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年齢の話題は禁忌です。

何とか平成最後の日に投稿出来ました。

============


ギルドマスターの部屋から出た二人は再び裏口に向かい、そこから建物の外に出て、人通りがあまり無い道を進んでいた。歩いているリンの右側をエルムが飛びながら、二人並んで進んでいる形になっている。



「リンさん。次はどこに行くんですか?」

「先ずはエルムの服を調達だな。いつまでもその服装は良くないからな。その後は案内がてら街を回って、食材とか買ってからオレの店に戻るからな」

「わ、分かりましたです。……何から何までありがとうございますです」

「気にするな。今の服装でオレの店で働かせる訳にはいかないんだよ……って、オレのも新しいのを買わないとな」



今のエルムの服装は布一枚で身体を覆っている格好なので、この状態で働かせてしまうと、リンの店は奴隷を働かせていると周りから勘違いされてしまう可能性があるので、先ずは服屋に向かう事にしたのだった。更にリンの今着ている服も整備されていない山道を数日歩いていたのであちこち破れたり切れたりしている為に、服を新しくしなければならなかったのだ。



「そういえばリンさん。このステータスカードって不思議な物なんですね。私の髪の毛一本だけで、私の色んな事がこれに書かれてるです」

「まあ、そんな物なんだよ。最初に作った奴は誰だか分からないけど、便利な物だよ」

「そうなんですね。……リンさん。私のカードに書いてあるこれってなんですか?」

「ん?何だ?」

「えっと、……これです」



リンは止まってエルムのステータスカードを覗きこんで見てみた。それにはエルムの年齢や能力の数値、今どんなスキルを持っているかなどが書いてあるのだが、カードを初めて持った彼女には書いてある事で分からない所があったので、リンに見てもらって教えて貰おうとしたのだった。


エルムが分からない所を指で指す。そこはスキルの欄で『消費魔力急速回復』、『全属性使用可能』、『魔法詠唱無制限』の三つが書かれていた。



「……オレの推測だけど、この『消費魔力急速回復』ってのは、この言葉の通りに消費した魔力が急速に回復するスキルだと思う。『全属性使用可能』は、前にエルムが言ってた七つの属性全部使えるって事じゃないのか?で、『魔法詠唱無制限』は全く聞いた事が無い」

「……そういえば、周りが魔法を使って疲れていたのに、同じ位の魔法を使ってた私は特に何ともなかったです。でも、この三つって凄い物なんですか?」

「う~ん。……七つの属性全部使えるのは凄いと思うけど、他は魔法が一切使えないオレには分からないな」

「あ、そうでした」

「納得したか?分からない事は後で調べようぜ」



リンはエルムのステータスカードに書かれているスキルについて聞かれ、自分が答えられる範囲で答えた。彼女は魔法が一切使えないので、彼女の答えが曖昧なのはその為だった。


……だが、この時二人はこの三つのスキルについて、その凄さが全く理解出来ていなかった。


この二人に代わって説明すると、この三つのスキルというのは、魔法を主に使って戦っている者達にとって、誰もが一度は憧れ、喉から手が出る程に欲したとしても、大抵は習得は不可能だと諦めてしまう物である。何故なら、一般的な方法だけではなく非合法な方法でも決して習得する事は出来ない。この三つのスキルは、生まれてから自分の所有するスキルが、自身で分かるようになってから判明する物であり、正に生まれながらに運が物を言うスキルである。長い歴史の中でこの三つ全てを同時に所有していた者は、今まで誰一人として存在していなかった。


ちなみに、『消費魔力急速回復』のスキルとは、リンの言った通りで、消費した魔力が急速に回復するスキルであって、これがあれば魔力を多く消費する強力な魔法を連続して使用が可能となる。『全属性使用可能』のスキルとは、一般的には使える魔法の属性が一人につき一つだけなのだが、このスキルがあることで七つの属性全部が使用可能となっている。そして、リンが分からなかった『魔法詠唱無制限』のスキルとは、マジックアイテムが手から離れたり、それが無くても魔法が詠唱可能となるスキルで、このスキルはエルムの種族であるフェアリーしか習得出来ない種族限定のスキルである。


