夢の狭間 5
「楓ちゃんに謝りたいの」「謝るよ」「謝らせて」
「なにを?」
「わたしは自分のことで頭がいっぱいだった」「どう接したらいいか迷っていた」「あたしも放っておいたほうがいいと思った」
「そう?」
「わたしも知っているもの」「知っているから」「知っていたのに」
「なにを?」
「あなたのつらさ」「あなたの寂しさ」「あなたの苦しさ」
「なんのこと?」
「わたしをみて。この姿のとき母は家を出て行った」「何も言わずに家を出た」「親父は飲んだくれた」「暴力をふるった」「言葉が届かなかった」
「よくある話」
「あたしは家を出た」「わたしは強くなりたかった」「わたしは家を守りたかった」
「・・・・・・・・」
「わたしたちは」「支えあった」「姉妹だもの」「それにね」「お父さんも」「立ち直ってくれた」「あなたの母さんと」「出会ってね」
「苦労話?」
「いいえ」「あんたは知らなきゃ」「知ってほしい」
「他人の話なんてどうでもいい」
「いいえ」「わたしたちは」「姉妹」
「いまさら姉妹ごっこ?」
「だから放っておいて悪かったよ」「間違えてもやりなせばいい」「今までごめんね」
「ふうん」
「それにわたしは嬉しいの」「だってわたしたちの出会いは運命」「答えなよ。あんたの名前は?」
「・・・・・・・・・・・若草 楓」
「若草っていえば」「若草物語」「てことは?」
「・・・・・・・四人姉妹」
「あたしは冬眞。冬に眞けない長女」
「わたしは萌。春うららかに草木萌ゆる次女」
「わたしは夏希。夏に映える希望の三女」
「わたしは楓。秋を彩るもみじ。・・・・・・四女」
「ほらね」「だからさ」「な?」
「・・・・・・・・強引」
「これまでのことは謝る」「けど、このときから」「わたしたちは―――――――」