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強敵からの逃走は困難です。

本来ならもっと早く投稿出来たのですが、風邪を引いてしまったので遅れてしまいました。皆さんも風邪には気をつけてください。……うん、説得力がまるで無い。


今回と次の話は予約投稿をしてみます。


今回は12月26日の22時、次の話は23時にします。

============



ここで二人の目の前に現れたフレイムドラゴンと、それに関わる事柄を時間を遡って話をしよう。


リンが言った通りこのフレイムドラゴンは、本来ここにいる存在ではなかった。理由としてまずは、二人の目の前に現れたフレイムドラゴンは雌で、卵を産んで育てる自分に栄養を蓄えるために餌が沢山必要だったので、それを求める為に本来の住み処にしている砂漠の厳しい気候の地域から移動して来たのだった。


厳しい気候の地域では生存競争が激しくその場所を生き抜くためには強くならなければならない。しかし、どんな強者でさえも空腹には絶対に勝てない。それを理解していたかどうかは定かではないが、このフレイムドラゴンは他の個体よりは用心深い性格だったので卵を産む時期になる前から、つがいの雄と一緒に移動を始めて、やっとのことで今の場所にたどり着いて栄養を蓄える事が出来た。


そして本来の住み処にしている砂漠とは違って、この辺りは強敵が存在せず餌が豊富にある事が分かるとそこで巣を作り上げた。この辺りはフレイムドラゴンを倒せるような魔物は存在しておらず、つがいのフレイムドラゴンは敵に襲われる事はなく順調に繁殖の時に向けての準備をしていった。




…………その後は滞りなく4つの卵を産んで、夫婦で交代で温めていたのだが、その夫婦に不幸が訪れる。


フレイムドラゴンの存在に気づいた近隣の冒険者ギルドが危険性を考慮し冒険者に討伐依頼を出した。そして、一つの冒険者のチームが激闘の末に雄のフレイムドラゴンを討伐したのだった。雌がその事に気づいたのはしばらくしてからで、一頭で育てる事になったのだが更にまた不幸が訪れる。




────育てると決めた4つの卵が全て、巣から無くなっていたのだった。


それは、自分自身の栄養の補給の為に僅かの時間だけ巣を離れなければならない事態に陥り、自分が離れてしまうと卵を守れる者が居なくなるのだが、早く戻れば問題は無いと考えた。少しの心残りがあるが仕方が無いと割り切って移動していったのだった。


本来ならつがいで卵を温める場合は、片方が卵を温めている時はもう片方は餌を探して自分も栄養を補給するのだが、このフレイムドラゴンは雄が討伐されてしまったので、一匹で限界まで卵を温めていたのだった。今までは何とか飲まず食わずで踏ん張っていたが、遂に限界に達してしまったのでその決断せざるを得なかった。自分が倒れてしまったら卵を育てる者が居なくなってしまうからである。


……そして充分な栄養を蓄えて、焦る気持ちを抑えつつ巣に戻っていったのだが、そこで自身が育てていた卵が全て無くなっていた事に気づいて探し始めた。僅かに残っている卵の匂いを頼りに山を探していったのだった。




============



場所と時間が変わって、リンがエルムに出会う少し前の時間。二人が出会った場所は、闇商売の取引が行われる事になっていた場所。今の時間はその準備に追われている様子で、何人もの闇商売人が忙しなく動いていた。


闇商売は王国や冒険者ギルドの監視の目を避けながら行われるので、基本的に同じ所には長居しない。長居していると見つかってしまい、商品や取引が台無しになるリスクが高いからだ。ここに居る者達はそれが分かっていたので手早く作業している。


そんな最中、ある一人の男の怒号が響いていた。



「何やってたんだ、てめぇら!!女に会ったにも関わらず、拐うどころか何も持たずにのこのこ帰って来やがって!!」

「で、でも、さっきも言った通り、その女はアンデッドだったんすよ!!」

「魔物だったんですよ!?俺達が勝てる訳無いじゃないですか!?」

「ホントに無理っすよ~!」

「それをどうにかしてその女を拐ってくるのがお前達のやる事だったんだよ!!……ったく、売れば結構な金になる筈だったのによ。……もういい、下がってろ!!」

「「「「「す、すみませんでした!!!」」」」」



一人の男が五人の男に対して説教をしていた。説教をしている男はこの闇商売を取り仕切る男で、説教を受けていた五人はその男の部下であった。


彼は五人に対して近くで何か売れそうな物を取って来い、と少し無理がある命令を出していたのだった。五人は何とか期待に答えようと探していた時にリンに出会って拐おうとしたが、リンの事を魔物だと勘違いして怯えて逃げてしまい、何も得ないまま戻って来たのだった。


