第14話・「だめかな?」
ミセリは辺り一面を覆うお花畑の中にいた。
彼女はお揃いの白いワンピースを着たヘルに手を引かれながら、花吹雪の舞う中を駆け抜けていた。
「ヘル様」
その眩しすぎる笑顔に見とれた次の瞬間、彼女はなにかに躓き盛大に転んでいた。
が、ヘルは、
「ミセリっ、こっちよ~、早く早くぅ」
と手招きしながら、1人で先へ先へと駆けていってしまう。
「へ、ヘル様!?」
その、どんどん遠ざかる後ろ姿を見つめながら、
「ヘル様お待ちください。ヘル様~~~っ」
そう叫びながら手を伸ばした瞬間、彼女の手が、“むにゅ”とするなにかを掴んでいた。
「えっ!?」
「あっ!!ミセリ、気がついた?大丈夫?」
そこで彼女が見たのは、重力に逆らうように若々しい張りと弾力を見せる2つの膨らみ越しに、自分を心配そうに見おろすヘルと近衛たちの顔だった。
「えっ!?ヘル様?みんな?」
ヘルや近衛たちが、なぜ自分の顔を心配そうに覗き込んでいるのかが理解できず戸惑う彼女は、指先に感じる張りのある弾力に、上に伸びた自分の手が、ヘルの胸の膨らみを鷲掴みにしていることに気付いた。
「えっ!?」
それが夢の続きなのか現実なのかが分からず、その感触を確かめるように彼女が“ぷにぷに”すると、
「ぁん」
ヘルが思わず小さな声を漏らすのを聞いたミセリが我に返り慌てて飛び起きた瞬間、彼女はヘルの胸の膨らみに頭突きしていた。
が、ヘルのそれは“たわわ”に弾んで彼女の頭を弾き返し、結果としてミセリの首に“ぐきっ”と鈍い痛みが走っていた。
「いたっ」
「隊長」
「隊長っ」
「隊長っ」
「ミセリ、横になって」
そうヘルに促され、寝転がった彼女だったが状況が理解できないでいた。
「あの、ヘル様。私は一体・・・」
「ご、ごめんなさい」
ヘルはそう言い頭を下げていた。
「!?」
が、その声はミセリの耳に全く届いていなかった。
ヘル頭を下げたことで、彼女の2つの膨らみが、ミセリの目の前で〝ぷるん″と弾んでいたからだ。
「ヘル様、謝らないでください」
「そうです。ヘル様からは死角だったのですから、あれは明らかに肩を貸した隊長のミスです」
謝罪の言葉を聞いた近衛たちから、彼女を庇う声が次々に上がる。
「えっ!?」
それに驚きの声をあげるミセリに、
「隊長、本当に覚えていないんですか?」
「隊長がヘル様に近づき過ぎて膝が顎に当たったんですよ」
「なんであんなに近づいたんですか?」
「あんなに夢中になって何を見ていたんですか?」
近衛たちがそう聞かれ、顎に衝撃を受けて意識が飛ぶ直前に見ていた、艶かしい光景が彼女の脳裏に浮かんだ瞬間、ミセリは我に返っていた。
「あ!」
そして、恥ずかしさに顔を真っ赤に染めながら、皆の視線から逃れるように身体をヘルの方へ横向け、彼女のお腹に顔を埋めるようにした。
「!!」
その瞬間、ミセリは受け止めきれない程の衝撃に見舞われていた。
横を向いた彼女の顔が、ヘルの肌に密着していたのだ。
それだけではない。
彼女が枕にしている太股も、何も纏っていない生足だった。
(こ、これってまさか?)