ここにいるエルムはつまり、一部の者が羨む三つ全てを生まれながらに持っていたのである。その運の強さは計り知れない。だからといって、今まで彼女が幸運に恵まれた訳では無かったが、今は運が良いと言えるだろう。



「そうだエルム。ステータスカードは不用意に他人には見せない方が良いぞ」

「え?どうしてですか?」

「それはな、他人のスキルを羨ましがったり妬んだりする奴が居るからだよ。誰かが持ってる物っていうのはみ無駄な争いを避ける為にも、情報は秘密にしておく事だ。……オレも、周りが羨むスキルを持ってるから、厄介な事に巻き込まれた事があったから」

「はいです」



リンはエルムに対してカードを他人にあまり見せないように釘を差す。リンが持っているスキルは、エルムが持っているスキル以上に誰もが一度は憧れる物である。リンは以前、それで騒動に巻き込まれた経験が何度もあったので、エルムが巻き込まれないように忠告したのだった。


そして、前を向いて再び歩こうとしたその時、



「おわっ!」

「きゃっ!」



突如、轟音と共に地面が少し揺れた。突然の揺れと音に驚いたリンは少しよろめき、エルムは飛んでいるので揺れには驚かなかったが轟音には驚いて叫び声をあげる。



「な、何なんですか!?冒険者ギルドの方から大きな音がしたです!!?」

「ギルドの方から?………あ、またか」



冒険者ギルドの建物がある方向から音がしたと聞いたリンは、とある事が原因で揺れと音が発生したと納得する。



「また、ってどういう事ですか?」

「それはな。この街では、たまに起こる音と揺れなんだよ。……年齢を気にする女の逆鱗に触れた愚か者に、裁きが下されたってところだな」

「ね、年齢を?」

「そうだよ、年齢だ。触れないように決めているのに、酒に酔っていたり怒りで我を忘れていたりしている奴が、やっちまうんだよな。年齢を気にする奴もいるから、エルムもその話題には気をつけろよ」

「は、はいです」



年齢は人によっては非常にデリケートな話題になる。触れられて欲しくない者が中にはいるが、この街では特に触れられたくない者が何人か存在する。そして、それに不用意に触れてしまうとその者の怒りが触れた者に降りかかる事となる。その内の一人が冒険者ギルドにいる事を理解したエルムは、今度ギルドに行く時は気をつけようと心に決めたのだった。



「……でも、たまにって事は何時揺れと音が起こるか分からないんですよね?」

「そうだ。オレもいつ起こるか分からないから、さっきのはびっくりして心臓が止まるかと思ったぜ」

「……あの、リンさんって死んでいるから心臓は止まってるですよね?」

「はいはい。オレのは言われた通り止まってるよ」



リンがエルムに軽い口調で返した事は本当の事である。彼女は死んでいるので心臓どころか全ての臓器は止まっている。心臓は脈動しておらず、肺は空気を取り込まない。胃は消化液を分泌せず、腸は栄養や水分を吸収しない。


更にリンは何日も飲まず食わずで問題なく過ごす事が出来る。その程度の事で彼女が動けなくなる事は無かった。また、彼女が食べたり飲んだりした物がどこに行くのかは、彼女自身も分からないままであった。



「……あ、いろいろと話してると日が暮れるから行こうぜ」

「分かりましたです」



立ち止まっていた二人は、目的の一つである服屋に向かって進んでいった。



============



時間は少し遡って、冒険者ギルドの受付の一角では、アステナが従業員としての業務を行っていた。



「はい!今日もお疲れ様でした!」



彼女はいつも通り笑顔で冒険者達を労いの言葉をかけていた。アステナは様々な事で冒険者達の疲れが少しでも和らげば良いと思って、笑顔で接していたのだった。



「アステナちゃーん!こっち来て俺に酒注いでくれよー!」



そんな時に、冒険者の一人の男性がアステナに男の元に来て酒を注ぐように呼び掛ける。



「すいませんが、それは私の仕事では無いです。ここは冒険者ギルドであって、そのような事をするお店では無いのでしないようにマスターから言われているんです」

「堅い事言わないでくれよ~!俺はいつも危険な目にあってるんだから労ってくれって!……それに、アステナちゃんのような美人に注いで貰うと酒が美味くなるんだよ~!」

「……私はお世辞を言われても、それは仕事では無いのでしませんよ」



冒険者の男性は何とか注がせようと試みたのだが、アステナの答えは仕事では無いの一点張り。彼女はただでさえ様々な業務を行っているので忙しく、仕事では無い事で労働時間を使いたくはなかったのだった。



