第40話・「私にも」
屋台街は平日のお昼とは思えないほど多くの人で賑わっていた。
「リツカ、リンゴ飴食べない?」
「リンゴ飴ですか?」
ヘルからの提案に彼女の顔が〝パっ″と明るくなった。
「前から食べてみたいって言ってたでしょ?今日は2人きりだし。いい?」
そう。父親である飛竜王が誘拐を心配するあまり、リツカは学園の帰りに買い食いすることさえ禁じられていたのだ。
「は、はい。嬉しいです。・・・でも、ヘルが屋台にいったら大騒ぎになりませんか?」
「今日は護衛のミセリ達もいないし、制服を着ているから大丈夫。セーラー戦士も魔法少女も正体がバレたことないんだから」
「そうかなぁ」
そんな話をしながら歩いているうちに、2人はリンゴ飴の屋台に到着していた。
「おじさん。こんにちわ」
そう話し掛けられ、
「あ!!へ・・・」
そこまで口にした彼の目に映ったのは、彼女の斜め後ろに立つリツカが手にしたスケッチブックだった。
そこには、
『ヘルは変装しています。気付かないフリをしてあげてください』
と、書かれていた。
それを見た店主は、
「へ、・・・へ、へい。そこの可愛いお嬢ちゃん。ここには色とりどりのリンゴ飴があるよ。どれがいい?」
と、物凄くぎこちない口調でヘルに話し掛けていた。
「おじさんキャラ変した?」
ヘルはそう訝しみながらも、
「リツカ、どれにする?」
彼女にリンゴ飴を薦めていた。
「すごい。こんなに種類があるのですね」
リツカはまるで幼子のように悩み、
「これにします」
と、普通の2倍サイズのものを選び、
「じゃあ、私はこれ」
ヘルはいつもの、ハロウィンのかぼちゃサイズを選んだ。
「2つで20シリングだよ」
そう言うおじさんにヘルはドロップを手渡し、受け取った彼は卒倒していた。
「おじさん、大丈夫?」
「へ、・・・じゃない。へい、お嬢ちゃん。これじゃあお釣りが払えないよ」
息も絶えだえにそう言われ、
「困ったなぁ。私これしか持ってないし・・・」
そう思案していた彼女は、ふと、ある事を思い出した。
「ねぇリツカ、対抗戦てどれくらいの人が集まるの?」
「えっ!?えっと、対抗戦は両学園の威信をかけた祭典ですから、世界中から30万人ぐらいの人が集まると聞いています」
「30万人。コミケの3日目ぐらいか・・・」
「えっ!?」
「ううん。なんでもない」
ヘルは再び店主の方を見た、
「おじさん、お釣りはいいからこれでリンゴ飴を作って今度の対抗戦の会場で皆に振る舞ってほしいの。いい?」
「そ、それなら別にいいけど」
「じゃあ、30万人分お願い」
その瞬間、店主は目を開けたまま気絶していた。
「お、おじさん、しっかりして」
ヘルが彼の肩を掴むと、思いっきり前後に揺すって起こすと、
「い、いくら何でも30万人分は無理です」
彼はもう泣いていた。
「フェアデリアじゅうのリンゴ飴職人が集まれば出来るんじゃない?」
「そ、それはそうですが、リンゴが足りません」
「大丈夫。お城で大百足族の皆が手伝ってくれるようになってからリンゴが大豊作なんだから。お妃様も『実り過ぎて食べきれないわ。どうしましょう?』って言ってたし。それを使えるよう頼んでみるから」
「えぇっ!?あれは高級品で、リンゴ飴にするにはもったいない・・・」
「いいの。おじさんのリンゴ飴は世界一美味しいってお妃様も言ってるし、快く提供してくれると思う」
「えっ!?お妃様がそんなことを・・・」
「うん。後からお城に取りに来て」
「わかりました。誠心誠意やらせていただきます」
「おねがい」
2人は屋台を後にすると、リンゴ飴を食べながら歩き始めた。
「ヘル。私、こんなふうに食べ歩きするの生まれて初めてです」