そう、そのまさかだった。
ミセリが気絶した時、彼女を受け止めたヘルは、そのままで正座し、自分の太股を膝枕にして彼女を休ませていた。
つまり彼女は、下半身裸のヘルに膝枕してもらっていたのだ。
その、あまりに有り得ない状況に彼女は軽く悶絶していた。
「ミセリ、大丈夫?」
それを見て痛みを我慢していると勘違いしたツカサが心配そうに覗き込む。
「は、はいヘル様、私なら大丈夫です」
彼女がしどろもどろになりながらそう返事をすると、どこからか物凄い数の蹄の音が聞こえてきた。
「ヘル様、来ましたよ」
近衛の一人に促され視線を上げると、ハヤテが跨がる馬に先導された白い車体に赤い十字が描かれた大きな馬車と、十数頭もの馬が追随し駆けてくるのが見えていた。
それらは、城に戻ったハヤテが連れて来てくれた救護隊の馬車と、近衛達の馬だった。
「よかった」
それを見たヘルは、“ほっ”と胸を撫で下ろしたかのような表情でミセリの髪を撫でながら、
「ミセリ、もう大丈夫よ」
と優しく話し掛ける。
「は、はい」
だがミセリは、ヘルが身体を屈め自分の顔を心配そうに覗き込むことによって、窮屈そうに閉じ込める服の胸元からこぼれ落ちそうになる彼女の膨らみの先端で、自己主張するかのように“つん”と尖る蕾が“ちらちら”するのが視界の端に見え、それどころではなかった。
そうこうしているうちに、担架を持った2人の救護隊員が馬車から降りて駆け付けてきた。
「隊長、大丈夫ですか?」
「私が彼女の顎をうっかり蹴り上げてしまったの。早く病院へ運んであげて」
「わかりましたヘル様」
「隊長、ゆっくりと担架に乗せますからね」
2人はそう言うと、手際よく彼女を担架へと乗せていた。
が、ミセリはヘルの手を握ったまま離そうとしなかった。
「ミセリ、どうしたの?」
そんな彼女にヘルが心配そうに声を掛けると、
「ヘル様、ヘル様も一緒に馬車にお乗りください」
ミセリはそう懇願していた。
「えっ!?でも私、どこも悪くないし・・・」
その提案にヘルは驚きの声を上げていた。
が、
「違うのですヘル様、熊避けの実の花たちです。彼らをどうなさるおつもりなのですか?」
ミセリにそう訊ねられ、
「そ、そう言えば、・・・どうしよう?」
と、困り果てていた。
「お城の厩舎の隅でよければ寝泊まりぐらいはさせられます」
「ホントっ!?」
ミセリの一言に、困り顔だったヘルの表情が、ひまわりが咲いたかのように“ぱっ”と明るくなった。
その眩しすぎる笑顔に、ミセリは“どきっ”としながら、
「ですが、彼らをお城まで誘導するにはヘル様の口笛が必要です。ですから私と一緒に馬車に乗って頂きたいのです」
そう言って、彼女の手を握る指に“ぎゅっ”と力を込めていた。
「あ、そっか!!そこまで考えてるなんてさすがミセリ。分かったわ、私も馬車に乗るから、先に乗せてもらって待ってて」
そう言うと彼女は手渡されたスカートを素早く履き、伏せをしている熊避けの実の花たちの前へと歩いていき、話し掛けた。
「いい?これからお城に向かうけど、みんな私の言うことをちゃんと聞くのよ」
そう言いながら彼女は、甘えるように飛び掛かる熊避けの実の花たちの群れにあっけなく飲み込まれ、一瞬で姿が見えなくなっていた。
「ヘル様」
「ヘル様」
「ヘル様~~~っ」
「だ~か~らっ、言うことを聞いてって言ってるでしょ~がっ。離れてっ。伏せっ」
その命令に花たちが離れた一瞬を突いて、彼女は裸のままそこから飛び出すと、目にも止まらぬ速さで疾走し、馬車の中に駆け込んでいた。
すると、ヘルに甘えるべく馬車に押し寄せた熊避けの実の花たちが全ての窓にへばりついて中を覗き込み、それを見た救護隊員と中で待機していた女性医師の計3人が口から泡を吹いて気絶していた。
「フィ~~~~~~っ」
その時、澄み渡る音色が大気を震わせ、山々にこだましていた。
それは、ミセリの指を咥えてヘルが吹いた口笛だった。
「おすわりっ」
号令一下、怪物たちが馬車から離れて“おすわり”すると、今度は近衛達が慌てて駆け付けた。
「ヘル様っ」
「隊長、無事ですか?」
熊避けの実の花たちの唾液で“べとべと”の窓から中を覗き込むと、2人が倒れた人達を前後から抱え上げ、ベッドへと運び寝かせているところだった。
