スパロボ戦記 3
人物紹介。
若草 冬眞(21)若草家の長女。
若草 萌 (16)若草家の次女。
若草 夏希(14)若草家の三女。
若草 楓 (11)若草家の四女。
ブラッド (18)モエのクラスメート。夢の世界を創った張本人。
北条 香澄(15)???
眼下に広がるのは、透明な泉をしたがえた山間の村。
どこかで見た景色だなと思ったら、そこは歌姫モエがアレスと収穫祭のけいこをした泉だった。
萌 :「あれってブルグ村・・・・・・?」
合体はとかれていて、四人の機体は竜そのものの外観をした戦闘機にかわっていた。それに合わせて、着ている服もこの世界でそれぞれが着ていた初期服になっていた。
姉妹たちは通信画面ごしに顔をみあわせた。
冬眞:「やれやれ。今度はどうしろっていうのかね」
萌 :「台本が白紙になるまで、幕は下りないのでしょうか」
夏希:「それじゃきりがねーぜ。まあ、あたしはいいけどさ」
萌 :「いいのかっ!?」
楓 :「幕を下ろす方法。わたしは知っていますよ」
楓のかたことセリフに、萌はコンソール画面に顔をちかづけた。
役とは関係なく、楓は普段から声が小さいのだ。
楓 :「はい。みなさんご存じないと思いますが、この『夢』は『夢の世界』というサイトによって、ブラッドリー・ダグラス・ヒューストンさんが
作り上げた世界なんです。詳しくいいますと―――――――」
楓はネットでみた説明文を説明した。といっても、小学生の楓は長い説明文を読み流してエンターしたので、何もかも知っていると
いうわけではなかった。
楓 :「―――――つまり【終わらせれば】いいはずです。香澄さんはわたしと同じ【参加者】ですから、
いまとなってはブラッドさんの夢を【かなえてあげれば】目が覚めるはずです」
萌 :「香澄さんって・・・・・・楓は知り合いなの?」
楓 :「はい。チャット友達です」
その言葉に、萌と夏希は画面ごしにびっくりした。
一方、冬眞は納得したようにうなずいた。
冬眞:「やっぱりそうだったんだね」
萌 :「姉さん、気づいていたの?」
冬眞:「まあね」
RPG界で冬眞は女忍者役として香澄と楓と行動をともにしていたから、何かをつかんでいるのかもしれない。
冬眞がうながして、楓が話をつづける。
楓 :「姉さんたちは、何度か違う『舞台』で異なる『役』を演じましたよね」
冬眞:「ああ。まさに悪夢だった。あたしはヌイグルミとリボンが嫌いになりそうだよ・・・・・・」
楓 :「それは、先ほどのようにブラッドさんの夢が未完で終わったからです」
ギャルゲー界では車にひかれた。
魔法少女界では、時間切れだった。
世界系界では、なにもかもがおかしかった。
RPG界では、話の途中でめちゃくちゃになった。
冬眞:「どんどんおかしくなってる気がするねえ」
楓 :「きっと、萌姉さんのせいですよ。萌姉さんの影響力が大きくなっているんです」
萌 :「わたしが? どういうことですか?」
楓 :「毎回違うその口調です。姉さんは夢に染まりやすいんですよ。才能ですかね」
冬眞:「あなた色に染まりますってか。不幸な女の見本だね」
夏希:「ほんと、姉ちゃんは流されやすいからなー」
萌 :「夏希に言われたくないです!」
楓 :「わたしはとにかく、萌姉さんがいなければ、夏希姉さんも、冬眞姉さんも、こうして夢に参加することは
なかったと思いますよ」
冬眞の場合はただの女校医として、夏希の場合はただの(?)格闘系魔法少女として、他の通行人と同じように、自我をもつことなく
役を終えたはずだと、楓は言った。
楓 :「みなさん、仲がいいですからね」
萌 :「どういうこと?」
楓 :「困ってる萌姉さんをみて、ほったらかしに出来なかったんです。きっと」
冬眞:「あはははっ。心配しなくても、ねえ?」
夏希:「それが楓でも、わたしたちは助けたぜ」
萌 :「そうです。たった4人の姉妹じゃないですか」
