秘めたる能力は未知数です。
今月は時間が取れましたので二回目の投稿をします。
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ディオネス魔法学院に在籍しているセレーネの入学してからの学院生活は、その全てを自分の思うがままに進めていたのだ。高度な魔法の才を持ちながらも軍の総司令官の娘の立場を利用し、軍を動かせる権限を行使する素振りをする事で、他の生徒はおろか教師でさえも自分の言いなりにさせていたのである。
セレーネは受講する授業や定期的に行われる実技や筆記の試験は自分だけ免除にし、成績は自分が常に一番にして、この学院でトップに君臨するように働きかけていた。また、軍を動かせる権限を恐れて自分に尻尾を振る生徒や教師は優遇して取り巻きにし、少しでも反抗的な態度をした生徒や教師は冷遇して圧力をかけて彼らを不満の捌け口として扱うなど、傍若無人な行動でこの学院を支配していたのだ。更に、軍の関係者に告げ口をしようならば今よりもっと圧力をかけると脅すなど、学院の外部に漏らさないようにも気を配っていたのである。
セレーネはつい最近になって『潤いの雫』が欲しくなり、他の生徒を使いに出して買って来させようとした。しかし結果は、バーサーカーコングの騒動によって、どの店も品切れの状態で誰も買えなかったのだ。セレーネは『潤いの雫』を買えなかった彼らに怒りをぶつけるが、本当に品切れなのかを自分の目で直接確認しようと何軒か店を回ったが結果は変わらなかった。そして、リンの店にも訪れた時に品切れの貼り紙を見た時に怒りが頂点に達し、大声で不満を口にしたのであった。
品切れで出せないリンにセレーネはいつもと同じように軍を動かせる権限を行使する素振りを見せたのだが、対応に当たった彼女は全く動じなかった。『潤いの雫』を用意出来なかったお詫びに希少種族のフェアリーであるエルムを渡せと言っても毅然とした態度で対応された後に出入り禁止を言い渡されたのだった。
自分の伝家の宝刀が通じない人物に会うというのはセレーネにとっては初めての経験だったが、彼女は決闘を加えた三つの選択肢をリンに与えた。セレーネはリンが決闘は選ばないだろうと思っていたが、まさかの決闘を選んだ事に驚愕したのだった。
魔法が一切使えないリンが決闘を受けるのならば、魔法学院の首席として完膚なきまでに打ちのめそうと準備をして迎え入れたセレーネだったが、彼女は文字通り出鼻を挫かれたのであった。
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決闘の舞台ではリンとセレーネが向かい合っている。そのセレーネは流れ出た鼻血を拭き取ると、杖をリンに向ける。
「……くっ、この魔法学院の首席である私の魔法を受けなさい!」
「オレに当てられるならな」
セレーネは魔法が使えないリンに遅れを取ったが、巻き返す為に詠唱を始める。
「喰らいなさい!《ファイアショット》!」
セレーネはリンに向けて火の弾丸状の魔法を放つ。『ファイアショット』は攻撃力が高い火の魔法であり、それがリンへ一直線に向かっていく。
「……」
そんなリンはというと、避けようとせずに槍の穂先を自分に迫ってくる魔法に向ける。
「そんな槍で私の魔法をどうするつもりですの!?どうせ何も出来ませんわ!」
セレーネはリンの行動を見て嘲笑う。魔法学院の首席である自分の魔法を槍一本でどうこう出来る訳がないと、そう考えていたのである。
……だが、
「……えっ?」
セレーネが放った《ファイアショット》はリンの槍の穂先に触れたその瞬間、霧散して消滅したので彼女は思わず間抜けな声が出てしまった。
「……魔法学院の首席の実力ってのは、この程度か?」
「くっ!《ウォーターショット》!《ウィンドショット》!」
リンに煽られたセレーネは水の弾丸状の魔法と風の弾丸状の魔法を連続して交互に放つ。セレーネは先程は何かの間違いで魔法が消えただけだと自分に言い聞かせて、リンを打ち負かそうと奮起する。
「ほっ!はっ!」
リンは槍を左右に振って薙ぎ払うように動かし、セレーネが放ってきた魔法を全て消滅させた。
「セレーネの魔法が消えた!?」
「な、何が起こってるんだ!?」
「あの人、魔法が使えなかったんじゃなかったの!?」
生徒達はセレーネの魔法をリンが消滅させたのが信じられない様子であり、戸惑いを隠せない。