馬車の中は、前後の長椅子の間に医療を行うスペースがあり、患者を担架ごと乗せられるベッドが3つ横に並んでいたが、皮肉にも医師と救護隊員でその全てが埋まる形になっていた。
「ヘル様、これをお召しください」
「あ!!ありがとう」
ヘルはそう言って、ミセリから手渡された白衣に袖を通していた。
それは、女性医師をベッドに寝かせる際に、ミセリが彼女から脱がせたものだった。
「ヘル様、ボタンを留めてください」
「ううん。皆をベッドに寝かせるのが先よ」
白衣の前のボタンも留めず、ほぼ丸見えの身体を隠そうともせずに、ミセリから指示を仰ぎながら3人をベッドに寝かせようと奮闘する彼女の姿に、馬上から見守る隊員たちの間から感嘆の声が漏れていた。
「みんな、準備はいいか?」
そんな彼女たちに激を飛ばしたのはミセリだった。
「はい。隊長、命令を」
「私とヘル様で熊避けの実の花たちを誘導する。近衛隊は馬車と花たちを囲むように陣形を組み、城まで護衛しながら行進する。いいな」
「はいっ」
ミセリの命令一下、隊列はお城に向かって行進を始めた。
そんな馬車の中では、差し出した指をヘルに咥えられたミセリが彼女の前に立っていた。
彼女は最初、ヘルの隣に座るつもりでいた。
が、彼女が窓から顔を出して花たちを見張りたいと言った為、走行している馬車の中でその口に指を咥えさせるには前に立つしかないと考えたのだ。
「待ってミセリ。馬車の中で立っているなんてあぶないわ。さっき首を痛めたばかりなのに、何かの拍子にバランスを崩して頭でも打ったらどうするの?」
が、ヘルはそれを止めていた。
彼女が白衣のボタンも留めずに窓の外を見ながら、それでも自分のことをそこまで心配してくれることがミセリは嬉しかったが、隣に座ったのでは指が届かない。
「ですがヘル様、それでは私はどこにいれば・・・」
その時、車輪が大きな石に乗り上げ馬車が大きく弾み揺れていた。
それによって立っていたミセリがバランスを崩し後ろに大きく傾いた瞬間、
「あぶないっ」
ヘルは咄嗟に立ち上がり彼女の手を掴んで引っ張ろうとした。
が、ミセリの勢いを止めることは出来ず2人はそのまま長椅子に倒れ込み、ミセリは反対側の窓枠に後頭部をぶつけ、
「痛っ!!」
彼女は痛そうに後頭部を押さえていた。
「ミセリ、大丈夫?」
そう心配そうに声をかけてくれるヘルに、
「はい、大丈夫です」
そう返しながら目を開けたところで彼女は静止していた。
何故なら、窓枠を背に身体を〝く″の字に曲げるように長椅子に尻もちを着いた彼女は、その反動で高く上がった脚をМ字を描くように広げていた。
そしてヘルもバランスを崩して長椅子に倒れ込むように突っ込み、正座するように折り曲げた脚を、М字を描くミセリの脚の間に潜り込ませるようにしながら彼女に抱き着いていた。
「へ、ヘル様!?」
その時、
「隊長、ヘル様、お怪我はありませんか?馬車をとめましょうか?」
その様子を馬上から目撃していた近衛が2人に声を掛けた。
が、全裸のヘルに抱きしめられたミセリは、言葉も出せないほど身体をこわばらせていた。
「私たちは大丈夫よ。いま馬車を止めると、また花たちがどこかに行ってしまうかもしれないから、このままお城まで行って」
そんな彼女に気付いたヘルが代わりにそう言うと、
「分かりましたヘル様」
隊列はそのまま速度を落とすことなく走り続けていた。
そしてヘルは、ミセリを抱き締めたまま、その耳元で、
「ミセリ」
と、囁きかけていた。
が、対するミセリは彼女の顔を見ることさえ出来ず、
「い、いけませんヘル様。こ、こんなところで」
と、声を裏返らせていた。
が、抵抗する素振りは全くなかった。
「大丈夫?首や顎は痛くない?」
「えっ!?」
その問いかけに、ミセリは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になっていた。
「は、はい、大丈夫です」
自分の勘違いに気付いたミセリは、顔を真っ赤に染めながらヘルに頬を擦り寄せるように抱きしめられていた。
「じゃあ、お城までだから我慢しててね」
ヘルはそう言うと彼女の指を咥え、そのまま背筋を伸ばして窓から顔を出し、馬車の後ろで近衛たちの馬に囲まれて走る花たちを見た。
