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スパロボ戦記 2

 ブラッド君はハダシに下駄履(げたば)きの博士役で、無駄に美形だった。

 萌たちは三つの心が一つになった百万ガッツで正義のワカクサロボをあやつり、(もう手遅れだというタイミングで)街に向かい、

悪の侵略者・Dr.カスミの魔の手から地球(主に日本)を守り続けた。

 一日一敵。

 萌、冬眞、夏希の三人はそれぞれの学校に通いながら、特訓したり、旅行先で事件に巻き込まれたり、敵方の兵士が人間にばけて

転校生として潜入してくるといった定番イベントをこなしつつ、悪の侵略帝国と戦いつづけた。

 そんなある日。

博士:「大変じゃ、大変じゃ。ついに侵略帝国のやつらが本腰を入れ始めたぞい。きやつらの次なる狙いはニューヨークの

    自由の女神像にあるという超秘密エネルギーじゃ」

夏希:「超秘密エネルギーだってぇ。そいつぁ、なんだったてんだい、博士!」

博士:「うむ。女神像の地下にロズウェル事件で遭遇したUFOが格納されておるらしいのじゃが、詳しくはワシにもわからん」

夏希:「へへっ、米利堅(メリケン)か。本場のヤックバーガーを食いまくってスーパーサイズになってやるぜ」

萌 :「米利堅じゃなくてアメリカですよ。夏希」

博士:「うむ」

 博士がうなずき、拳をためる。

 この儀式は、毎回やらなくては気がすまないらしい。

博士:「よおしっ、ワカクサチーム出撃じゃ!」

三人:『ラジャー!』

 博士がビシィっと腕をふり、三人がダダっと駆け出す。

 どこからともなく流れてくる出撃ソングにのって、三人は若草マークのついた出撃口に身を投じる。とびこんだ先は滑り台(シューター)になっていて、

三人は滑り落ちながらメカハンドに服を脱がせられ(ブラとパンティだけになり)、色違いのパイロットスーツとヘルメットを着けさせられる。

 滑り台の終点は移動式コックッピットだ。三人の体がベルトで固定されると、ロボットアームによってコックピットごと地下格納庫内のワカクサマシンに運ばれる。コックピットが収まると、マシンの上部ハッチが閉じられてエンジンが点火し、「発 進(ワカクサ・ゴー)っ!」と叫ぶ。機体は全長12kmのカタパルトをぐるぐる飛ばされて、研究所敷地内の発電用プールの水をつきやぶって出撃を完了する。



「もおっ、出撃シーンはカットしてよっ! ブラッド君のえっち!」

「そのマンガ的反応・・・・・・あんたら、ほんっっきで似合ってるわ。もう結婚しちゃいなよ」

「姉さん、冗談はやめて」

「べつにいいじゃん。裸になんのは一瞬だし。かっこいいし」

「かっこいいって・・・・・・夏希、あんた、マジ?」



 お約束どおり、三機がついたときは、ニューヨークの街は巨大機械獣サタンF−13の魔の手によって火の海になっていた。

冬眞:「みろ、アメリカ総理大臣閣下(そうりだいじんかっか)が!」

 ファイアハウスと化したホ○イトハウス(ワシントンにあるはず)から、総理大臣閣下の乗る黒塗りのベンツが、降り注ぐ火の雨を左に右に

急ハンドルで回避しながら全速力で逃走している。

 そこに落とされる巨大円盤の破壊光線。爆発するベンツ。ぶっとぶ総理大臣閣下。宙を舞うメガネ。苦悶の総理大臣閣下。地上に叩きつけられ、頭から弾け飛ぶ総理大臣閣下。

三人:『そ、そうりだいじんかっかぁぁぁ!」

香澄:「オーホッホッホッホ! これでアメリカもお仕舞(しま)いね!」

博士:「な、なんてことじゃい。世界一の王様がこんなにもあっけなく・・・・・・・・」

 通信画面ごしに、ブラッド博士が(そこはかとなく楽しげに)博士弁(はかせべん)でのたまった。

 それから、三人はマンハッタンで暴れ回る巨大機械獣と大立ち回りを演じた末に、必殺のワカクサビームで敵を爆砕した。(毎度のことながら、戦闘の影響による物的・人的被害は甚大である)

