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お兄様方のご学友が、アリシアの天使の微笑みに惚けている間にこの場からいち早く逃げ出したいアリシア。
「お兄様。そろそろ……」言いかけたその時……
『殿下。わたくし達も宜しいでしょうか。』
令嬢たちが集まってやってきた。ご学友以外の令息も群がっている。これを期に御近づきになりたいのだろう。
恐るべし欲の塊貴族め!
我先にとお兄様方のお隣をゲットしようと突っ込んでくる。お兄様の側にいたアリシアを押し退ける。
『お邪魔よ!』
『退いてちょうだい!』
と微かに聞こえてくる。
《性格の悪い人はお兄様のタイプじゃないよーだ!家族を大事にしない人は嫌われるんだからー!》
もみくちゃにされながらも何とか脱出する方法を考える。ふと上を見上げるとお母様と目があった。
《お願い……お母様。もう限界……助けてーー!》
と念を送ってみる。
お母様は“ 仕方がないわね ”という表情をし、側仕えに指令を出す。
『アリシア様、王妃陛下がお呼びです。』
《ありがとう!お母様!大好き!》
「えぇ。わかりました。」
「お兄様方……母上に呼ばれましたので失礼させていただきます。」
『あぁ。行っておいで。』
「そのまま下がらせていただきますね。」
アルお兄様もクリスお兄様もほっとした表情を浮かべて送り出す。
『またね。アリシア。』
『ゆっくりおやすみ。』
令嬢たちへ牽制か……はたまた嫌がらせか……アルお兄様がアリシアの頬に“ チュッ♡と口付け♡ ”アルお兄様に続いてクリスお兄様も♡
令嬢は鬼のような形相で睨み付けてくる。やられっぱなしは悔しいから……
「アルお兄様。クリスお兄様。今日は恐い夢を見そうな気がするの……夜はアリィのお部屋にお顔を見せに来てくださいね。」
可愛らしくお願いしてみる。
普段はこんなことを言わないアリシア……お兄様達もこの茶番に乗ってくれるでしょう。
『わかったよ、アリィ。可愛いアリィのお願いは聞いてあげるよ。』
『お部屋で待っててね、アリィ。』
家族、親しい人のみが使える愛称をわざと繰り返す兄達。
「はい♡アルお兄様♡クリスお兄様♡」
こちらも愛称攻撃。この恋人同士のようなやり取りを見せられ固まるご令嬢……
ご令息は頬をポッと赤らめている。
溺愛する妹を蔑ろにすると《妃候補から外れちゃうよ!》《気を付けてね!》とご令嬢に視線を向け柔らかく微笑んでみる。
令嬢たちは悔しそうな顔をしている。“ しまった!”と青ざめている令嬢も……令息は残念そうな眼差しを向けてくる。
もう一度振り返り、極め付けの笑顔で優雅に挨拶しその場をあとにする。
《《この勝負わたしの勝ち!!いえーい!》》