「そんな事言わずによ~」



男は酒に酔っている様子で、顔が赤くなっており、ゲラゲラ笑いながら椅子から立ち上がって、少しふらふらとした足取りでアステナに近づいていく。



「何度も言わせないでください。それは仕事では無いんです」

「俺はよ~!常に危険な目にあってるんぎゅ!!!」



何とかアステナに酒を注がせようとしていた男だったが、途中で誰かに服の襟元を掴まれて後ろに引っ張られて変な声を上げる。



「……そこまでにしてくれるかしら?」



男を引っ張ったのはミシズだった。ミシズの額には青筋が浮かんでおり、彼女もこの事には苛立っていたのだった。



「おいっ!放せっ!」

「放さないわ。ここは冒険者ギルドなのよ、お酒なら飲みたい分を好きなだけ自分で注ぎなさい。そういう決まりなの」



ミシズはそう言って、男を掴んでいる手とは反対の手で酒樽がある場所を指差す。ここでの飲食は、まずお金を払い、注文した物を自分で取りに行かなければならない。また、追加の注文も同様である。酒などの飲み物も、容器を受け取ってから樽などから自分の手に持った容器に自分で注がなければならない決まりになっている。



「……なんなら、私が注いであげるわよ?」

「うるせぇな!お前みたいなババアに注がれたら酒が不味くなるどころか腐るんだよっっ!!」



男がミシズの事をババアと言った瞬間、空気が一瞬にして変化する。辺りに殺気が充満し始め、食事をしていた周りの者が震え出す。また、食器や容器がカタカタカタッ!と音を立てて振動し始めるなど不可思議な現象が起き始めた。



「…………誰が、ババアですって?」

「お前しかいないだろうが、このババアッ!!!」



ミシズの纏っている雰囲気が変わっている事に気づいていない男は、彼女に向かってババアと言ってしまう。その発言で、この男の末路が決定した。



「ふんっ!!」

「グブォォッ!!!」



ミシズは男を掴んでいる手とは反対の手で、男を脇腹に強烈なフックを決める。あまりの痛さに胃の中の酒を吐き出しそうになった男だったが、何とかギリギリの所で堪える事が出来た。……が、そんな男に対してミシズは、一切容赦しなかった。



「…………オラァッ!!!」

「グハッ!!!ゲフゥッ!!」



ミシズは男に足払いを掛けて男を床に仰向けに倒す。背中を強く打った男は痛みを堪えきれずに声を上げるが、ミシズは間髪入れずに、その男の腹のど真ん中に、力を込めた拳を振り下ろす。轟音と共にこのギルドの建物が……、否、この街が少し揺れた。


リンとエルムの二人が聞いた轟音と、リンが感じた揺れの正体はこれである。


ミシズの怒りの鉄拳を受けた男は、口から酒を噴水のように吹き出して、それが終わると気を失ってしまった。ミシズはそんな男の胸ぐらを掴んで、自分の中の収まりきらない怒りを、その男に言葉でぶつける。



「誰がっ!行き遅れのっ!皺だらけのっ!!クソババアだとぉぉぉ!!!」

((((そ、そこまで言ってない!!))))



ミシズの怒りの言葉に周りの冒険者やギルドの従業員達は、各々が心の中で否定するが、彼らは決して口に出す事はない。それをしたら最後、男と同じ末路を迎える未来しかない事が分かっていたからである。



「ミシズさん!お、落ち着いてください!!」



そんな空気の中で、アステナがミシズを宥める。元は自分が男に対して強く言わなかったので、男をあんな目に会わせてしまったのを責任を感じ、これ以上被害を被らせない為に止めに入ったのだった。