冬眞:「さあっ、前座は片付いたよ!」

萌 :「香澄! 今日こそは、あなたを逃しません!」

 そうはいっても、いつも惜しいところで逃げられるわけなのだが、今回は違った。Dr.カスミのあやつる巨大円盤はぐるぐる回転すると、怪しげな紫の光線を全地上にむけて照射したのだ。

香澄:「オオオ〜ホッホッホッホ、オォォッホッホッホッホ!」

萌 :「な、なにっ!?」(香澄さん、すっかり悪役笑いが板についてきたな〜)

博士:「ま、まずいぞい。この光はワカクサエネルギーの波長とよくにちょる!」

 完璧な博士弁で、ブラッド君が通信画面のむこうでがなりたてた。なお、ワカクサエネルギーとは月面で発見された自立進化型の宇宙開発用

エネルギーである。平和目的である。

 巨大円盤から放たれた怪光線は、ニューヨークのみならず、テキサス・カリフォルニア・ハワイに至るまで、アメリカ全土に放射された。

萌 :「・・・・・・」(*今更ですが、この夢は妄想であり、実際の国家・地理・人物・団体などとは一切関係ありません)

夏希:「なにが起こるっていうんだっ!?」

 怪光線をアメリカ全土に放射する巨大円盤は隙だらけだが、いま攻撃するのは淑女(しゅくじょ)協定違反である。

 萌たちが礼儀ただしく[な、なんだと!? 待機]していると、巨大円盤はようやく光の放射を終えた。放射された光は吸収光線の類であり、アメリカ全土から吸い上げたエネルギーを、今度は円盤内で実体化エネルギーに再構築して再び投射した。

 無駄な手間暇をかけたすえ、ニューヨークの廃墟に、新怪人が実体化する。

 


♪ 他人の 他人の 幸せ 祈るより

   おのれを守る 欲の皮

   それほど歪んだ アメリカの

   人の心が生・み・出・し・たー 

   マネーマン! ファックレイジー!

   ガンキラー! オゾンガー!