……リンも五人の事を闇商売人ではなく盗賊と勘違いしていたのだが、それは置いておく。



「まったく、……そんな事より、今日の目玉はフェアリーの女とあの卵だ。この二つは高く売れるぜ」



取り仕切る男は今回の目玉商品の二つが高く売れる事に期待し、仕事に戻っていった。一つ目のフェアリーの女とは、リンに出会う前のエルムで、彼女はこの時点ではもう助からないと諦めていた。


二つ目の卵とは、この場所に来る前に偶然見つけた巣の中にあった物だった。その時は巣には卵を守る存在が居なかったので、男は部下に命令して巣にあった4つの卵を全て持っていったのだった。何の卵かは分からなかったが、見た事が無いのは珍しい卵だ、という考えが浮かんで高く売れると見込んでいた。


……だが、この男に限らずここに居る者は全員、その卵についてある重要な事を知らなかった。もし、それを知っていた者が一人でもこの場に居たとしたら、この後に起きる悲劇は彼らに降りかかる事は無かっただろう。



「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「な、何だっ!!何が起こった!!?」



悲鳴が聞こえ、男は何事かと確認した。騒ぎがした方向を見ると、火の手が上がっており荷車などが破壊される音が響いている。



「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「た!た!助けてくれぇぇぇ!!!熱いぃぃぃ!!!」

「に、逃げろぉぉぉ!!!」



周りから悲鳴が聞こえる度に辺りは混乱が増していく。



「に、逃げるなっ!!お前ら、商品を守りやがれっ!!」



男は商品を守るように指示を飛ばす。今回は特に金を掛けて準備していたので売る事が出来なかったら自分が大損害を被ってしまう。男はそんな事は絶対に嫌だったので指示を飛ばしたのだが、商品を守ろうとする者よりも自分自身の命を守る為に逃げようとしている者の方が圧倒的に多かった。



「ド、ドラゴンが!!!フレイムドラゴンが現れたぞっ!!」

「フレイムドラゴンだとっ!!か、勝てる訳ねえよ!!!」



ここに居る誰かがフレイムドラゴンが現れたと告げると、この場が一気に絶望感に包まれる。ここに居る者達は皆、とても弱い魔物なら何とか勝てる程度の実力があるのだが、フレイムドラゴンのような強い魔物になると勝てる筈は無い。戦いを挑もうとなれば、蹂躙され命を散らす事が目に見えて分かる。



「何もたもたしてんだよ!!商品を運べっ!!」

「は、はいっ!!」

「よし!行くぞっ!!」



取り仕切る男の指示を受けて、何人かの闇商売人達が商品を守ろうと荷車や馬車などで運び出そうとしていた。その中には卵もあり、4つの卵が荷車に乗せられて運ばれようとしていた。……急いでいたので固定されずに乗せられただけであるが。



「ギャアアアアア!!!!」



……商品を運び出そうしたタイミングが悪かったのか、フレイムドラゴンが卵を見つけ、卵を取り返そうと一直線に卵を運んでいる者達に突進していった。



「ひぃっ!!!こ、こっちに来てるぞ!!!」

「し、死にたくねえっ!!」

「おい馬鹿っ!手を離すなっ!!あっ!!!」



向かって来るフレイムドラゴンを見て怯んでしまった闇商売人が手を放してしまって、荷車が傾く。傾いた事によって固定されずに乗せられていただけの4つの卵が荷車を転がって行き、そして次の瞬間、



グシャッ!!!!



