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6.マリアとの試合

時刻は十一時四十分。

俺たちは練習の為に、森の平地に移動したところだ。

ここら辺は人通りが少ないので、練習場としてよく利用していた。


「マリアはどんな魔法を教えてほしいんだ?」

「やっぱり近接戦で使えそうな魔法かな。遠距離は覚えてもあまり使わなそうだし......」

「遠距離の魔法も使える戦闘スタイルにしておいた方がいいって忠告してなかったか?」

「されたけど......」


マリアが頬を掻きながらバツが悪そうに口を濁す。

オレはその様子を見て静かにため息をつく。


「ねぇ、今ため息つかなかった?」

「ついてないよ」

「ホントそれ?」


マリアが少し前屈みになり、じーっとオレに対して疑いの目を向ける。

それを適当にあしらい、オレは何の魔法を教えるか考え始めた。



遠距離魔法が使いにくい戦闘スタイルである時点で、遠距離魔法を教えるのは論外だ。

やはり、マリアの注文通り教えるとしたら近接戦で武器関連の魔法だろう。

だが、それにも色々な種類がある。

その中からマリアが使いそうな魔法を絞っても二十種類以上。

全てを教えるなんて骨の折れる作業は論外だ。

ここは魔法を選別して、マリアが最も使いやすいと思うであろう魔法を教えるべきだろう。

そしてその選別方法となると、


「マリア、悪いがオレと試合をしてくれないか?」

「なんで急に?」

「マリアの実力を把握するのと、教える魔法を決めるためだ」

「......わかった」


マリアは少し考えて頷く。

そしてオレから少し距離をとり、腰にある両手剣を抜く。

その時に懐から銀貨を取り出しマリアに見せる。


「ルールは剣あり魔法あり。深い傷を負わせるような攻撃は当然禁止。攻撃力が高すぎる魔法も当然禁止だ。この銀貨が落ちたらスタートでいいか?」

「いいよ」


マリアは頷き、腰に掛けていた両手剣を構える。

オレはコインをトス。

それと同時に魔法を発動出来るように準備する。



――チャリンッ


銀貨が地面に落ちる。

最初に攻撃を仕掛けたのはマリアだった。


「《火球(ファイアボール)》!」


マリアの手から火の球が飛ばされる。

戦闘スタイルの事を言われたからか、慣れない遠距離の魔法を使ってきたな。


「《衝撃波(インパクト)》」


衝撃波(インパクト)》を使い、火球を相殺する。

攻撃を防ぐと、マリアはすぐに次の攻撃を仕掛けた。


「《付与(エンチャント)(フレイム)》」

「《生成・片手剣》」


マリアの剣が炎を纏う。

どうやら近接戦に持ち込むつもりのようだ。

オレも魔法で片手剣を生成して近接戦に備える。


「ソニックブ―スト!」


マリアはオレに接近すると、『剣技』を発動させ剣を振るう。

炎を纏う事で強化された木剣は、かなり威力を増しているみたいだ。

しかも『剣技』の発動でいつもの攻撃力とは比べ物にならない程になっている。

刃は落としてあるが、当たれば骨折くらいにはなるかもしれない。


「《シールド》!」


オレは咄嗟に《シールド》を使い攻撃を防ぐ。

マリアはすぐに姿勢を立て直し再び攻撃を仕掛けようとするが、オレが剣で払い牽制。

少し距離をとり魔法を使う。


「《アクセラレーション》!」


オレは《アクセラレーション》で加速、懐に飛び込む。

マリアはバックステップで回避するつもりのようだ。

重心が後ろに傾いている。

オレはそこから左手で服を掴むと同時に足を掛け、マリアを転ばせる。


「きゃっ!」


悲鳴をあげてマリアが転ぶ。

その隙を逃さず、右手の剣を喉元に置いた。


「チェックメイトだ」



■ ■ ■



試合後、オレのダメ出しを受けながらマリアは練習を始める。

少し休みをとってから練習を始めているため、マリアも試合の疲れは癒えているようだ。

マリアに教える魔法も決まったので、今はその魔法の説明をしている。


「オレがマリアに教えるのは《火炎剣(ファイアソード)》という魔法だ。この魔法は一から炎で剣をつくる魔法でな。オレの《生成》の火属性バージョンとでも思ってくれ」


「どんなイメージで発動させればいいの?」


「炎を剣の形にするイメージで発動させるんだ。最初から両手剣は難しいだろうから、まずは短剣からだ」


「うん......《火炎剣(ファイアソード)》!」


マリアは頷き、魔法を発動させる。

すると、手から火の球が形成され、次第に剣の形へと姿を変える。

暫くして、マリアの目の前に、炎でできた一本の短剣が出来た。

マリアは目を輝かせながら、短剣を手に持ち何回か振るう。


「結構手に馴染むね。これなら実践でも使えそう」


どうやら気に入ってくれたみたいだ。

マリアは感想を述べると、短剣に魔力を込め両手剣に姿を変えさせる。

慣れるの早いな......。


練習に励むマリアを後目に、オレは少し奥まで移動し【インベントリ】から椅子を取り出す。

そしてその椅子に腰を下ろし、手を組んで考え込む。


「さて、どうしたものか......」


オレはそこに転がっている大半が焦げた木剣を見る。

アンドレアさん、怒ると怖いんだよな......。


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