第1話 魔物が棲む島
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NAME:シバキ・ゼン
Lv:756
HP:1149 MP:422
ATK:877 DEF:681
AGI:601 LUK:393
SPELL:キュア
:チャージ
:リリース
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『ブォォォーッ!!』
「ん?」
スマホの画面から目線を上げると、体長四メートルはあろうかという一つ目サイが雄たけびを上げながら俺めがけて向かってきていた。
スピードに乗った巨体から繰り出される一つ目サイの突進は、樹齢千年の大木ですら一撃で粉砕する威力がある。
そんな猛突進を俺は逃げることなく正面から両手で受け止めた。
『ブォッ!?』
俺の予期せぬ行動に一つ目サイは信じられないといった表情で怯む。
だがすぐに一つ目サイは気を取り直し半歩後ろに下がると、
『ブォブォッ!!』
今度は低い姿勢から頭を器用に揺り動かして鋭い角で俺を突き刺そうとしてきた。
俺はそれをすんでのところで避けるが、一部ぬかるんだ地面に足をとられてしまう。
その隙を一つ目サイは見逃さなかった。
『ブオォォーッ!!』
一瞬のわずかな隙をつき、一つ目サイの角による攻撃が俺の脇腹をかすめた。
鮮血が飛び散る。
「ぐっ……!」
『ブォォォー、ブォォォー!!』
一つ目サイは俺の血を見て興奮した様子で大きく二度鳴いた。
「この……調子に乗るなよ」
『ブォォォー、ブォォォー!!』
勝ち誇るかのように俺を見下ろす一つ目サイ。
俺は脇腹を触り傷が内臓までは達していないことを確認すると、手についた血を払う。
そして一つ目サイに笑いかけた。
「こんなのただのかすり傷だぞ。一つ目サイともあろうものが人間相手にこんな傷で大喜びか?」
『ブオオォォォォーッ!!』
この島に生息しているモンスターは人間の言葉が多少は理解できるらしく、一つ目サイは俺の挑発に顔を上気させる。
そして俺から一旦離れると、確実に俺を仕留めるためだろう、充分なほどの間合いを取り俺を見据えた。
後ろ足で何度も地面を蹴って臨戦態勢をとる一つ目サイ。
と次の瞬間、
『ブオオオォォォォーッ!!』
俺に向かって一直線に駆け出した。
今しがた見せた突進よりも数段早い。
どうやらさっきまでは本気ではなかったようだ。
だが本気を出していなかったのは俺も同じこと。
「リリース!」と唱えてから一つ目サイの猛突進を素早くかわした。
そして俺の姿を見失っている一つ目サイの背後に姿を現すと「こっちだ」と声をかけ振り向かせた直後、額に渾身の一撃を浴びせる。
『ブォゲェェェーッ……!』
額の奥深くにめり込んだこぶしは一つ目サイの急所をとらえたようで、一つ目サイはけたたましい叫び声を上げながらズシーンと地面に倒れ込んだ。
その衝撃で地響きが起こり辺りの木々が揺れる。
ピピー、ピピー、ピピー!
そこで俺のスマホがアラーム音のような音で鳴った。それはモンスターを倒した時の合図だった。
俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、画面に視線を落とす。
「あ、なんだ、また肉か……どうせドロップするなら飲み物か服がよかったなぁ」
表示画面にはこう書かれていた。
・一つ目サイを倒したことで1090の経験値を獲得しました。
・一つ目サイを倒したことで<一つ目サイの肉>を入手しました。
「まあいいか、沢山あっても腐るわけじゃないし」
俺はスマホの画面をスライドさせると、所持品の中から残り二つとなっていた<魔物島の天然水>を選択しタップする。
すると俺の足元に透明な液体の入ったペットボトルが一本出現した。
それを拾い上げるとキャップを開け口に流し込む。
ごくごくごくごく……。
「ぷはぁ……あー、美味しい」
口元を拭いつつ正直な感想を言葉にした。
中身はただのミネラルウォーターで味などまったくしないのだが、【魔物島】は高温多湿な気候なので喉を潤せるだけで満足なのだった。
「おっと。一応傷は治しておくか」
俺は脇腹の傷にそっと手を当てて「キュア!」と言葉を発した。
それに呼応して俺の手が黄色く光り脇腹の傷を癒していく。
キュアは消費MP30でどんな傷でも治すことが出来る回復呪文だ。
病気に関してはその限りではないが、それでもかなり便利な呪文となっている。
傷口がきれいに塞がったのを確認した俺は、そのまま視線を一つ目サイのいた方向に移した。
だがそこには一つ目サイの死骸はすでになかった。
というのも、この島にいるモンスターは死の瞬間を迎えると自然消滅するからだ。
そして自然消滅したモンスターは、経験値とともに低確率で有用なアイテムをドロップするのだった。
「さてと。暗くなってきたし、そろそろ寝るか」
俺はスマホを操作して、
「今夜は雨が降るかもな……贅沢にテントでも使うか」
一人用の簡易テントである<バミールのテント>を出現させると早速それに入り込む。
見た目とは裏腹に中は広々としていてひんやり涼しいので、体を休ませるには最適なアイテムだった。
ちなみにスマホから一度出してしまったアイテムは二度とスマホの中には戻せない。
そのためどんなアイテムも基本は使い捨てになってしまう。
もちろん自分で持ち歩くなら別だが、モンスターがはびこるこの島では常に身軽でいたいところだ。
「はぁ~……それにしても、もう三ヶ月も経つのか。今頃父さんと母さんはどうしてるだろうな」
テントの中で天井をみつめながら思い浮かべるのは沖縄にいる両親のこと。
「未だにここがどこかもわからないし、スマホがあったって圏外じゃあな……心配して体調を崩したりしてなければいいけど……」
両親の心配をしつつも、俺は襲ってきた睡魔に身をゆだねるように深い眠りへと落ちていくのだった。
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