「あなたはまだ若いですよっ!私の方が年上(・・)じゃないですかっ!!?」

「「「「「「えっ!!!!?!?」」」」」」

「えっ?じゃないですよ!!?何で皆さんが驚いてるんですかっ!!?」



アステナの発言によってミシズと彼女の手によって気絶している男以外から驚きの声が上がる。彼らが驚いてしまうのは無理も無かった。アステナの見た目は若く、一見すると大人の雰囲気をかもし出す少女と感じられるのに対し、ミシズの見た目は顔などに幾つかの皺があり、おばさんと言ったほうが当てはまる見た目であったからだ。


ミシズより若い見た目のアステナの方が年上、という衝撃的な事実を、たった今知らされたので驚いてしまったのだった。ちなみに、冒険者ギルドの他の従業員達は二人の年齢の差の事を知っている為、ここでは驚く事は全く無かった。


何故アステナの方が年上なのかというと、アステナの種族はエルフであり、彼らは他の種族よりも長寿だからであって、その中には見た目が若く見える者が多く、彼女もその中の一人である。



「私の年齢は43で、ミシズさん6歳下じゃないですか!!?」

「ちょっとアステナ!!?何私の年齢を遠回しに言ってるのよっ!!?」

「あっ!!ごめんなさいっ!!」



アステナは彼女なりにフォローしたつもりだったが、周りにミシズの年齢を間接的に暴露してしまっており、ミシズは従業員以外にあまり知られたくなかった年齢が、ここで知られてしまったのでかなり混乱している様子である。



「わ、私だってわざと言ったんじゃないんですっ!!ミシズさんは37歳で…」

「いやぁあああ!!!直接言わないでっ!!」



アステナは何とか言葉を取り繕ったのだが、今度は年齢をそのまま包み隠さず言ってしまったので、ますます混乱に拍車が掛かってしまい、ミシズは悲鳴を上げる。



「ご、ごめんなさいっ!間違えましたっ!!ミシズさんは最近若作りに余念が無い……って、違うっ!!若返りの薬を夜な夜な研究してる……って、これも違いm「それ以上言うなっ!!」あぎゃっっ!!!!」



若作りだの若返りの薬だの、変な噂が手遅れかもしれないが広まらないように、ミシズはアステナを一刻も早く黙らせる為に、右ストレートをアステナの顎に放った。その拳を受けた彼女は脳が強く揺さぶられて気を失った。



「ふぅ。……って、アステナ!!?ごめんなさいっ!!目を覚ましてっ!!?」



ミシズは、ふと我に返るとアステナを殴ってしまった事に後悔して、何とか起こそうと倒れている彼女の身体を揺すったりしているが、目を覚ます気配が全く無かった。



「ちょっと誰かっ!!この中に回復魔法使える人居る!?居たらこっちに来てっ!!」



目を覚まさないと分かったミシズは、周りに回復魔法が使える者が居るかどうかを尋ねると、回復魔法が使える四人の冒険者が駆け寄って行く。


こんな騒動が起こっても、冒険者ギルドはいつも通りの時間が過ぎていくのだった。



============



そんな騒動が冒険者ギルドで起こっている事を半分程知らない二人は、服を調達し、食材を買い、他にも街を案内しながら様々な物を揃えながら回り、リンの店に戻って来たのであった。



「ここが……」

「そう。オレがやってる店だよ」



リンが営む雑貨屋、『ウィンスト』に入ったエルムは、棚に置いてある商品などが、今彼女の目に映る物全てが初めて見る物なので、感銘を受けている。



「明日からここで働いて貰うから、よろしくな」

「はい!よろしくお願いしますです!」



明日からこの雑貨屋で働く事となるエルムは、リンに元気良く返事をする。様々な期待や不安を抱えながらも彼女の新たな生活が今ここから始まるのである。



「リンさんは、このお店を1から始めたんですか?」

「いや、オレはここを引き継いだんだよ。この雑貨屋は引き継ぎ手が居なくて、前の店長もその時は高齢で、しかも持病を抱えていて店をやめようかと考えていたんだ。店の名前も特別な思い入れがある物だって言ってたから変えずにそのままにしてる」