そう興奮気味にいいながら、おっかなびっくりの様子でリンゴ飴をかじる彼女の横で、ヘルはまたしても口をヘビのように大きく開くと、ハロウィンのかぼちゃサイズのそれを丸呑みにし〝バリバリ″噛み砕いていた。
「ん~~美味しい」
「はい。美味しいです」
嬉しそうなリツカの横顔を見ると、彼女の口元に飴の欠片が付いていた。
「リツカ、口元についてる」
「えっ!?」
だが、彼女がそう言うより早く、ヘルはその欠片を取り、自分の口に入れていた。
「うん。美味しい」
が、リツカはそれどころではなかった。
(えっ!?えぇぇっ!!!!!!?。待って待って、今のって、もしかして、間接・・・)
彼女の顔がみるみる赤く染まっていく。
「どうしたの?顔が真っ赤よ」
「えっ!?」
まるで胸の内を見透かされたようで、リツカはますます焦ってしまう。
「い、いえ。あの。その・・・」
そう〝ドギマギ″していると、ヘルが顔を近づけてきた。
(えっ!?えっ!?なに)
さっきの光景が頭から離れない彼女の脳裏に浮かんだのは、
「リツカ、飴で唇がベタベタよ」
そう言ってキスしながら、自分の唇を優しく舐め回すヘルの姿だった。
「ま、待ってヘル。私まだ心の準備が・・・」
口ではそう言いながら、リツカはしっかり唇をすぼめていた。
〝ぺたっ″
だが、触れ合ったのは唇ではなく互いの額だった。
「熱はないみたいね」
「熱?」
そこでリツカは、ヘルが自分が熱を出していないか額で確かめようとしていたのだと気付いた。
「・・・は、はい。あの、えっと、その、の、喉が渇いているだけですから」
「そういえば朝から何も飲んでないわね。そうだ。こっちに来て」
ヘルに手を引かれ連れていかれたのは、軒先にリンゴ酒の入った樽が幾つも並べられたお店だった。
「ここのリンゴ酒、スッゴく美味しいの。リツカはまだお酒は早いわね。リンゴジュースもあるから」
そう。そこは、前にリンゴ酒をもらったあのお店だった。
すると、ヘルに気付いた店主のお姉さんが姿をあらわした。
「あら、へ・・・」
そこで彼女は、リツカが持つスケッチブックに気付いた。
「へ、へ、へ、・・・」
「へ?」
「塀の上にネコがっ」
お姉さんが指差す方を見ると、塀の上でネコが日向ぼっこしていた。
「あ!!ホントだ。リツカ見てネコよ。かわいい」
「ええ。美味しそうですね」
「えっ!!」
「え??」
リツカは何故ヘルが驚いているのかが分からないらしく、2人が顔を見合わせていると、
「それでお客様、ご注文は?」
お姉さんがそう声をかけてきた。
「リンゴジュース2つください」
「はい」
彼女はそう言ってコップを準備しようとしたが、肝心のコップが1つしかなかった。
この世界に紙コップはなく、ガラス製は高級品で陶器が主流だった。
お店で飲むお客以外にも、食べ歩きの途中で立ち寄り、追加料金を払ってコップごと持ち帰るお客もいて、在庫がなくなってしまったのだ。
「ごめん。業者に注文してあるからもうすぐ届くと思うけど・・・」
そう頭を下げる彼女に、
「大丈夫。このコップ大きいから。ね、リツカ、2人で半分ずつ飲もう」
ヘルはリツカにそう提案していた。
「えっ!!そ、それって・・・」
「だめ?」
「い、いえ」
リツカは頬を赤らめながらうつ向いてしまっていた。
そしてヘルがジュースが注がれたコップを受け取り、
「先に飲む?」
そう訊かれても、
「い、いえ。ヘルが先に飲んでください」
そう返すので精一杯で、彼女がコップに口をつけ美味しそうに飲む顔を羨望の眼差しで見つめていた。
「リツカ、はい」
半分ほど飲んだコップを受け取ったリツカは、ヘルのリップクリームの跡が付いた淵を〝くるり″と自分の方に回すと、
〝ごくっ″