荷車を飛び出して地面に落ちた4つの卵は全て砕けて、中身が無惨にも飛び散ってしまった。草の上や茂みの上に落ちたのならそれが衝撃を和らげて卵の形は保っていただろうが、不幸な事にこの場所は踏み固められた土の地面だったので、衝撃が直に伝わってしまい卵が砕けてしまったのだった。



「グル、グルルルルルゥ!!!!」

「あ、ああ……」

「も、もしかしてこいつの卵だったのか?も、もう駄目だ……」



闇商売人達は先程の卵がフレイムドラゴンの卵だと分かると、自分達はとんでもない物に手を出してしまった事を悟るが、すでに取り返しがつかない所まで事態が進んでいたのだった。……文字通り、彼らはフレイムドラゴンの逆鱗に触れてしまったのだから。



「グギャアアアアア!!!!」

「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」



卵を割られた事でフレイムドラゴンの怒りは頂点に達して暴れ出し、この場にある物全てを破壊し始めた。



============



そして、現在に時間は戻って、



「グギャアアアアア!!!!」

「き、来てるですっ!!追いかけて来てるですっ!!」

「言われなくてもっ!!分かってるっての!!」



リンとエルムの二人は、山の中でフレイムドラゴンに追いかけ回されていたのだった。フレイムドラゴンは卵を盗んだ犯人を蹂躙して荷車などを破壊していたのだが、まだ仲間が居るだろうとフレイムドラゴンは思っていたので探していた。その途中でリンとエルムを見つけて二人を犯人の仲間だと思って、沸き上がる怒りをぶつける為に追いかけていたのだった。


……言い方を変えると、二人はこのフレイムドラゴンからとばっちりを受けているのである。


そんなリンは荷物とエルムを背負いながら追いつかれない様に山の中を全力で走っていた。その後ろをフレイムドラゴンが木などの障害物をもろともせず追いかけていく。



「リンさん!何でまっすぐに逃げないんですか!?そうすれば早く逃げれるですよ!!」

「何言ってんだよ!歩幅があっちの方が大きいから、まっすぐ逃げたらあっという間に追いつかれるんだよ!!」



リンは一直線に進むのではなく、木と木の間を通り抜けるなど細かい動きで逃げていた。また、彼女はフレイムドラゴンとの距離が狭まってきたら進行方向に対して右または左に向きを変えて逃げる、それを繰り返しながら逃げていた。理由としては、リンの歩幅とフレイムドラゴンの歩幅の差が大きいので直線に逃げたりしたら簡単に追いつかれてしまうだろうと判断したからだった。



「それによ!あの身体の大きさだと小回りは効かない筈だ!ちょこまかと逃げればそのうち諦めると思うぜ!」

「そうだといいんですが!?」

「言ってくれるな!」



また、追いかけて来るフレイムドラゴンは巨体なので、小回りが効かないと判断したリンは正しかった。現にリンが向きを変えて別の方向へ逃げる時には、フレイムドラゴンは勢いがあり過ぎて急に止まる事は出来ず、方向転換に手間取ってしまう事が多々あった。



「ギャアアアアアア!!!!」



なかなか二人に追いつく事が出来ないフレイムドラゴンは苛立ち始め、スピードを上げる。だが、それによって急に止まる事が難しくなり、方向転換にも手間取る事が多くなっていく。それらが更にフレイムドラゴンを苛立たせる事になっていくという悪循環に陥っている事にフレイムドラゴンは気づいていなかった。



「グルゥアアアアア!!!」



フレイムドラゴンは雄叫びを上げる。怒りがどんどん溜まっていって今にもそれが爆発しそうになるが、上手くいかない状態が続いていた。


……二人に近づいた時に炎を吐く事が出来ればすぐに終わると思われるのだが、そんな簡単な事に気づかない程、頭に血が上っている様子であった。



「ところでリンさん!道は大丈夫ですよね!?迷ったりしてませんよね!?」

「それは後だ!!今は逃げる事が最優先だよっ!だから、うわっ!!」

「きゃあ!!」



逃げている途中でエルムはリンに迷ったりしていないかを尋ねるが、リンはそれに対して答える暇は無かった。そんなやり取りをしていたのでリンは足元にあった僅かな窪みに気づく事が出来なかった。



バタンッ!!ズザーーーーーーーーーッ!!!!!!