「前の店長ってどんな人だったんです?」

「ん?……厳しいけど、商売のやり方とかをいろいろ教えてくれた師匠であると共に、こんなオレを口が悪い孫娘のような奴って言いながらも受け入れてくれた爺さんだよ」

「そうだったんですか」



リンはこの店を1から作った訳ではない。彼女が言った通り、この店は本来の引き継ぎ手が存在せず、その時の店長は高齢で持病があり、店が無くなるのは時間の問題であった。数年前、偶々リンとその店長が出会い、当時は冒険者ギルドで働いていた彼女が紆余曲折あってこの店を引き継いだので、この雑貨屋は無くならずに残ったのだが、この話はまた別の機会にしよう。



「エルム。色々と初めての事ばかりで大変だと思うけど、オレも誰かを雇うのは初めてだから、一緒に頑張ろうぜ」

「はいです!」

「いい返事だ。……取り敢えず、一番最初は雇うからそれの契約だな。業務時間や業務内容に、賃金はいくらが妥当か、支給する物はどれをどのくらいか……、何気に決める事いっぱいだな」

「あの、リンさん」

「なんだ?」

「お金ってどう数えるんですか?」

「あ、……まずはそこからか」



エルムは今日生まれて初めてお金の事に触れたので、数え方などのお金に関する事の知識は全く無い。何よりも、まずはそれを教えなければここで働く事は出来ないと思ったリンは、教えながら働かせようと考え、どうやれば最善な方法かを模索していかなければならない事を自覚する。


正式に雑貨屋を引き継いでから今まで一人てやってきたのだが、誰かを雇いながら経営するのは勝手が違う物で、慎重にならざるをえない。



「エルム。明日から働いて貰うけど、オレは教えながらやるからな」

「分かりましたです。よろしくお願いしますです」

「こちらこそよろしくな」



二人はそれぞれ右手で握手をかわす。エルムの手は小さいのでリンは潰さないように優しく握る。



「そういえば、エルムの年齢っていくつだ?」

「私は13歳です。カードにも書いてあるです。リンさんの年齢はいくつなんですか?」

「……一応、17歳だ」



年齢を尋ねられたリンは正直に答えたが、彼女の顔は何故か、とても言いたくなかった表情をしていた。



「一応って、どういう事ですか?」

「……年齢を言うのは嫌なんだよ。オレのカードを見せるけど年齢の欄を見ても笑わないでくれよな?」

「えっ?は、はいです」



エルムはリンから彼女のステータスカードを受け取り、言われた通りに年齢の欄を見る。



「……何ですか?この『永遠の17歳』って?」



リンのステータスカードの年齢の欄には、『17歳』と確かに書いてあるのだが、その前に『永遠の』と書いてある。



「それはな、…………マスターが勝手に決めたんだよっ!死んでいるから年はとらないって、そこは納得出来たけど!何で永遠の17歳って、オレに相談も無しに勝手に決めたんだよっ!!しかも、もう直せないって何でだよ!!」

「納得はしたんですか?」

「死んでるから年はとらないって所だけだぞっ!!それ以外はしてないからなっ!!」

「あ、あはは……」



リンは悲痛な叫びをあげながら、何故そうなったのかを説明する。


リンの身体は死んでいるので年はとらない、そう考えたシーアは、記憶が無いリンの年齢を決める時に、誰にも相談せず勝手に『永遠の17歳』と決めてしまった。それをリンがカードに書いてあるのを気づいたのは、それから少し後になってからの事で、勿論気づいた直後に「何で勝手に『永遠の17歳』と決めたのか」と抗議はしたのだが、「もう直せないも~ん」と凄く軽く返されたので、そこで抗議する気が失せて諦めてしまい、それ以来リンは『永遠の17歳』として生きていく事となった。……死んでいるので生きていくとは言えないと思われるが。


そんな悲痛な叫びを聞いたエルムは、ここにも年齢を気にする人がいる。しかも、冒険者ギルドにいる人以上に気にする人がいると思い、乾いた笑い声しか出なかった。



「あ、あの、リンさん。元気出して下さいです」

「……無理言うなよ」



エルムは何とか励まそうと声を掛けるが、リンの気分の落ち込みは相当な物で、彼女が立ち直ったのはしばらく時間が経過してからだった。



============

ミシズさんじゅうなな歳。


リンは永遠の17歳。


このように、この小説には現段階で一応17歳が二人います。

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