9,科学都市
エリオドスからの勝負を受けて三日程が経った。
幸い、エリオドスとは別のクラスだったので特に気にすることなく過ごしていた。
マリアと茶髪とは同じクラスだった事もあり、茶髪も今では親しい仲になっている。
茶髪の名前はアレンと言って、サラント商会の息子らしい。
サラント商会は、『専門的な商品の販売』を始めたことで、ここ最近波に乗りつつある商会だ。
マリアの祖母であるアンドレアさんもこの商会で材料を買うことが多いらしく、商会では常連とされているらしい。
オレも幼い頃一度だけ支店を訪れたことがあるが、マイナーな物が多く売られていた気がする。
まぁ知識のなかった当時のオレにはよく分からなかったが。
「ウィル・ベーレントは居るか!」
今日の授業が終わり「今日はマリアが居ないからカトリーヌに行こうぜ」と言うアレンの提案を聞いていた時、オレの名前を呼ぶ大声が聞こえた。
因みに、カトリーヌと言うのは洋菓子店の名前である。
オレ、マリア、アレンの三人でカトリーヌに行った時の金額を見て以来、マリアを連れて行くのはやめようと言う事になっていた。
まぁ元を辿れば「オレが全部払うから好きなだけ食っていいぜ」と豪語したアレンが原因なわけだが。
オレは名前を呼んだ奴の方を見る。
「......誰だ?」
「エリオドスの隣にいた奴じゃないか?」
そういえば前に見たことがあるような無いような......。
まぁエリオドスの仲間なら要件は模擬戦関連のものだろう。
オレは席を立ち、取り巻きのいる方へ向かう。
「申請書を渡しにきた」
そう言いながら取り巻きは申請書を無理矢理オレに渡す。
そして何も言わずに去っていった。
「お、やっと届いたのか」
「ああ」
オレは申請書に目を通す。
書いてあったことは以下の通り。
▶︎模擬戦は七日後。
▶︎第三者が試合に介入した場合、日を改める。
▶︎武器は学校側が許可したもののみ使用可能。
▶︎大怪我をするような魔法の使用は禁止。
申請書にはもう少し細かく書かれているが、重要な事はこれくらいだろう。
申請書を折りたたんでポケットにしまう。
「そう言えばウィル、お前エリオドスに勝てんのか?」
アレンの質問に、オレは腕を抱えて考える。
「多分、今のままでは勝てないだろうな」
「......え?」
予想外の回答なのか、アレンの反応が遅れる。
「ちょっとそれヤバくないか!?」
「大丈夫だ。実力的には少し下かも知れないが、作戦は考えてある」
オレの言う実力とは、【仮想都市】が開花していない時のものだ。
スキルや技を多く購入した今のオレなら、少なくともいい試合は出来るだろう。
まぁ、だから『作戦を考える必要はない』という訳ではないが。
「ならいいけど、エリオドスの奴、一応戦闘成績上位だし気を付けろよ」
「ありがとう」
オレはアレンの忠告に感謝しつつ、席を立つ。
同時にアレンも席を立つ。
「そんじゃ、カトリーヌにでも行くか」
「ああ」
オレは所持金を確認してから、アレンとカトリーヌへ足を進めた。
カトリーヌから帰ってすぐ、オレは日本に来ていた。
いや、正確には【メニュー】の【都市管理】をみていた。
都市情報
ウィル・ベーレント
都市名:日本
都市レベル:4(900/1000)
資金:2億6400万
情報と照らし合わせる為、都市本を開く。
都市本62ページ
・都市レベルが5、15、25と上がるにつれ、ランダムで一つ『都市アビリティ』が追加される。(三つのアビリティから一つを選ぶ)
・最初のレベル5の時、都市の方針を左右するアビリティを選ぶこととなります。
※後から変更出来ません、慎重に選びましょう。
説明が遅れたが、『都市アビリティ』とは都市に何かしらの影響を与える、人間で言う所のスキルのようなものである。
『都市アビリティ』にもランクがあり、下からノーマル、レア、エクストラ、ユニークとなっているらしい。
オレは【都市情報】を下にスクロールする。
建築中の建物
・役所:残り10秒
カウントダウンが進む。
......5......4......3......2......1......0。
オレの視界にウインドウが現れる。
『役所の建設が完了しました。経験値500を手に入れました』
『都市レベルが5になりました』
『都市レベルが5になった為、チュートリアルを終了します』
『チュートリアル達成の報酬として{購入券}が贈られます』
『都市レベル5になりました。アビリティを選んでください』
・富国強兵(軍隊の攻撃力にプラス5%補正、軍人の士気10%補正)
・魔法の礎(魔法使いの攻撃力にプラス5%補正、魔道具の開発速度上昇、魔法文化成長速度上昇)
・豊作の都市(移民率上昇、食糧プラス10%補正)
ウィンドウに三つのアビリティが現れる。
【富国強兵】【魔法の礎】【豊作の都市】。
【富国強兵】と【豊作の都市】はノーマルだが、【魔法の礎】だけレアアビリティだ。
効果的にも【魔法の礎】が妥当だろう。
戦力の強化、民を増やす事も重要だが、魔法だって重要だ。
何より、魔法なら現実でも使える。
他の二つは現実で大した効果を得られなそうだが、【魔法の礎】なら魔法の種類が増えるというメリットがある。
あくまでも現実が第一なのだ。
という訳で、【魔法の礎】にしよう。
オレは【魔法の礎】をタッチする。
『【魔法の礎】でよろしいですか?YES /NO』
オレはYESをタッチ──
しようとしたところで、ウィンドウが歪む。
そして声が聞こえた。
──『¥@;/&”』が許可を出しました──
その一言で、大量のウィンドウが現れる。
『転生経験者であることが確認されました』
『異界の知識が確認されました』
『一定以上の知識量が確認されました』
『条件をクリア』
『──これにより、ユニークアビリティ【科学都市】が選択可能となりました』
・富国強兵
・魔法の礎
・豊作の都市
・科学都市(このアビリティを持つ都市は、魔法と同時に科学が発展するようになる)
「──えっ?」




