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STAGE.5 スーパーロボット戦記

 萌は戦闘機[ワカクサ]で空を飛んでいた。

 目前のコンソールには大小の円い計器類が並び、革の軍手を履いた手には三角錐(さんかくすい)操縦桿(そうじゅうかん)がにぎられている。

 窓の(そと)、ちぎれとぶ雲々の向こうに色違いの僚機りょうきが二機とんでいた。

 コンソール上部にある二つの通信画面に、ヘルメットを被った仲間の顔がうつしだされる。

冬眞:「こちらワカクサ(ワン)。目標を捕捉したよ」

萌 :「ワカクサ(ツー)。了解しました」

夏希:「ワカクサ(スリー)。了解したぜ」

 三機は三角編隊を組むと、目的地・東京に向けて急加速した。

 三機のジェットが青空に三本のラインをのこす。

 だが―――――

 三機が東京上空についたとき、地上はすでに地獄絵図と化していた。倒壊したビルの群れ。逃げ惑う群集。燃え上がるコンビナート。そして、民家を踏み潰し、東京タワーをぶっこ抜き、国会議事堂を殴り壊す巨大機械獣(きょだいきかいじゅう)ゴズラF−5。

萌 :「なんてこと・・・・・・これじゃ、国民のための国会が開けません!」

冬眞:「ちきしょう。こいつは日本のピンチだよ」

夏希:「あっ! 姉ちゃん、あそこに総理大統領閣下(そうりだいとうりょうかっか)が!」

 瓦礫(がれき)となって降り注ぐ議事堂の破片を急ハンドルでかわしながら、総理大統領閣下の乗る黒塗りのベンツが一目散に逃げている。

 しかし、なんということだろう。逃げるベンツの上空には紫色の巨大円盤(きょだいえんばん)が浮かんでいるではないか。巨大円盤が破壊光線はかいこうせんを打ち落とすと、ベンツは大爆発をおこして四散し、中に乗っていた総理大統領閣下は爆風によって天高く打ち上げられた。メガネがふきとび、苦悶の顔をうかべ、総理大統領閣下は全身血みどろになってアスファルトの上に墜死した。

三人:「そ、そうりだいとうりょうかっかぁぁぁっ!!」

??:「オーホッホッホッホッホ! これで日本もお仕舞(しま)いね!」

 通信画面に、地球を狙う侵略者の首魁、Dr.香澄(ドクターかすみの勝ち誇った顔が映し出される。ワカクサ隊が歯噛みする間にも、巨大機械獣は鋼鉄の口から

灼熱の炎をはいて東京の町並みを破壊する。

夏希:「もうゆるせねぇ、てめえらの血はなにいろだぁぁぁ」

冬眞:「待て夏希! 一人で突っ込むんじゃないよ!」

 三機は急降下しながら、目標にむかって猛然とミサイルを撃ちまくる。 

 だが、ゴズラF−5はミサイルの集中放火を受けても平然としていた。

萌 :「だめです! 目標にダメージ、ありません!」

香澄:「オーホッホッホッホッ! わたくしを忘れてもらっては困りますわ」

 巨大円盤のビームをうけて、音速で飛び回っていた三機の戦闘機は、きりもみになって地面に激突した。

 煙をはき、地べたに這いつくばった戦闘機(マシン)のなかで夏希がほぞをかむ。

夏希:「ちきしょうめ、油断したぜ」

冬眞:「なんの、勝負はここからだよ」

萌 :「そうです。わたしたちは決して(あきら)めません!」

 激突のショックで傷だらけになりながらも、三つのエンジンは猛々しく唸りをあげて、

ワカクサ隊は一直線にならんで空をかけ(のぼ)る。

萌 :「姉さん! 夏希! 行きます!」

冬眞:「あいよ」

夏希:「任せたぜ」

萌 :「チェェェェンジッ、ワカクサ(ツー)! スイッチ・オン!」



♪ ダン ダン ダン ダン 

  若い命が 真紅に燃えて

  ワカクサビーム うちはなて

  今だ 合体 ワカクサロボだ



 主題歌とともに、三つ戦闘機が空中で勢いよく上下に追突し、激突した機体はドッキングして一つになって変形を開始する。機体の内側から手足が生え、コックピットが傾き、上部マシンがスライドして顔があらわれ、三機の戦闘機(マシン)は一つの巨大ロボになった。

 それが限界、だった。

 コンソールを殴りつけて、ヘルメットにパイロットスーツ姿のモエが絶叫する。

「つっこみどころが多すぎる!」

 夢話休題。発作をおこしたように、萌はこれまでの無茶な展開につっこんで、つっこんで、つっこみまくった。

 舞台は高度成長期の日本。

 萌と冬眞と夏希は、変形合体ロボット[ワカクサロボ]を操り、悪の侵略者・香澄から青い地球を守る存在――――のようだ。


 

 芝居再開。

 三人は気を取り直し、それぞれの席で操縦桿(そうじゅうかん)をにぎる。

夏希:「オープン・ゲェェット! チェェェンジ・ワカクサ3! スイッチ・オン!」

 すると、合体が解けて戦闘機(?)に戻った後、今度は三機の順番を入れ替えてドッキングし、さっきとは違う

ロボットになった。

香澄:「ざ、ざんしんなメカニズムですわね・・・・・・・」

 頭にシャレコウベをのせて、どぎついアイシャドウをひいた悪の女博士も、モニターごしで困ったような微笑みをうかべた。

そりゃそうだろうなぁと同意しつつ、ワカクサチームは巨大怪獣に攻撃を開始した。

夏希:「うりゃあああああ、六・甲・山おろしぃぃぃ」

冬眞:「トマホーク・ブーメラン」

萌 :「とどめです! ワカクサビィィム!」

 空中高く放り上げられ、でかい斧をぶつけられたうえに、必殺のビーム光線をあびせられて、巨大機械獣ゴズラF−5は

ギギギィィィと機械っぽい断末魔(?)をあげて爆発した。

 それをみて、悪の女王がお約束の捨て台詞を(すこし恥ずかしそうに)絶叫した。

香澄:「オーホッホッホッホッホ! これで勝ったと思わないことねえぇっ!」




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