夢の狭間2
(前略)
――――――思いどおりに夢が進まない。例えば、あなたがうららかな春の野原を散歩していると、前触れもなく落とし穴に落ちたり大きな熊に出くわしてしまう。あるいは、恋人との楽しい時間が、身に覚えのない第三者によって邪魔される・・・・・・・・・・・・そんな夢をみたことはありませんか?
順風満帆な夢のなかで、理不尽な「失敗」が爪を研いで潜んでいる。人生と同じです。そういう夢をみるのは現実世界の恐怖が夢のなかで顕在化した結果であり、生存のための防衛本能なのだと、識者は述べます。
はたして、彼らのいうとおり、夢は現実の鏡に過ぎないのでしょうか? 望みもしないストーリーをたどっても、見たことのない景色をみても、知らない人になっても、あまつさえ犬猫、フンコロガシになったとしても、自分の体験が反映されているからに過ぎないのでしょうか?
(中略)
――――――――もしも、あなたが「誰かの夢」に取り込まれてしまったのならば、あなたがとりうる選択肢は2つしかありません。誰かに従うか、それとも抗うか。
従うことは受け入れることで、あなたがただの登場人物になることです。「夢のなかのあなた」がどうなるのかは夢の主次第です。幸せになるかもしれませんし、不幸になるかもしれません。いずれにせよ、プログラムはA Iをもちません。
もしも他人の夢に抗うことを選ぶのならば、それは不可能ではないにしても、非常に困難な作業です。例えるなら、会社に入った新入社員が、
会社の方針を転換させるようなものです。
もちろん、平社員は正面から社是に反対することはできません。そんなことをすれば、たちまちクビになってしまいます。やり方はいくらかありますが、まずは会社の方針に従うふりをすることです。そしてノウハウを身につけ、信頼を得て出世することです。出世をすることで、任せられる役割が重要なものへとステップアップします。少しずつ意見が採り入れられるようになって、あなたの存在が大きくなって、やがては会社にとってなくてはならない存在になって―――――――(後略)
モニターの前で眠る彼女は、いわば「大株主」だ。彼女は「夢の主」に気兼ねすることなく、事業に出資して、自分の意思を発現することができる。
彼女はブラッド劇場の「第二幕」をみることになる。それが彼女の望みだったわけでは、決してないのだけれど。