思わず喉を鳴らすほどの緊張の面持ちでコップを口元まで運でいき。
そして、まさに口に付けようとした瞬間、極度の緊張に力み過ぎた彼女は、コップを〝バリン″と握り潰していた。
「!!」
リツカの顔はおろかジャケットやネクタイ。そしてシャツやスカートにもジュースがかかり、下着を着けていない彼女の肌に張り付いて、若々しい張りと弾力を見せる2つの膨らみや、その先端で〝つん″と自己主張する可愛らしい蕾が露わになっていた。
「リツカ!!」
「お客様!!」
ヘルとお姉さんは慌てて彼女を店の奥へと連れていくとドアを閉めると、
「リツカ、早く脱いで、風邪をひいちゃう」
そう言ってハンカチを咥え、
「滲みになります。脱いでください」
お姉さんもそう言って彼女の制服を脱がし始めた。
後ろから背中が大きく開いたジャケットを脱がせたお姉さんが、ヘルが首の所のボタンと腰の所の紐をほどいて脱がせたシャツとスカートを受け取ると、
「魔法で洗って乾かしてもらってくるよ。お店は休憩中の看板をかけておくから待ってて」
彼女はそう言って店を出て行った。
「あ、あの・・・」
上半身裸で下はパンツに靴下とローファだけ出で立ちでヘルの前に立っているという事実に、リツカは顔から火が出そうだった。
「拭いてあげるから動かないで」
ヘルは、咥えていたハンカチでリツカの顔を拭き始めた。
その刹那、リップクリームの形が着いた生地が彼女の唇に触れた。
(えっ!?待って、今のって、間接キス???)
だが、そんなことを考えるヒマさえ与えないように、ハンカチを持つヘルの指が、首筋から鎖骨の窪み、そしてリツカの瑞々しく実る果実のような2つの膨らみを捉えていた。
「!?」
若々しい張りと弾力を保つ2つの膨らみの谷間に溜まる液体を拭くと、こぼれ落ちるそれを追いかけるように胸の谷間へとハンカチを潜り込ませていく。
「・・・」
リツカが恥ずかしそうに〝もじもじ″する度〝ぷるん″と弾む2つの膨らみの表面を幾筋にも枝分かれしながら流れ落ちる滴りを追いかけるように拭く指が、その頂点で〝つん″と自己主張する可愛らしい蕾を捉えた。
「ぁん」
生地越しに、指で蕾を摘まむように拭かれ、リツカは思わず甘い声を洩らしそうになり、慌てて口をつぐんでいた。
しかもヘルはそのまましゃがみ、彼女の腹筋やおへそ、そして下腹部を拭いていた。
その、自分のパンツをヘルに見られているという事実に嬉しさと恥ずかしさが入り混じり、彼女はもうどうしたらいいのかさえ分からず、されるがままになっていた。
すると彼女は立ち上がり、ジャケットを脱いでリツカに羽織らせると、
「着替えを持ってくるから待ってて。絶対にカーテンを開けちゃだめよ」
そういって出て行ってしまった。
「え!??」
ほぼ裸の自分を残して、ヘルがお店を出ていってしまうとは想像もしていなかったリツカは戸惑いを隠せない。
店主の女性も帰ってこず、まるで世界中から取り残されたような孤独感に襲われた彼女は腰を降ろし、ジャケットで身体を覆うようにした。
するとジャケットから、シャンプーとコンディショナーとボディーソープ。それに汗が混じり合った匂いが彼女の鼻腔をついた。
「!!」
それは、ヘルの残り香だった。
「ヘル」
リツカは立ち上がってジャケットに袖を通すと、生地に顔を埋めていた。
〝シャ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ″
その時、突然仕切りのカーテンが開かれた。
「きゃっ」
慌ててしゃがみ込みと、
「遅くなってごめん」
そこに立っていたのはヘルだった。
「ヘル。どこにいってたの?」
「これを買いに」