 なにやら物騒な挿入歌とともに、それまでの機械獣とは雰囲気の異なる4体の機械怪人があらわれた。

 ワカクサロボと同じくらい大きな怪人は、それぞれ異なる精神攻撃をしかけてきた。     

マネーM:「マネマネマネマネマネ・・・・・・・・日本に届け、サブプライム砲!」

博士  :「ぐふふふ、金じゃ金じゃ! これで心置きなく研究に打ち込めるわい!」

オゾンG:「オーゾンホール・・・・・・・・紫外光線をくらえぃ!」

冬眞  :「ああ! お肌があれるっ! マジやめて、もう曲がり角なのよぉ!」

ファック:「ファーックックックッ・・・・・・ファックユー☆モエ!」

萌   :「や、やだ♪ そんなとこ、さわっちゃ。もおっ、ブラッド君ったら・・・・・・♪」

 夢の中だけに催眠(さいみん)攻撃は反則的に有効だった。萌と冬眞は色欲にとりこまれてしまい、健康優良児のナツキは平気だったが、残ったガンキラーは、地味に強かった。

夏希:「きゃあぁっ」

 ガンキラーの放ったショットガンが、思うように動けないワカクサロボの腕を、足を、吹っ飛ばす。

 なすすべなくハチの巣になって、瓦礫にもたれかかるワカクサロボに、とどめとばかり銃をつきつける。

夏希:「くっ、ここまでかっ!」

 絶体絶命のピンチ。

 ひび割れたヘルメットの下で、血まみれのナツキが観念したとき。

 燃えさかる街の彼方から、一機の戦闘機が超高速で飛来した。

香澄:「あっ、あれはなにっ!?」

 悪の女博士がドクロの杖をかざして驚くと、怪人たちも精神攻撃を中断し、ガンキラーもわざわざ照準をはずして空をみあげた。

淑女協定はまもられた。

夏希:「あれは・・・・・・・」

 救世主はワカクサマシンと同じ型の戦闘機だった。

 通信画面に、見慣れた顔が映し出される。

? :「もしかして、ピンチ?」

夏希:「ピンチだぜ」

冬眞:「ピンチだね」

萌 :「ピンチです」

 すると、通信画面にうつった少女は、無愛想にいった。

? :「ではでは。仕方ありませんね」

 少女――若草 楓(わかくさかえでの乗ったマシンはビームを掃射して、4体の怪人をあとじらせた。

そのすきに、ワカクサロボは変形を解除して、戦闘機形態にもどる。

 悪の女博士がますます芝居がかった演技でおどろいてみせた。

香澄:「四機! ワカクサマシンが4機そろったというのっ!?」

冬眞:「さあ、今こそ姉妹の(きずな)を見せるときだよ」

夏希:「四人そろったワカクサ隊は無敵だぜ!」

楓 :「・・・・・・だ、そうです」

萌 :「みんな、準備はいいっ?」

夏希:「おう」

冬眞:「おうよ」

楓 :「はい」

萌 :「いきます! ブイ・トゥゲザァァァァ!」

 萌のかけ声で、四つの機体がV字編隊を組む。

 合体ロボは 協 力 (コンビネーション)が命。 

萌 :「レェェェェェツ!」

4人:「コォンバァァァイン!」

 すると、今度は4機のマシンが変形・合身して、三機のときよりも巨大で強そうなロボットになった。

 一体化したコックピットに4人姉妹が並び、決め台詞を叫ぶ。

4人:「コンバトラー・・・・・・・IV(フォー)!」

香澄:「ざ、ざんしんですわね・・・・・・」

 呆れる悪の女王をよそに、楓がぼそっといった。

楓 :「それじゃ、パパッとやっちゃいましょう。姉さん」

萌 :「ウフフ」

楓 :「どうかした?」

冬眞:「なんでもないよ、マイシスター」

夏希:「それじゃ、ぱぱっとやっちゃいますか!」

 それまでの苦戦が嘘のように、コンバトラーIV(フォー)は圧倒的な力で、たちまち新怪人どもを叩きのめした。なお、激闘の余波で

ニューヨークはとっくに世紀末廃墟である。

香澄:「おのれぇ、こしゃくなりワカクサ姉妹! かくなるうえは、わたくし自ら相手になって差し上げますわ!」

 暗雲(あんうん)渦巻く空のもと、傾いた上半身だけが残っている自由の女神像を足元に見下ろし、コンパトラーIVと巨大円盤は最終決戦の

火蓋(ひぶた)をきっておとす。

 特大ミサイル、電磁波光線、破壊光線、極大火炎、冷凍光線、ロケットパンチ、目からビームなどの必殺兵器が飛びかった挙句、

ようやく決着のときがきた。

萌 :「いまです! 超電磁タ・ツ・マ・キィィ!」

香澄:「うっ、うごけませんわぁ!」

楓 :「・・・・・・とどめ、いきます」

夏希:「必殺っ、天空剣! 若草斬りぃぃぃ!」

 コンバトラーIVの必殺技をうけて、巨大円盤は大爆発をおこしてリバティ島に墜落・炎上した。

 赤々と燃え上がる大西洋を背景に、コンバトラーIVはおおしく勝利のポーズを決める。戦いは終わり、4姉妹は悪の帝国に勝利したのだ。

青い地球は救われた。ありがとうワカクサ隊 ありがとうコンバトラーIV!

 最終回かと思ったとき。

 瓦礫の山と化した女神像の残骸(ざんがい)から、一筋の光が天にのぼった。ロズウェルの光は輝きをまして、コンバトラーIVは光の柱に飲み込まれた。

萌 :「ひかりが、ひろがっていく・・・・・・・?」

 四人の乗ったマシンは光の中に姿を消した。


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