初めに
季節は葉桜。
憂鬱な季節はまだ続いている。
何度繰り返してもこの季節は苦手だ。
高校のクラス替え、紙の貼り出される瞬間のことを言っているのではなくて、なんとなしに浮ついたこの空気感が嫌いなのだ。
あっ、嫌いって言っちゃったよ。なるべく否定的なことは言わないように気をつけているつもりなのに。
とにかく僕は、この季節が苦手だ。
もっと言うと、夏も苦手だ。夏は海がある。海に浮かれ、夏休みに浮かれ、ひと夏の何とやらに浮かれ、浮かれた人間の集まる季節だ。
浮いて何処かへ飛んでいけばいいのにとすら思う。
もっともっと言うと、秋も苦手だ。秋には風情がある。風は冷たくなってきて、夏の若々しかった木々の葉はその色を変え、急に鮮やかに色づくではないか。
あれ?そう苦手でもなさそう。人さえ居なければ。
冬?冬は好き。だって冬は寒いだろう。寒くて、自分の息が白くなる。その白い息で自分の手を温めた時、初めて季節を自分の手の中に入れたような気になる。
つまり僕は春が苦手、ってことが言いたかった。
ごめんなさい。本当は、クラス替えが憂鬱で仕方なかった。葉桜のこの季節にクラスに馴染めていないなんてもう先が読めたようなもんだ。
去年もそうだった。
2年の今年こそは、と意気込んで話しかけたー消しゴム借りただけだけどーけど、友達なんて出来やしない。
何から手をつければいいの。
とりあえず僕のことを話そうか。
昔からずっと違和感を感じていたんだ。
僕は女だ。女、と言うと語弊がある。だって心は男なのだ。身体は女で、心は男、それなのに、心奪われる恋をするのは、いつも男の子なんだ。