「リンさんっ!!め、目の前っ!!が、崖ですっ!?」



その窪みに足をとられたリンはバランスを崩し、前のめりに倒れる。不幸な事に走っていた場所が下り坂になっていたので、リンは転がらずにそのまま倒れた状態で滑っていった。それは彼女の顔や胸などを地面を擦りなからであった。更に不幸な事にその先が崖になっているので、勢いそのままに崖から飛び出して落ちていった。



「こぶっ!!」



……しかし、その崖はリンの身長の三倍程度の高さの崖だったので落下時間は短く、すぐに地面に到達した。それと、黄色い()が群生している場所に落ちたので二人が受ける衝撃がある程度和らいだのであった。落ちた時に出た声はその衝撃を受けたエルムの声だった。



「…………」

「リンさん!だ、大丈夫ですかっ!?…………し、死んでしまったんですかっ!?返事して下さいです!!」



リンの背中の荷物の中に居たエルムは軽い衝撃を受けただけで怪我はしていなかった。背負っていた荷物も同様で中身が飛び出す事は無かったが、リンは違っていた。


リンの背中に居るエルムからは見えないが、リンの顔や胸、腕や脚などは、地面との摩擦によっての擦り傷や、酷い物だと尖った石などで皮膚を切ってしまって、肉が抉れ骨が見えている箇所があり、服も同様に擦れた所が切れたり破れたりしている。


エルムは自分が受けるべき怪我までもリンが代わりに負ってしまった事に申し訳無さそうに声を掛けるが返事が無いので、もしかしたら死んでしまったのかと思い始めていた。



「おいっ!勝手に殺すな!……って、もう死んでるけどよ!」

「ひいいいっ!!!か、顔がっ!!顔があぁぁぁぁっ!!!!」



……彼女は既に死んでいるが、リンは勝手にエルムの中で殺されてしまった事に怒って顔をエルムに向ける。その顔は元の状態に戻っている途中だったので皮膚の下にある筋肉や骨などが所々見えてしまっている。一番酷い物は目が抉れて眼球が無くなっており、それが再生している途中だった。


とても酷い例えになってしまうかもしれないが、今のリンの顔は見る者に恐怖を与える不気味な顔になっていて、それを見たエルムは思わず悲鳴を上げてしまった。



「あれ?見えない?……あ、悪い!今顔とか元に戻ってる途中だった!見せて悪かった!」



エルムの悲鳴を聞いたリンは目が見えない状態だったが、エルムの悲鳴と目が見えない事で、今自分の顔がとても見せられない程に酷い状況になっている事に気づいてエルムから顔を背ける。



「……い、いい、痛く無いんですが!?酷い怪我ですよ!?ほ、骨とか見えてましたです!め、目が無くなってたです!!」

「心配すんなよ、痛くは全く無いから。……ん、見えてきたからそろそろ戻ったか」

「えっ?戻ったって!?えっ!?」

「ほら、もう大丈夫だろ?」

「も、……元通りになってるです。でも、一体どうしてですか?」



酷い怪我をしているのに全く痛くない。それを聞いたエルムは一体どういう事なのか?と疑問に思っていると、間髪入れずに戻った、と聞こえたのでまた疑問が浮かんでいく。更に、先程少しだけ見たリンの顔はとても酷い有り様だったが、そんな状況にもかかわらず血が一滴も出ていなかった事を思い出して、ますます疑問が浮かんでいった。


エルムが疑問と戦っていると、リンの顔は怪我をする前の顔へと元通りに戻っていった。戻った事を確認したリンは再び顔をエルムに向ける。彼女の顔を見たエルムは訳が分からなくなっていた。



「悪いな、オレこういう身体なんだよ」

「どんな身体ですか!?酷い怪我したのに痛くないなんておかしいですよ!?普通(・・)だったら、さっきの怪我だと血が沢山出てる筈ですっ!?」

「……あ、やっぱりおかしいのか」



驚いたエルムの普通(・・)だったら、という言葉を聞いてリンは自分は絶対に普通ではないと改めて思わされる。……望んでもいないのに持っていたスキルによるものだったが、エルムはこの時は知らなかったのだった。



「詳しい話は後でするから待ってくれ。今は逃げる事が最優先だからな。……よっと」

「そうですね。お願い、……しま、……す……で……す」

「ん?どうした?」



リンは先程までフレイムドラゴンに追いかけられていた事を思い出して立ち上がる。自分の身体に問題が無い事を確認して逃げようとしたが、背中に居るエルムの様子がおかしい事に気づく。



「り、リン……さん。わ、私、……き、急に、……から……だが、痺れ……て」

「急に痺れて?あと、この黄色い煙は何だ?……げっ!!」



エルムが自身の身体が痺れているのを告げる。それを聞いたリンは何故だろうと思った。ふと周りを見ると黄色い煙が辺りを漂っているのを見たリンは、自分達が一体何処に落ちてしまったのかを気づかされる事になった。



