瀕死の状態にする呪文のはず。
死ぬなどあり得ないのだが……。
すると俺の心の内を察してメタムンが続ける。
『善の呪文の効果であいつも瀕死の状態だったよ。でもそのあとやってきたモンスターに食べられちゃったんだ。だから、あいつはもういない』
「そ、そうか……」
『善は小さくなってたからモンスターには気付かれなかったんだ。その点ではあいつのおかげでもあるのかな』
「そ、そうだな……うん」
『あいつが持ってたレベルドレインもそのモンスターに一緒に食べられちゃった。おいら取り返したかったんだけど、どうしようもなくて……ごめん』
「いいって、そんなこと……俺のレベルはまだ3998あるんだから……」
『でも、アスドムを使えるだけのMPが全然足りなくなっちゃったよ』
「い、生きていれば……なんとかなるさ……」
およそ俺らしくない前向きなセリフが口をついて出る。
メタムンを励ましたい一心からだった。
「そ、それより、体が痛くて……早く治さないと………」
俺はすぐさま「キュア!」と唱えた。
だが、呪文が発動しない。
『善はノストラでMPを全部使い切っちゃったからキュアは使えないよっ。気絶してただけだからMPも回復してないみたいだしっ。魔力草はまだあるっ?』
「ま、魔力草か……いや、もう一つもない。筒井に全部あげちゃったからな……マズったな……」
たしか西崎の縮小呪文は効き目が一時間だった。
つまり俺にかかった呪文もそろそろ切れる頃だろう。
「メ、メタムン……悪いけど、俺がまだ小さいうちに、どこかモンスターが入れなそうな狭い場所に、お、俺を移動させてくれないか……?」
『わかった、じゃあ善をおいらの口の中に入れるけどいいよねっ?』
「あ、ああ……そ、そうだな」
あまり気は進まないけれどそれしかないか。
『じゃ、いっくよーっ!』
あむっ。
こうしてメタムンの口の中に入れられた俺は、メタムンに身をゆだねたまま今度こそ深い眠りにつくのだった。
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