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SCもえ 2

♪ あいたいな あいたいな せつないよ

  このきもち ゆめのなかなら いえる

 (マジカル リリカル)

  プリンセスもえ あなたのむねに ちょくげきよ




 PiPiPiPiPi(ピピピピピ)・・・・・・・・・・・・・・・

もえ:「うにゅ」

 こすり こすり。

 ねぼけまなこをこすりながら、目ざましどけいを手さぐりで、すとっぷ。

もえ:「うにゅ・・・・もうあさぁ〜・・・・・」

 ふあぁぁ〜、と大きくあくび。

 ベッドからおりて、さくら色のパジャマをぬぎぬぎ。

 かがみをみながら、そら色のせいふくにそでをとおして、かみをブラシ。

 りぼんをつけて、できあがり。


もえ:『わたし、若草(わかくさ)もえ。しろひめ小学校の4年生。好きな科目は国ごと家てい科。

    苦手な科目は体いくとさんすう。つっこみがとりえの女の子』


(・・・・・・・って、つっこみが取り柄の小学四年生ってなんなのよっ!)

 取り柄のつっこみを心でいれる間も、もえの口はナレーションをつづける。

もえ:『わたしの家ぞくをしょうかいするね』

 洋風のオシャレ階段をおりてリビングにはいると、椅子にすわっていた少年がたまごやきを口にくわえたままこちらをふりむいた。

??:「もえ、ねぐせがついてるぞ」 

もえ:「うにゅにゅ! ちゃんとブラシしたのに」

??:「ああ。うそだ」

もえ:「むっかぁ!」


もえ:『このイジワルなのが、とうやおにいちゃん。高校1年生。わたしの小学校のとなりにある、

    あおゆり高校にかよっているの。血はつながっていなんだけど』


透矢:「だれがイジワルだ。バカもえ」

――――――――こんどはブラッド君と義理の兄妹だった。あまりのバカバカしさに、萌はわれしらずこめかみをおさえていた。


 ともあれ、『もえ』は小学四年生。

 あらためて鏡をのぞくと、そこには末妹の(かえで)と同じくらい幼くなった自分の姿があった。肌荒れもなく、ほっぺもぷるんぷるん。黒目がちの目はくりっとしていて、にへらーっとわらった顔や、むすーっとふくれてみた顔が、なんかかわいいと自分で思ってしまった。

(それにしても小学生役なのに、どうしてわたしがヒロインなんだろ? 単に巻き込まれたから? それともブラッド君に好かれているのかな?)

 そう思うと、少し嬉しくもあり、いまとなっては迷惑なだけな気もするけれど、とにかく今度は車にひかれないエンディングを迎えたいものである。


 



 ひそかに楽しみにしていた小学校のシーンはカットされ、気がつくと、もえは自分の家に帰っていた。

もえ:「うにゅ〜、やっと学校がおわったよ〜。・・・・・・・・・うにゅ? 下のほうから物音がきこえてくるよ」(説明的だなー。うにゅう)

 ゴォー ゴォー

 すきまかぜだろうか。 

 音をたどって、もえは薄暗い階段をおりていく。

 もえの父は歴史小説家で、地下の書庫には沢山の資料が雑然とつみあげられている。どんな一般家庭だ、ここは。

もえ:「うにゅ、でんきがつかない・・・・・・・・・・・・」

 ゴォォォー ゴォォォォー  

 音をたよりに書棚をつたってゆくと、棚にしまわれた一冊の本にいきあたった。

もえ:「にゅにゅ? あの本のなかから音がきこえてくるよ・・・・・・・・?」

 う〜ん、と本を踏み台にして腕をのばす。めいいっぱい腕をのばして、もえはどうにかその本を手にとったが、反動で「うにゅにゅ〜」とこけた。 

 その本は図鑑のようにぶあつく、表紙が黒い皮でできていた。本の中から、ゴオオオオ、ゴオオオオ、と音がしている。

 おそるおそる本をひらこうとしてみたが、どんなに力をこめても本を開くことができなかった。

 まっ黒な本にはタイトルが見当たらなかった。なんとか本を開こうと、たてにしたり横にしたりして調べていると、ふいに表紙に青い炎がともって、見たことのない文字列があぶり出しみたいに浮き上がってきた。 

もえ:「ふしぎな字・・・・『封印(ふういん)の書』っ書いてる。あれ、どうしてわたし読めたのかな・・・・・・」

 もえが声にだしたとたん。

 ピカーッ

 本がひかりかがやいて、風もないのにページがはげしくめくれ―――――

 PON(ぽんっ)! っと。

 本の中から、シンプルな金色の鍵と、かがみもちのような丸っこいぬいぐるみが飛び出してきた。

 ぬいぐるみは爆睡していて、ゴオオオ、という音はぬいぐるみのいびきだったのだ。

もえ   :「うにゅにゅ?? うにゅにゅにゅ??」

ぬいぐるみ:「ふあ〜あ」

 ぼうっきれみたいな腕をのばし、ぬいぐるみが二等辺三角形の口であくびをした。

 かがみもちのようなぬいぐるみは・・・・・・よくみると雪だるまだった。 

ぬいぐるみ:「よ〜寝たわ〜。ホンマ、まちくたびれたで〜〜〜」

もえ   :「か、関西弁!?」(あっ、セリフまちがえた)

 しかし、UFOキャッチャーに入ってそうな安っぽいぬいぐるみ君は、萌のミスなど気にしたふうもなくトークをつづけた。

ぬいぐるみ:「わいは泣く子も黙る冬の精霊、フユダルマや。この本のなかであんさんがくるのを待っとんたんやで〜。

       ええか、あんさんは冥界からさまよいでた十の(ソウル)を捕まえなあかん」

もえ   :「う、うん! そんなゆめをみたような・・・・・・・・・・・・・」

フユダルマ:「話が早いやないかい。ええか。あんさんは愛と正義の『ソウルキャプター』に変身するんや。

       この金色の鍵(マジカルバトン)を使ってな」

もえ   :「うにゅ。それカギだし・・・・・・よくわかんないよ〜」

フユダルマ:「むっ! きたできたで〜、魔物(ソウル)の気配がきよったわ〜! よっしゃ、きばって行く・・・で・・・・・・??」ぼうっきれみたいな腕の先にくっついたまん丸な手を勇ましくあげたまま、ユキダルマのフユちゃんは固まってしまった。

 

 事故発生。

 暗転した舞台で、おそるおそる萌は話かけた。

「あの、どうしたの・・・・・フユちゃん?」

「ぎ、ぎゃあああああああああああっっ!!」

 ぬいぐるみの手でムンクになりつつ、ユキダルマ悲鳴をあげる。

「フユちゃん? フユちゃん?」

「ちがうの、もえ・・・・・・・・」

「その声、まさか」

「そう、あんたの姉さんよ。なんであたしがマスコットやねん・・・・・・・・・・」

 ガクッと、ちっちゃな雪だるまは全身でうなだれた。

 その様子はいかにもマスコット的で、ちょっとかわいらしかったが、萌は、さすがに口には出せなかった。

 

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