「貴方、魔法は使えない筈では!?一体どうやって私の魔法を消しましたの!?」
「確かにオレは初歩の初歩の魔法であっても一切使えない。……お前の魔法を打ち消したのはこの槍の能力だ。最近になって分かったんだけど、オレがこれを使う事で様々な魔法を打ち消せるんだ」
リンは魔法が一切使えないのは周知の事実であり、それはセレーネも彼女から聞かされて知っている。魔法が使えないリンがセレーネの魔法を打ち消したのは、リンが使用している槍に秘められた能力であった。
それはセレーネがリンの店を訪れる数日前、知り合いの鍛冶屋に槍のメンテナンスを依頼し、それが終わって引き渡された際に聞かされたのが、先程の魔法を打ち消す能力である。高度の『鑑定眼』のスキルを用いて判明したこの能力には発動条件が存在し、それはリンが使用しないと発動しないのだ。魔法が一切使えないリンにとってそれは、様々な魔法への唯一の対抗手段となった。そして、今回の決闘を受ける決め手の一つがこの能力である。
「魔法を打ち消す武器だって!?」
「そんな物を何であいつが持ってんだよ!?」
「いや、聞かれても困るよ!?」
魔法学院の生徒達には動揺が広がっている。魔法を打ち消す能力を持つ武器というのは絶対数がとても少なく、持っているのは貴族などの一握りの限られた人達のみという認識がある為に、小さな雑貨屋の店長であるリンが持っているのが信じられないのだった。
「貴方がそのような物を持っていても宝の持ち腐れですわ!それを渡しなさい!」
「お断りだ。それと、さっきの能力はオレが使わないと発動しないんだよ」
セレーネはリンが持つ槍を寄こすように言うが、当然ながら断られる。セレーネが槍を使っても能力は発動しない。リンが使用してこそ能力は発動するのだ。
「そうですの、渡さないというのなら私が勝って渡してもらうしかありませんね。……貴方達、観客席に居る仲間を捕まえなさい!」
魔法を打ち消す能力を秘めた槍の所有者は魔法学院の首席である自分こそ相応しいと考えたセレーネは、観客席の生徒達にエルム達を捕まえるように命令する。人質を取ってリンに敗北を認めさせようという魂胆だ。
「よし、行くぞ!」
「あいつらを捕まえれば、セレーネから何か貰えるかもね」
大半の生徒はセレーネの命令を受けて行動に移す。その中には恩恵を受けれるのではないかという理由で動く生徒もいた。
「……貴方達は何をしていますの?軍を動かされたくなければ行動しなさい!」
「や、やるしかないのか……」
「ごめんなさい……、こうするしかないの」
躊躇していた生徒達はセレーネの脅しとも取れる言葉を聞いて、動かざるをえなかった。ここでセレーネに従わなければ軍を動かされて、自分の家族などに危害を加えられるからだ。
「……言ってた通りになったわね。リン、こっちは心配しないで!」
「作戦通りに俺達は動くだけだ」
「エルムちゃん、お願いね」
「分かりましたです。ヒータ、よろしくお願いしますです」
「ピィ!」
生徒達に囲まれて逃げ場が無くなったエルム達だったが、慌てている様子は見られなかった。ミシズとガロンドは立ち上がって身構え、エルムは魔法袋から木の棒を取り出し、それの中点を両手で握りながら上に掲げる。ヒータはそれのエルムの手の外側を足で掴むと、翼を羽ばたかせてと彼女と共に空へと飛び上がる。
「まずはこの二人を捕まえるぞ!」
「「「おぉっ!!」」」
生徒達はミシズとガロンドを先に捕まえ、続いてエルムとヒータを捕まえるようである。生徒達は二人に殺到するが、その相手が悪かった。
「うわあぁぁぁっ!?」
「「「うおぉっ!!?」」」
ガロンドは接近してきた一人の生徒を片手で掴むと持ち上げ、集団になっている生徒達の方へと投げ飛ばした。
「ねぇ、あの人ってオーガだよ!近づくと危ない!」
「そ、それならこっちだ!」
ガロンドの種族が力が強いオーガである事を気づいた一人の生徒が接近は危険だと周囲に知らせる。それならばと、見た目から強くなさそうなミシズに向かっていくが、そんなに甘くはなかった。
「……がっ!?」
ミシズを捕まえようと手を伸ばす生徒だったが、彼女に難なく避けられる。ミシズは間髪入れずにその生徒の首に手刀を当てて気絶させた。
「ガロンドに敵わないから私って、随分と舐めてくれるじゃないの。……悪いけど、新人冒険者よりも弱いのに私達を捕まえられると思わないで」
「そういう事だ。軽い怪我で済む程度に手加減はしておく」
「う、うるさいっ!馬鹿にするなっ!」