そう言って彼女が差し出したのは、山岳地帯で暮らす女性たちの民族衣装をリノベした服だった。
「これは?」
「リツカの服よ」
「えっ!?私の服!!」
「うん。この先に知り合いのおばあさんがやってる露店があって、前に服を選んでもらったことがあって。・・・それでね、時間がなかったから私のとお揃いのを選んだんだけど・・・」
「えっ!?お揃い?」
「うん。気に入ってもらえるか分からないんだけど」
そう言って服を手渡した。
その時だった。
「リンゴジュースください」
通りから聞こえたその声に、
「いけない。ちょっと待ってて。コップがないことを説明してくるから」
ヘルがそう言ってお店を出ると、そこにいたのはエリシアとアン。そしてエトアナだった。
「ヘル?」
「エリシア」
「へる?」
「アン」
「ヘル様?」
「エトアナさん」
そして笑顔で駆け寄ってきたエリシアとアンをヘルはしゃがんで抱きしめていた。
「久しぶりね。元気だった?」
「うん」
「でも3人共スゴいわね。この変装を一目で見破るなんて」
「えっ!?変装???」
だが、ヘルの視線は2人の猫耳に釘付けで、その衝動を抑えることが出来ず撫でようとすると、アンはまた泣きそうになっていた。
「ごめんアン。泣かないで。はら、いい子いい子」
ヘルが慌てて尻尾を揺らすと機嫌が治り、彼女は興味津々の様子でそれを掴むと〝ぺろぺろ″舐めていた。
「も~~、なんて可愛いの」
ヘルがそう言って彼女の耳を撫でるのと、アンがヘルの尻尾の先を〝がぶっ″と噛んだのがほぼ同時だった。
「ぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」
「ヘル様!!」
エトアナが慌てて駆け寄ったのと、
「ヘル、どうしたの?」
その悲鳴に驚いた、民族衣装に身を包むリツカがカーテンの向こうから飛び出してきたのがほぼ同時だった。
するとその目の前で、
「ヘル、泣かないで」
エリシアがそう言ってヘルの頬にキスしていた。
「!?」
それを見た瞬間、リツカは膝から崩れ落ちるようにへたり込んでいた。
「リツカ?」
「・・・い、今のは?」
顔面蒼白でそう訊ねる彼女に、
「チュウだよ」
エリシアは、『そんなことも知らないの?』といった感じでそう返していた。
「チュウ?」
「うん。おはようとかおやすみとか、頑張ったときや今のヘルみたいに泣いてる時にほっぺに〝ちゅっ″てするの」
「でも、そんなの悪魔国にもフェアデリアにも飛竜国にもないわよね?」
ヘルがそう言うと、
「私の故郷のものです」
エトアナがそう返していた。
「私は隣の大陸の南端にあるアッタカイヤという国の出なのですが、私の住んでいた地域にこういう習慣がありまして・・・」
それを聞いたリツカは大泣きしていた。
「どうしたの?」
そんな彼女をヘルは慌てて抱きしめていた。
「・・・母様が」
「えっ!?」
「私の母様も、朝のおはようや夜のおやすみ、花の冠をプレゼントするとありがとうって頬にキスしてくれてたんです」
「リツカのお母様もアッタカイヤ出身なの?」
「わかりません。母様はそういう話はしませんでしたから・・・」
そう泣き続ける彼女に、
「それなら、2人でアッタカイヤにいこう」
ヘルはそう提案していた。
「えっ!?」
「リツカのお母さんのこと知ってる人がいるかもしれない。もしかしたらお母さんの家族に会えるかもしれない。大丈夫。私達は王女様なんだから夏休みに海外視察とか理由をつければ一緒に行けるから」
「でも」
「じゃあ、私がついていってあげる」
それはエリシアだった。
「えっ!?」
「だってヘルはアッタカイヤ行くの初めてなんでしょ?迷子になるといけないから私が道案内しれあげる」