三人がいうと、末妹はモニター越しに照れたように顔をふせて、4人も姉妹がいる家なんて希少ですよ、と
ごにょごにょ言った。
冬眞:「さてさて。それじゃ、そろそろフィナーレといこうかね」
夏希:「ようし、やってやるぜっ」
萌 :「どうするんですか?」
夏希:「きまってるだろ、世界の平和を守るのさ。ぶいっ!」
マジックコンバーターをふかして、四機の竜機は空中都市ヴェーンをめざして大空を飛翔した。空中都市ヴェーンはその名のとおり
地殻ごと空に浮き上がっている街で、浮遊都市の中心には光り輝くクリスタルの王城がそびえていた。
四機が接近すると、ヴェーンから飛 竜の群れが迎撃にやってきた。
夏希:「きやがったな、ワイバーンどもめ!」
楓 :「姉さん、かけごえよろしく」
萌 :「いきます! 四・竜・合・体!」
♪ ドリームロード ひらかれた
きらめく 光 オレをうつ
夢の力 たくわえて
ひらいた翼 天に翔ぶ
どこからともなく流れてくるBGMに乗って、四機の竜機がおもちゃで再現できそうな変形・合体を行う。
そういえば日曜の朝にこういう感じのCMをやってるなー、とモエは思った。
萌 :「天空の竜騎兵、見参ですっ!」
真っ赤なマントをはためかせ、天空に屹立する巨大な守護神。竜の甲冑を身にまとい、左手には破邪の大盾を、
右手には断罪の大剣をささげし竜騎兵。
香澄:「ざ、斬新なギミックですわね・・・・・・・」
わざわざ画面を開いて、魔法女皇がためいきをついてみせた。
いつのまにか、空中都市ヴェーンからクリスタルの王城が分離して、戦艦のように浮かんでいた。城塞戦艦ヴェーン・ガランである。
夏希:「・・・・・・・お城」
楓 :「お城ですね。ま、こちらも騎士なわけですし」
ファンタジー世界で向かい合う、空とぶ城と巨大な騎士。なんだかなーという空気が双方に共有されたが、
魔法女皇が金髪をかきあげて仕切りなおした。
香澄:「オーホッホッホッホ! よくもここまで来ましたわね、天空の竜騎兵!
けれど、お前たちの冒険もここでお仕舞いですわ! さあ、わたくしの竜たちよ、やーっておしまい!」
女皇が命令すると、ピギャーと飛竜っぽく(?)鳴いて、ワイバーンの群れが雲間をやぶってモエたちに襲いかかってくる。
叫ばないと技が出ないのかと思いつつ、4人は攻撃を開始する。
萌 :「ファイヤァァァ・ウォォォルッ!」
楓 :「・・・・・・いけ、光の戦輪よ」
冬眞:「唸れ、ドラゴンウィップ」
夏希:「いくぜ! 竜・神・剣!」
炎の壁をとばし、マントから竜の鞭と戦輪をとりだす。手にした巨大剣で手当たり次第にワイバーンを切り落としながら、
天空のドラグナーは城塞戦艦にせまった。
通信画面の中、魔法女皇が玉座から立ち上がり、いかつい篭手のついた拳をブルブルふるわせる。
香澄:「おのれぃ。おのれ、おのれぃ! 許さんぞ、ドラグナァッ!」
楓 :「ノリノリですね。香澄さん」
城塞戦艦ヴェーン・ガランは城壁上の投石器から極太の魔力ビームを乱射しつつ、ドラグナーに特攻をしかけてきた。
サイズ差は3000:1ぐらいはある。
しかし、いくら大きくても所詮は戦艦である。ロボットアニメの福本清二だ。
楓 :「サクッとやっちゃいましょう、姉さん」
夏希:「オーケー、楓!」
竜騎兵が破邪の盾を天高く放り上げると、盾は空中で姿をかえて宝玉つきの篭手になって剣をもつ腕に装着される。
竜騎兵は間合いを計るように左腕をつきだし、右手で水平に石剣をかまえた。
石の大剣に魔力がはしり、光となって燃え上がる。
冬眞:「愛の心にて悪しき空間を断つ・・・・・・」
夏希:「いっけぇ、必殺のぉっ!」
萌 :「ハイパーオーラ斬りですっ!」
ふりおろした剣から、縮尺的におかしいだろという光の刃が振り下ろされると、城塞戦艦は魔力のバリアごと真っ二つになって
眩い光の中に消滅した。
光の爆発は加速的にひろがっていき、天空の竜騎兵もまた光にのみこまれて消滅した。