すると、窓から身を乗り出したことでヘルの腰が無意識に前に出ながら持ち上がり、ミセリの脚の下敷きになった白衣が引っ張られて露になった彼女の〝つるつる″で〝ぷにぷに″のそこに、ミニスカートが捲れてパンツが剥き出しになったミセリのそこが密着し、その薄い生地越しに〝ぐりぐり″と押し付けられていた。
「!?」
彼女の体温と共に伝わってくるその感触だけで、もうどうしたらいいのか分からなくなるミセリに、更に追い撃ちをかけるような事態が起きていた。
ヘルが身を乗り出した為、彼女の、重力に逆らうように若々しい張りと弾力を見せる2つの胸の膨らみが、ミセリの顔に押し付けられ〝むぎゅっ″と密着する格好になっていたのだ。
「!?」
小石を踏んで馬車が弾み揺れる度に、顔に密着する2つの膨らみが〝たわわ″に弾み、その先端で自己主張するかのように〝つん″と尖るちっちゃな蕾同士が頬と〝こりこり″擦れ合う。
「んんっ」
そしてそれは下も同じだった。
脚をМ字に開く彼女と、開いた脚をそこに潜り込ませるようにして密着させるヘルの、パンツの薄い生地越しに密着する〝つるつる″で〝ぷにぷに″の肉丘同士が、馬車が揺れる度に下から突き上げられて〝こりゅこりゅ″擦れ合う。
「へ、ヘル様、離れてください。む、胸が、そ、それにあそこも〝こりゅこりゅ″擦れて・・・んくぅん」
だが、窓から顔を出して花たちを誘導することに全神経を集中させているヘルはそのことに気付いてさえいないらしい。
対するミセリは、息をする度に鼻腔をくすぐるヘルの香りに〝くらくら″しながら、それらの波状攻撃にただ耐えることしか出来ないでいた。
そしてその香りに導かれるように、ヘルの膨らみに無意識にキスしようと舌を伸ばしている自分に気付き、慌てて舌を噛んでいた。
(な、な、な、何を考えてるんだ私は?いや、ヘル様違うのです。これは舌が勝手に・・・)
だが、その言葉とは裏腹に、ミセリは彼女の2つの膨らみに頬擦りしていた。
(くそっ。何をしているんだ私は?いったいどうしてしまったんだ?)
けれど彼女は、頭では分かっていているのに自分を押さえることが出来ず、ヘルの体温と香りに吸い寄せられるように頬擦りし続けていた。
「なに?それは本当か?」
その頃、飛竜族の城は騒然となっていた。
部下から受けたその知らせに、王は思わず杯を落としてしていた。
「はい、間違いありません。フェアデリアの城下町に送った忍びたちが全滅したそうです」
「バカな!!奴らは景色と同化するだけでなく気配すらも消せる精鋭たちだったはずではなかったのか?」
彼が受けたのは、ヘルに殺人姫の濡れ衣を着せるために、フェアデリア内に送り込んだ暗殺者たちが、その目的を達する前に全滅したという知らせだった。
「その通りです」
「信じられん。誰だ!?誰に殺られた?やはり悪魔姫か?」
王は怒りに身を震わせながら叫んだ。
「いえ、見たこともない魔物たちです」
「なに?魔物!?」
「はい。フェアデリアに入り、姿と気配を消して潜んでいた忍びたちを、大きな花の化け物たちが次々に見つけ出して捕らえ、頭から丸かじりにしたと」
「そいつらはどこから来た?何故そんな魔物たちがフェアデリアにいる?」
「それが、噂では悪魔姫が連れてきたペットだと・・・」
「な、なんだと」
それを聞いた王は呆然としていた。
「バカな!!悪魔姫は嫁入りの時は確かに裸で、何も身に着けていなかったと聞いたぞ」
「はい。それが、我らが刺客を送るのに合わせて化け物を連れてくるなど、そんな偶然があるはずがありません」
「内通者がいると?」
「はい。そして、そのような魔物を城下街に引き入れるということは、やはり人族と悪魔族が手を組んだとみて間違いありませんな」
「くそっ、悪魔と手を組んだだと?人風情が」
「ですがお頭、今は内通者を捜すのが先です」
「そうだな。裏切り者は許さん」
「問題はそれだけではありません」
「なに?どういうことだ?」
「そいつは人族と悪魔族の両方と繋がりを持っていることになります。つまり、その力がいつ刃となって我々に向けられるとも限りません」
「謀反を企てているというのか?」
「その者の正体が分からぬ以上想像の域を越えません。もしかしたらこの国を思う余り両族にたぶらかされているのやもしれませんが、・・・有り得ぬ話ではありません」
「くっ、下等な人と下劣な悪魔の分際で・・・」
王はぶつけようのない怒りに歯軋りしながら悔しがっていた。
〈つづく〉