「お待たせしましたお客様。服のクリーニングが出来ましたよ」
そこに店主のお姉さんが戻ってきた。
「あ!!リンゴジュースのお姉ちゃん」
「あら、いらっしゃい」
どうやらエリシア達はこのお店の常連らしく、店主も彼女らを笑顔で迎えていた。
「お姉ちゃん。リンゴジュースくださいな」
「ごめんエリシア。コップがなくなっちゃって」
「え~~~~~っ」
「ごめん。他のお店で買って」
店主はそう謝るが、
「いや、ここのがいい」
エリシアは譲らない。
「お姉ちゃんのがいい。ここのより美味しいリンゴジュースなんてアッタカイヤにもないんだから」
「えっ!?そうなの?」
そう驚くヘルに、
「はい。アッタカイヤにもリンゴジュースはありますがここのお店にはかないません」
エトアナもそう返していた。
「リツカ、対抗戦だけどアッタカイヤからも見にくるの?」
「はい。学園にはあちら出身の生徒もいますから。それが何か?」
するとヘルは、
「店主さん。学園対抗戦の会場で皆にリンゴジュースを振る舞って欲しいの。お金は私が払うから30万人分用意して」
そう言って彼女にドロップを握らせると、
「!????????????」
店主は卒倒していた。
「だめ?」
「いえ、確かに1年でそれぐらい売れるからリンゴは確保してあるけど・・・」
「だったらお願い」
ヘルにそう頭を下げられたら断れるはずがない。
「・・・わ、わかった。やってみるよ」
「ほんと?」
「まぁ、これだけお金があれば皆も協力してくれると思うし・・・」
そう言う彼女に、
「ありがとう」
ヘルは嬉しそうに抱きついていた。
「ちょ、ちょっとお客様!?」
一国の王女がお礼を言って庶民に抱きつくなど人族の世界でもあり得ない話だ。
それだけに店主もどう対応したらいいか分からず戸惑いを隠せない様子だった。
「あとはコップね」
「え!?」
ヘルはそう言うとお店を出ていき、リツカがその後ろを慌ててついていく。
彼女の目的地は、前にピッチャーを買った瀬戸物のお店だった。
「おじさん、こんにちわ」
「あ、へ・・・」
そこで彼はリツカのスケッチブックに気付いた。
「へ?」
「へ、へ、・・・へっくしょん」
「カトちゃん??」
「いえ花粉がね。それでお嬢ちゃん。なにか探し物ですか?」
「はい。実はかくかくしかじかで、リンゴジュースを飲むコップを30万個ください」
そう言ってドロップを手渡すと、おじさんは口から泡を吹いて倒れていた。
「お、おじさん!!しっかりして」
ヘルは慌てて彼を抱きおこした。
「お、お嬢ちゃん。いくらなんでも30万個は・・・」
「でも、お妃様もおじさんのピッチャーを愛用してるし・・・」
「え!?お妃様が?」
「うん。すごく気にいってる。だからおじさんにしか頼めないと思う」
「わ、分かりました。国じゅうの職人の手を借りてやってみます」
「お願い」
〝ぐぐ~~~~っ″
その時、ヘルのお腹が再び鳴ると、
「ヘル、お腹すいてるの?」
2人のあとを追いかけてきたエリシアがそう声を掛けていた。
「ねぇエリシア、この辺に美味しいご飯を出してくれるお店ってない?」
「じゃあ、お家においでよ」
「え!?」
「これからお昼ごはんななんだけど、お父さんが急なお仕事で出掛けちゃって、ご飯があまってるの」
「でも」
さすがにそれはダメだろうとヘルが断ろうとすると、
「いえ、是非お越しください」
アンを抱いて追いかけてきたエトアナもそう言っていた。
「前にも言いましたが夫は王狼族で、一度に物凄い量を食べるんです。私達ではとても食べきれません」
確かに、この世界には冷蔵庫がないから、食べ物の長期保存は時間停止魔法か冷凍魔法でも使わない限り難しい。
「ヘル、お願い」
