Too Heart3
裕之:「かったりい」
萌 :「ごめんね。迷惑かけて」
裕之:「べつに迷惑だなんていってねーだろ」
萌 :「やっぱりいいよ、おろして」
裕之:「いいから、しっかりつかまってろ」
萌 :「みんなみてるよ」
裕之:「みせたいやつにはみせておけ。それとも嫌か」
学校からの帰り道、足首をひねった萌をおぶる裕之。
すれちがう生徒たちが、見てはいけないもの見るような目をしている。
萌 :「……嫌じゃないよ」(ケータイで誰かよんでよー!)
裕之:「そうか」
萌 :「わたし、重くない?」
裕之:「重いな」
萌 :「ううっ。ダイエットしなきゃ……」
裕之:「ばーろー、冗談に決まっているだろう。軽すぎんだよ。ちゃんと飯食ってんのか?」
萌 :「三食もりもり食べてるよ。裕之ちゃんこそ、外食とか、コンビニ弁当ばかりになってない?」
裕之:「自分で作んのかったりいんだよ」
萌 :「裕之ちゃんさえよかったら、毎日でも作りにいくよ」
裕之:「それじゃ通い妻だ」
萌 :「それでもいいよ」
裕之:「えっ」
萌 :「わたしをお嫁さんにもらってくれる?」
裕之:「お、おい、萌……」
萌 :「なーんちゃって。冗談だよ」
裕之:「こいつー」
萌 :「きゃ、そんなに振り回されたら目がまわるよー」
裕之:「あははははっ」
萌 :「もおっ、裕之ちゃんったらー」
恥ずかしさで悶え死にそうになりながらも、萌はどうにか『萌』役をこなしていった。物語は終盤にさしかかったらしく、この後も友人のつきあいで
Wデートをしたり、新聞屋さんにもらった招待券で温水プールに出かけたりした。
萌は複雑な心境だった。最初は嫌なだけだっただけなのに、だんだん頭の中がぼーっとしてきた。広い背中におぶわれるのも、デートをするのも
水着姿をみられるのも、なにもかもが初体験だった。
でも、これは夢だ。空気のそよぎをリアルに感じても、生きている体温を肌で感じても、ここは夢のなかだ。
それでも、夢のなかのお芝居でも、ブラッド君と共にすごすのは、ちょっぴり嬉しい気がしないでもないような気もしない。でも、姉いわく、ブラッド君は他の女の子の専用ルートもセーブ&ロードで(?)同時攻略しているかもしれない。でも、いまのところ他のコと付き合っている気配は全くないし、でもでも、これが初めてのデートというのなら、やっぱり一生の思い出だし、大切にとっておきたかった。
(うう……お願いだから、目が覚めたらなにもかも忘れていますように……)