♥ 寝室 1 / 此処は何処でしょう?! 3
一方的で身勝手過ぎる転移召喚の犠牲になった “ 被害者 ” の気持ちも少しは考えてほしいよね?
偉そうな加害者達の話では、衣食住の心配はしなくて良いみたい。
有り難いとは思うけど、この世界にとって全く無関係で何も分からない “ 被害者 ” に対する当然の保証だと思うってしまう。
恩着せがましく上から目線で「 衣食住の世話をしてやるから感謝せよ 」って言われると、イラッとするよね!!
此方の都合を完全無視して転移召喚だなんて暴挙に出といて、右も左も分からない “ 被害者 ” に強引に大陸の危機を押し付けて丸投げするだけじゃなくて、衣食住を提供してやるんだから、大陸を救いやがれ──なんて態度を取られたら、そりゃ怒るし、ブーイングの嵐だわ……。
名前も知らない誰かが、 “ 被害者 ” の私達の前に歩み出て、加害者側に話を始めた。
全然悪ぶっていない身勝手で傲慢な加害者側を諭すように冷静に話をしている。
内容を聞いていると、諭しながら加害者側を丸め込もうとしているみたい。
随分な遣り手が居たもんよね。
被害者代表として頑張ってくれた名前も知らない彼のお蔭もあって、 “ 被害者 ” の私達は【 大陸を未曾有の危機から救う為に現れた勇者様,聖女様 御一行 】として来賓様扱いしてもらえる事になった。
優遇対応してもらえる事になって、皆も安堵しているみたい。
流石に1人1人に部屋を用意する余裕はないらしいから、男女に分かれてグループ決めをする事になった。
男女に分かれると、各々20名ずつ居る事が分かった。
5名で1グループを男性で4班,女性で4班に分ける事にして、A班,B班,C班,D班,E班,F班,G班,H班って書いた名札を作って身に付ける事になって、班決めはジャンケンでする事になった。
最初に出した手が同じ人同士で集まって、3班に分かれたら、人数の多い班から少ない班や4班へ移動する。
班分けが終わったら、代表者が集まって、ジャンケンをして勝った代表者がA班 〜 H班を選んで終わり。
仕切ってくれる人が居たからか、結構スムーズにグループ分けは終わった。
グループ分けが済んで、私はD班の1人として4名と共同生活をしていく事になった。
中庭みたいな場所から移動して、加害者側から城の中を案内される事になった。
厨房,食堂,遊戯室,入浴場,寝室を案内されて、中庭も自由に使っても良いと言われた。
学習部屋や鍛練場も案内されて、大陸語や大陸文字以外にも、この大陸の歴史も学ばないといけないみたい。
身体を確り鍛えて、基礎体力を付けて、身を守る為に必要不可欠な護身術や戦う術なんかも身に付けないといけないみたい。
自分に合った武器を装備して、扱い方や戦法も学ばないといけないらしくて、大変な毎日を過ごす事になりそう。
装備する武器が決まったら教えを乞う為の師匠を紹介されて、師匠の元で戦術なんかを学ぶみたい。
うっへぇ〜〜〜かも…。
取り敢えず、私達は食堂へ案内されて食事をする事になった。
はっきり言って、お城で出される料理の全てが美味しいわけじゃない。
御世辞にも「 美味しい 」とは言えない味付けなのは、日本人の味覚と此方の住人の味覚が違うからなのかも知れない。
味気無いって言うか、何か足りないって言うか……。
贅沢は言えないよね。
調味料,香辛料,食材の種類,レパートリーの全てに於いて、日本よりも品数がないし、品揃えも悪いんだから…。
料理好きの人なら此処で調理チートとかやらかしてくれそうだから、一寸は期待してる。
D班の中に料理好きな人がいてれたら有り難いんだけど……、残念ながら居ないみたい。
私も料理は趣味じゃないし、面倒くさいし、自分で作った料理を自分で食べるのは嫌な人種だから、自分から料理なんてしたくない。
況してや自分の分だけなら未だしも、他人の分まで作らないといけないのは嫌過ぎる。
私は他人に尽くしたり、世話をしたり、提供したりする「 してあげる側 」が大好きな人種ではないから、我慢して出された料理を大人しく食べる事にした。
本当に耐えられなくなったら、自分の分ぐらいは何とか考えようかな……。
勝手に料理係りにされても嫌だからね。
食事を終えたら食堂を出て、各班に分かれて寝室へ向かう事になった。
城の中だから、もっと豪華絢爛にきらびやかだと思っていたけど、別にそうでもないみたいにシンプルな通路が続く。
ドアに取り付けるネームプレートを後から作らないといけない。
取り敢えず、 “ D班 ” と書いた紙をドアに貼り付ける事になった。
──*──*──*── 寝室・D班
寝室に入ると、ベッドが5つ置かれている。
丸いテーブルが1つと5脚の椅子も置かれている。
誰が何処のベッドを使うのか、5人でジャンケンをして決める事になった。
ジャンケンで私の使うベッドは壁側の真ん中になった。
荷物と言えるものはスマホぐらいかなぁ……。
寝室には姿見があって、皆で加害者側から勝手に変えられた容姿を見る事にした。
姿見で確認した私の容姿は、10代ぐらいに若返っていて、腰まで黒髪が伸びていた。
黒髪の肩ぐらいから毛先まで赫色に変わっていて、肩から腰まで巻き毛になっている。
瞳の色は黒色だけど、光の加減で赫色にも見えるみたい。
どうなってるのか今一分からないけど、若返ったのは嬉しいかも♥
元の姿に戻らなくてもいいかな〜〜。
自分の容姿を確認する事も出来たから、皆で椅子に座って御互いの自己紹介をする事になった。
私は “ 居喬勲美 ” と自己紹介して、実年齢は “ アラサー ” とだけ言っといた。
加害者達に変えられた容姿は皆10代ぐらいだから、実年齢を聞いたら吃驚!
私より歳上のアラフォーとアラフィーが居て、なんと独身でキャリアバリバリウーマンだった。
序でに聞いてみたんだけど、料理,掃除,洗濯,裁縫なんかはズギャギャンらしい。
料理はコンビニ弁当かスーパーの惣菜で済まして、洗濯はコインランドリーかクリーニングで済ますみたい。
掃除は業者さんに頼んで、裁縫はする機会がないらしいから、ずっと御無沙汰なんだとか。
アラフォーの深柘妃里さんは、結納まで済ませた婚約者が婚前浮気をしたらしくて、浮気相手の女性を妊娠させてしまったらしい。
それが切っ掛けで婚約を破棄したんだけど、浮気相手は1人じゃなくて3人だったみたい。