何より、エリシアにお願いされて断れるハズがない。
ヘルはリツカを見た。
彼女は1人蚊帳の外に置かれたみたいな、不安そうな表情で立っていた。
ヘルはそんな彼女の手を〝ぎゅっ″と握った。
「ヘル!?」
「彼女はリツカ。一緒にいい?」
「もちろんです。ヘル様のお友達なら大歓迎です」
「じゃあ、私が案内してあげる」
エリシアがヘルとリツカの間に立ち、2人の手を握って歩き始めた。
「ねぇ、リツカはヘルのお友達なの?それともガールフレンド?」
最近覚えたばかりの外国語を使ってみたい幼児の発したその言葉に、
「が、が~るふれんど!!!」
リツカは思わず声を裏返らせていた。
皆には内緒にしているのだが、彼女は図書館で偶然見つけたGLの恋愛小説にハマっていた。
その中で、恋に落ちた2人の少女が、友達に互いのことをガールフレンドと紹介する場面があるのだ。
「あ、あの、その、わ、私・・・」
「着いたよ」
「え!?」
そう言われ顔を上げると、5人はレンガ造りの平屋のまえに立っていた。
「ほら、早く入って」
そう言われ入った家の中は、ラノベのイメージそのままだった。
「すごい!!ホントにこうなってるんだ!!」
案内されテーブルに着くと、エトアナとエリシアが料理を運んできた。
「!!}
それを見ただけでリツカは青ざめたまま硬直していた。
「どうしたの?」
それに気付いたヘルが声を掛けると、
「こ、この料理、見たことがあります。どれもこれも小さい頃に母様が作ってくれたものばかりです」
そう言って号泣する彼女に、
「リツカ、泣かないで」
エリシアはそう言って彼女の頬に〝ちゅっ″とキスしていた。
「そうだ。私がリツカのお姉ちゃんになってあげる」
「え!?」
「エリシア、なに言ってる?」
けれどエリシアは、
「私がお姉ちゃんになってあげる。だから、悲しいことがあったらいつでも遊びにきて」
そう言ってリツカの頬を伝う涙を拭いていた。
「ありがとうエリシア。なんだか本当に私の方が妹みたい」
リツカはそう言って、ようやく笑顔を見せていた。
「さあ、頂きましょう」
エトアナに勧められ一口食べると、
「おいしい」
その美味しさにヘルは目を丸くし、
「はい。とても美味しいです」
リツカはまた泣いてしまっていた。
「もう、リツカったら、なんでご飯が美味しくて泣くの?」
エリシアがそう言ってまた彼女の涙を拭き、食事が始まった。
最初は固かった空気もエリシアのおかげですぐにほぐれ、食事が終わってもおしゃべりが止まらず、遊び疲れたエリシアとアンが寝落ちした頃にはすっかり日も落ちて夜になっていた。
「ごめんなさい。こんなに遅くまで引き留めてしまって」
そう申し訳なさそうに謝るエトアナに、
「いえ。・・・あ、あの、また遊びにきていいですか?」
リツカはそう返していた。
「え!?」
「・・・」
言葉に詰まるリツカの手をエトアナは〝ぎゅっ″と握っていた。
「もちろんです。私の料理でよければいつでも食べにいらしてください。ヘル様もご一緒に」
「はい。ありがとうございます」
そうして2人は帰路についた。
が、お城に近付くにつれリツカの顔色が悪くなり、ヘルの手を〝ぎゅっ″と握り締める彼女の手は震えていた。
「どうしたの?」
「・・・お城に帰るのが怖くて」
「え!?」
「父様が、私を血眼になって捜させているはずです。もしかしたら、また地下に閉じ込めるかも・・・」
リツカはそう言って震えながらヘルに抱きついていた。
「大丈夫よ。私が一緒だったんだから。今日のことも、私が嫌がるリツカを無理矢理連れ回したことにすればいいから」
「そ、そんなことをしたらヘルに迷惑が・・・」
そこで彼女の言葉は止まっていた。