「!!」

「!!!」

「……ぱ、パライズプラントか。……ここってまさか、こいつらの住み処か!?この黄色い煙は花粉か!?」



リンの周りには黄色い花びらを持つ花の魔物、パライズプラントが居た。しかも、その数は一匹ではなく数十匹で、リンとエルムの二人はパライズプラントの住み処にに自ら侵入してしまったのだった。


その住み処に侵入した二人を敵と認識したパライズプラントの群れは、威嚇しながら麻痺作用の花粉を大量に撒き散らしていて、それを吸ってしまったエルムは体が痺れてしまったのだった。



「離れないとヤバいな。オレはともかく……、ん?何だこれ?」



リンは自身が持っているスキルの効果によって麻痺などの状態異常にはならないが、エルムはそうではなかった。現に痺れている事を訴えていたから一刻も早くここから逃げなければならないと思ったリンだったが、自分の胸や腹などに黄色い液体が付着していた事に気がついた。


……その黄色い液体が何なのかは、リンが倒れていた所にその答えがあった。



「あ、…………オレが仲間を潰したから、こいつら怒ってたのか」



リンが倒れていた所にはパライズプラントが三匹潰れていた。その三匹のパライズプラントは落ちてきた彼女の下敷きになって絶命し、その際に押し潰された事によって黄色い体液が飛び出してリンの胸や腹などに付着したのだった。


リンはそれで、仲間が潰された事にパライズプラント達は怒って花粉を撒き散らしたのだと結論を出したのだった。



「グギャアアアアアアアアア!!!」



ドスンッ!!!!



「げっ!追って来やがった!!!」



そんな時に、先程までリンとエルムを追いかけ回していたフレイムドラゴンか崖の上から飛び降りて来た。


リンが崖から落ちていった時には、フレイムドラゴンは減速しながら方向転換を終えた時で、いざ追いかけようとしたが彼女が突然視界から消えた事に戸惑って辺りを探していたのだが、ふと崖の下を見るとリンが居たので飛び降りたのだった。



「グルルルルルゥ!!!!」

「!!」

「!!!」

「グ、……グ、…………グルゥ」



フレイムドラゴンがこの場に現れるとパライズプラント達は危険を察知して、先程より大量の麻痺作用の花粉を辺りに撒き散らした。その量はフレイムドラゴンの巨体をも痺れさせる事が出来る量に達していて、咆哮を上げる為に空気と共にそれを吸ってしまったフレイムドラゴンは身体が痺れて動きが鈍くなってしまった。



「よ、よし!今だ!」

「お、おね、がい……、しま……、す、です」



同じ所に居たリンとエルムの二人はというと、エルムは更に身体の痺れが強くなってしまったのだが、リンは変わらず平気だった。フレイムドラゴンの動きが鈍くなった事を確認したリンは、今がチャンスとばかりにこの場から逃げ出した。



「グ、グルゥ……、……グ!!!」

「!!!」

「!!!」



逃げ出したリンを見たフレイムドラゴンは痺れてしまった自分の身体に活を入れて無理矢理動かそうとしたが、先程吸ってしまった麻痺作用の花粉があまりにも多くて動かなかった。


……だが、子供の仇を打とうとする母親の強い思いが、フレイムドラゴンの力を限界以上に引き出したのだった。



「グルゥアアア!!!ギャアアアア!!!」

「!!!」

「!!!」



フレイムドラゴンは力任せにその場で暴れ始めた。身体を動かして、脚を踏み鳴らして、尻尾を振り回した。その動きに巻き込まれてしまったらひとたまりもないだろう。


現にフレイムドラゴンの周りに居たパライズプラントは巻き込まれてた。群生していたパライズプラントはそれによって押し潰されたり、踏みつけられたりしてその命を散らしていった。……花が散る時は儚くて美しいと言う者がいると思うが、この場では美しさは微塵も無く、極めて残酷と表現するのが正しいと思われる。


更にフレイムドラゴンの巨体が動いたり、尻尾が振り回された事によって花粉の濃度が薄れ、フレイムドラゴンの痺れが徐々に身体から抜けていった。



「ギャアアアアアア!!!」



そして身体の痺れが動きに支障が無い事を確認すると、咆哮を上げてリンを再び追いかけ始めた。



============

書いていたら長くなってしまったので一旦ここで切ります。


23時までお待ちください。

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