LUNA 4
赤竜:「アレスよ、よくぞ我が試練を乗り越えた。汝をドラゴンマスターにふさわしい勇者と認め、我が力を託そう」
グオオオオオオオオオオオオオンッ
赤竜が竜っぽく(?)啼くと、赤い光の玉がアレスの掌に宿り[赤竜の兜]になった。ドラゴンマスターになるために必要な四つの装備のうちの
一つを手に入れたのだ。
赤竜:「そして、モエよ。いえ、女神アルテナ様と、呼ばせていただきます」
モエ:「えっ、わたしのこと。まさか、わたしが、女神様の生まれ変わりなの・・・・・・・?」
赤竜:「あなた様が、ここまで来られたということは、赤竜めの封印をとけとの運命と受け取ります。しばし、目を閉じていてくださいませ」
モエが目を閉じると、赤竜が炎のブレスを吐きかけてきた。すると、モエの内に眠っていた女神の力が開放され、
モエは赤竜の力を使えるようになった。
赤竜:「さあ。次は、青竜の司るヘーベル湖に向かうがいいでしょう。御武運をお祈りしています」
そんなわけで、モエたちは三つめのエリアに渡った。
旅も後半に差し掛かったのだろうか。
三つ目のエリアでも、3人はいくつもの町をめぐり(略奪の限りを尽くし)、様々な趣向をこらしたダンジョンを堪能し、数多のモンスターを気持ちよく大量虐殺した。
赤竜に告げられたとおり、モエはただのヒロインではなく、世界の中心といえる女神アルテナそのものだった。なぜ人間に転生したのかはまだ不明だが、四匹の竜から四つの封印を解いてもらうことで、モエは【女神】に戻るらしい。
赤竜によって開放されたのは【炎の力】で、モエがさっきの赤竜に変身して敵を焼き尽くす大技だったが、MP消費が激しく、ここ一番でしか使えないため、ザコ戦のときは、やっぱり後方で歌っているだけだった。
ナツキとアレスは、レベルが上がるにつれてますます息があってきた。敵をうちあげての空中連続攻撃をくりだしたり、お互いをかばいあったり、
合体技をくりだしたりと、戦闘の醍醐味を存分に味わっていた。
「いいな、いいな。わたしも戦闘に参加したい〜」
「なに言ってんだよ。姉ちゃん、ケンカとかしたことないじゃん」
「うっ。それは、まあそうだけどさ・・・・・・なんか、わたしだけ疎外感っていうか・・・・・・」
「ヒロインっていうのはそういうもんでしょ」
「うーっ。わたしも合体技き〜め〜た〜い〜!」
「姉ちゃん、攻撃魔法ないからね〜。あきらめなよ」
「うーっ。ゲームってのは参加しないとつまんないの!」
「してるじゃん。回復と補助。RPGの要だよ。いなくなったら一番困る役だよ」
「うーーっ! わたし○○○○じゃないもん!」
再会は突然だった。
錬金都市ザールブルグで家業をこなした後、国境を越える許可をもらいにお城を訪ねると、アレスが国王に謁見してる間、
モエとナツキは空中都市ヴェーンからの使節団に出くわしたのだ。
???:「うふふふふ、ごきげんよう、みなさま」
いかにも女王然とした紫色のローブをまとった、空中都市ヴェーンの宰相。
腰まである金髪をたなびかせ、気品のある顔立ちに上品な笑顔をうかべている。
モエ :「あなたは・・・・・・!」
???:「うふふふふふふ」
裏事情を知らなければ、またしてもコロっとだまされていそうな、透きとおった微笑み。
半神にして、絶大な魔力をもつ空中都市ヴェーンの宰相カスミ。
カスミ:「はじめまして――――と、ご挨拶させていただきますわ」
モエ :「はじめまして、カスミ様」(さっきはよくもやってくれたわね)
ナツキ:「・・・・・・・」
姉妹がにらみつけると、カスミは毒のない微笑みをはりつけたまま芝居口調でつづけた。金色の髪はカツラだろうが、
今回といい、さっきといい、これがカスミの素顔だとしたら、現実でもセレブな日常を送っていそうな感じの女の子だ。
カスミ:「うふふ、あなたたちは特別な力をお持ちのようですね」
モエ :「いえいえ」
ナツキ:「それほどでも」
カスミ:「あらあら、あなたたちは姉妹のように息がピッタリですわね」
萌と『もみじ』のやりとりをみていたのだろう。
カスミが笑顔で皮肉をおりまぜてきた。
カスミ:「あなたにお似合いの舞台。わたくしが用意して差し上げますわ」
モエ :「どういう意味ですか」(くっ、やっぱり攻撃はできないか)
カスミ:「やる気のない伏線・・・・・・もとい、預言書の一節ですわ。悪しき意思もつもの現れるとき、光に導かれし者あらわれる。
夢という名の闇に囚われぬよう、せいぜい励んでくださいませ。光を手に入れつつあるヒロインさん」
そんなことを言い残して、ラスボス役は退場した。
カスミがどういう存在で、なにを考えているのか、萌にはさっぱり見当もつかなかった。
けど――――
なぜだろう。みていてむかつくけれど、今まで受けた仕打ちほどには、うらむ気にはなれなかった。
カスミが治める空中都市ヴェーンは世界の中心に浮かんでいるらしいが、いまはまだ関係ない話だ。
国王から通行証をとったアレス一行は、山門をこえ、山賊と戦い(ボコボコにして身ぐるみをはぎ)、なんかミニゲームで山菜をとったり釣りをした後、砂漠を歩いて次の町に到着した。
[盗賊の町リッツァ]
町に入った途端、イベントが起こった。
???:「おおっと、ごめんよ」
フードを深くおろし、砂色の長衣をずっぽり被った人影が、アレスにぶつかってきたのだ。謎の人影が去ったあと、
アレスが腰に手をあてて顔色をかえた。
アレス:「やられた、アイテムをすられた!」
モエ :「うそっ」
ナツキ:「おいかけよう!」
三人は走り出した。こういうイベントのときは、モエも全力疾走の二人についてくことができるのだ。
盗賊の町というだけあって、町の構造は迷路のように複雑に入り組んでいた。あざけるように町中を走り回る人影を、三人は、町人の協力をとりつけて酒場の2Fに追いつめるが、そこで人影を見失ってしまう。
アレス:「どこだ、どこに逃げた」
モエ :「みて、あそこのカウンターに何か落ちてる」
アレス:「あ、ボクの革袋だ・・・・・・へんだな、何も盗られていない?」
謎の人影は、なにも盗らずに姿を消してしまった。
アレスは納得いかないようで、部屋のあちこちを丹念にみてまわったが、特に変わったところは見つからなかったようだった。
いうまでもなく、これは伏線だ。モエは、なにかあるはだと調べてまわると、テーブルの足に彫られた文字に気づいた。
『あるべきすがたにかえれ』
(これは・・・・・・・・?)
萌はそのメッセージを自分の胸の内に秘めておくことにした。あの人が、こんなまわりくどいことをするのには、
それなりの理由があるに決まっているからだ。