ヘルは立てた人差し指を、そっとリツカの唇に当てていた。
「大丈夫。どっちにしろ私もミセリ達にメッチャ怒られると思うし、ついでに飛竜王様に怒られるぐらいなんでもない。それに」
「それに?」
「そんなの全然気にならないぐらい今日はすごい楽しかったし、また2人で出掛けよう。いい?」
恋人繋ぎで手を握りながらそう言われ、
「は、はい。不束者ですがよろしくお願いします」
リツカは顔を耳まで真っ赤にしながらそう返すと、
「あ、あの、画材屋さんから屋台街へ抜ける近道のことは2人だけの秘密にしませんか?」
消え入りそうな声でそう提案していた。
「え!?なんで?」
「だめですか?」
「いいわよ」
そんな話をするうちに2人はお城まで帰ってきていた。
が、予想に反して辺りは静まり返っていた。
「・・・誰もいませんね」
「どうしたのかしら?ヘルアイっ」
すると、ミセリやアイリを筆頭に、お城じゅうの女性たちが至る所でスイカに噛りつき種を飛ばす特訓をしていた。
「みんなどうしちゃったの?」
だが、これはチャンスだった。
「リツカ、今のうちよ」
2人は皆に気付かれぬよう飛翔し、お城の北側へと向かうと、細長い塔の上に建つ卵型の建物が見えた。
そこがリツカの住まいだった。
建物の上にはドーム状の傘が架かっていた。
その傘の下、つまりは卵の上の部分に出入り口があるからだ。
2人はそこに降り立った。
「ありがとうございます。ここまで送ってもらえば大丈夫です」
「リツカ」
「なんです・・・」
そう振り返ろうとした彼女の左の頬に、ヘルがキスしていた。
「!?」
あまりに突然の出来事に何が起きたのか理解できないリツカに、
「おやすみのキス」
ヘルはそう言って微笑むと、自らの頬をリツカの前に差し出していた。
「え!?あ、あの・・・」
どうしていいのか分からず戸惑う彼女に、
「私にも」
そう言ってウインクしていた。
「は、はい」
リツカは油が切れたブリキの人形のような、ぎこちない動きで彼女の頬にキスしていた。
「じゃあ、おやすみ」
そう言って羽を広げたヘルに、
「あ、あの」
リツカは勇気を振り絞るように声をかけた。
「なに?」
「こ、こちらにもキスして」
リツカが顔を真っ赤に染めながら右の頬を差し出すと、
「おやすみ」
ヘルはそう言ってキスしていた。
「おやすみなさい」
自分の部屋へと飛んでいくヘルを見送った後のことはよく覚えていない。
気がつくと彼女は服を脱ぎ捨て、全裸になってベッドに寝転がっていた。
キスの感触が残る頬をなぞった指を舌を絡めて愛おしそうに舐め回し唇から抜くと、唾液の糸を引く指先にヘルの唇を重ね、首筋から鎖骨へと滑らせた指が、その下の2つの膨らみを捉えた。
上を向いても全く形の崩れない、若々しい張りと弾力を保つ2つの膨らみを、昼間ヘルに拭いてもらった時の事を思い出しながら、乳腺に沿ってあてがった指で揉みしだき始めた。
「んんっ」
緩急と強弱を織り交ぜながら揉む度にそこから快感のパルスが波紋のように広がっていく。
そして更に快感を求めるように。膨らみの頂点で自己主張するかのように〝つん″と上向く小さな蕾を指先でつまんで〝くりくり″したり、圧し潰すように〝こりこり″捏ね回しながら爪で摘まみ、〝かりっ″と甘噛みしていた。
「ぁあん。噛んじゃだめ。そこ、弱いから」
だが、そう言いながらも、蕾をいじる右手はそのままに、リツカの左手は鍛え抜かれた腹筋からおへそを伝い、引き締まった下腹部の更に下の、〝つるつる″で〝ぷにぷに″の肉丘を捉えていた。
「だめぇ」
だが、その言葉とは裏腹に、指先が肉丘の真ん中を艶めかしく縦に走るスリットを探り当て、その切れ込みから〝ちょこん″と顔を覗かせる種皮を捉えると、その奥に潜む、真っ赤に充血して〝ぷくっ″と膨らむちっちゃな肉芽ごと圧し潰すように捏ね回していた。
「ぁあん。そ、そこ。くふぅ」
その感触を確かめるように〝くりくり″捏ね回す度、そこから快感のパルスが火花のように弾ける。
そして、両手の指をその下に潜む2枚の花びらへと伸ばしていた。
「んぁ」
なぞるだけで、折り重なる花びらの内側に溜まっていた熱い蜜液が溢れ指を濡らす。
リツカは〝ぬるぬる″の蜜液にまみれる花びらと、その内側の最も敏感な粘膜を〝くちゅくちゅ″指で擦りあげていた。
「んくぅ」
そして、種皮を押し上げて剥き出しにした、〝こりこり″に膨らむ新芽を、〝ぬるぬる″の指先で圧し潰しながら〝くりゅくりゅ″と捏ね回していた。
「ぁん。んんっ」
あまりの気持ちよさに、腰と脚が〝ひくっ、ひくっ″と不規則に跳ねる。
彼女の指は、更なる快感を追い求めるように、花びらの奥に潜み、新芽や花びらをいじる度にいやらしくヒクついて蜜液の涎を垂らす、ちっちゃな淫口へと伸びていた。
〝ぬるぬる″の指先が、ちっちゃな窪みに触れただけで身体が〝びくん″と跳ねる。
「ゃん。だめぇ」
だが、その言葉とは裏腹に、リツカが指先に軽く力を入れただけで、彼女の淫口はそれを〝くちゅ″と受け入れていた。
「だめ。そんなことされたら私。でも、でも、ヘルがどうしてもって言うのなら、いいよ」
彼女のちっちゃな淫口が、蜜液の涎を垂らして〝ひくっ、ひくっ″とヒクつきながら、〝くちゅ、くちゅ″と美味しそうに指を飲み込んでいく。
「んんっ。・・・いいよ。ヘルの好きにして」
リツカはそう言うと、いやらしくヒクつきながら指を〝ぎゅうぎゅう″締め付ける蜜壺の手前側、俗に言うGスポットと呼ばれるあたりを、根元まで沈めた指で、手前に掻き出すように刺激しはじめた。
「ひぅ。んぁあん。ヘル、そ、そこ、んくぅ」
真っ赤に充血して固く膨らむ新芽を、蜜液にまみれた〝ぬるぬる″の指で圧し潰すように〝こりゅこりゅ″捏ね回すいやらしい音と、不規則にヒクついて指を痛いぐらい〝ぎゅうぎゅう″締め付ける蜜壺の奥を〝ぬちゅぬちゅ″の〝ぐちゅぐちゅ″に掻き混ぜる淫靡な音と、リツカが漏らす甘い喘ぎ声だけが部屋に響き渡る。
リツカは更に快感を求めるように、手首のスナップを効かせて限界まで奥深く飲み込ませた指に絡み付く粘膜を、〝にゅちゅにゅちゅにゅちゅ″とまんべんなく擦り上げていく。
「ひぁあん。ヘルだめぇ。そんなことされたら私」
そう言いながら彼女は、そのすぐ上で真っ赤に充血し痛いぐらい〝どくどく″脈打つちっちゃな新芽を、ヘルの歯に見立てた爪で摘まんで〝くりくり″していた。
「ヘル。そんなことされたら、んぁ。もうイク。私、イっちゃうから」
その快感の波状攻撃に、彼女はあっけなくその時を迎えていた。
〝ひくっ、ひくっ″といやらしくヒクつきながら指に絡み付いて痛いぐらい〝ぎゅうぎゅう″締め付ける蜜壺の内壁を、掻き出さんばかりの勢いで〝ぬちゅぬちゅ″の〝ぐちゅぐちゅ″に掻き混ぜながら、痛いぐらい〝つんつん″に固く膨らむ感触を確かめるように摘まんだ爪で〝こりこり″する新芽を〝かりっ″と甘嚙みしていた。
「きゃうっっ」
その、一瞬頭が真っ白になり意識が飛びそうになるぐらいの快感に、リツカはそこを起点に〝びくっ、びくっ″と壊れたバネ仕掛けのように身体を何度も痙攣させベッドに突っ伏していた。
「はぁ、はぁ」
彼女は腰や脚を小刻みにヒクつかせて肩で大きく息をしながら、放心したかのようにベッドから動けなかった。
本当ならお風呂に入らなければいけないのだが、あまりにいろんなことがあったせいか、彼女はそのまま落ちるように眠りについてしまったのだった。
〈つづく〉