「魔法を使えば簡単に捕まえられるんだからねっ!」
「使っても当たらなければ意味が無いわよ」
ガロンドよりも弱いと思っていたミシズに呆気なくやられた生徒を見た他の生徒達は、躊躇いが生まれて動きが鈍る。普段から癖の強い冒険者達を相手にしている二人にとってディオネス魔法学院の生徒達は、新人冒険者よりも弱いと感じており、魔法を使われても捕まらない自信があった。大怪我を負わせないように手加減を加える事を忘れずにである。
「あ、貴方達は作戦を立てていなかった筈では!?何故あんな冷静に動けていますの!?」
「……その口振り、やっぱりオレ達に利用させた直行便に盗聴の類いの物を付けてたようだな。そうしてくるだろうと思ってたから、乗る前に作戦会議をしたんだよ」
リンはセレーネが自分に料金が高い直行便を彼女の負担で利用させるのは何か裏があると読んでいて、本格的な決闘の作戦会議をミシズとガロンドの二人が合流した日から直行便に乗る直前までの可能な時間で行っていたのだ。作戦会議は王都に向かう直行便の中で行えばと良いのではと思っていたエルム達だったが、リンはそこで行えば自分達の作戦がセレーネに盗聴される可能性が非常に高いという自分の予測を伝えたのだ。
その予測は見事的中し、セレーネは盗聴の為の魔道具を直行便に取り付けていて、リン達の会話を盗聴していた。しかし、作戦会議をする様子が伺えなかったので、セレーネはリンが何も作戦を立てずに決闘に挑むのだろうと思ってしまったのである。
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空へと飛び上がったエルムとヒータは地上の生徒達に狙われていた。
「もしかして、あの鳥って言葉を理解してるの?」
「あの様子だとその可能性が高いな」
「それはいいから攻撃してよ!」
エルムが持つ木の棒を足で掴んで飛んでいるヒータが言葉を理解しているのかと気になりながらも、セレーネの為に魔法で一人と一羽を攻撃していくが、それら全てが避けられている。
「ヒータ、少し下に降りてくださいです」
「ピィ!」
エルムは魔法で反撃する為に、ヒータに高度を下げるように言う。
「チャンスだ、《ファイアボール》!」
一人の生徒が高度を下げたエルム達に向けて、この好機を逃さないように《ファイアボール》を唱えて放つ。
「《ファイアボール》!」
「熱っ!?」
自分達に迫る《ファイアボール》に向けてエルムは右手を向けて同じ魔法を唱えるのだが、それは生徒の《ファイアボール》の倍の大きさだった。エルムの《ファイアボール》は生徒の《ファイアボール》を飲み込んで地面に着弾する。
「だったら、《ウォーターショット》!」
先程とは別の生徒が《ウォーターショット》を唱えて放つ。
「《ウォーターショット》!」
「冷たっ!?」
エルムは《ファイアボール》と同じように《ウォーターショット》を放つが、進む速さが生徒の《ウォーターショット》よりも速く、それを貫いて地面に着弾した。
「任せて、《ウィンドカッター》!」
また別の生徒が風の刃の魔法、《ウィンドカッター》をエルム達に向けて唱えて放つ。
「《ウィンドカッター》!」
「危なっ!?」
エルムはまた同様に《ウィンドカッター》を放ってぶつけるが、彼女が放った《ウィンドカッター》が生徒の《ウィンドカッター》を破壊して地面に着弾した。
「……これであのフェアリーが使える魔法の属性は、セレーネと同じ火と水と風の三つだね」
「それなら、その三つ以外の属性の魔法を使えば捕まえられるかも」
「任せてくれ、絶対に捕まえてやる」
魔法学院の生徒達はエルムが使える魔法の属性はセレーネと同じ三つだと思い、それ以外の属性の魔法が使える生徒達が彼女を捕まえようと行動に移す。
「《アースショット》!」
「《ライトアロー》!」
「《ダークボール》!」
三人の魔法学院の生徒は息を合わせて土の弾丸状の魔法、《アースショット》と光の矢の魔法、《ライトアロー》と闇の球体状の魔法、《ダークボール》をエルム達に向けて放つが、それらは全て避けられる。
「ピィ」
「ヒータ、ありがとうございますです」
ヒータはエルムに魔法が当たらないように移動しながらも、彼女に負担が掛からないように注意を払っている。
「……よし、今度は私の番です」
エルムは生徒達に向けて魔法を放つ準備をする。生徒達はエルムが先程使っていた三つの属性の魔法のどれかを使用すると、この時までは思っていた。
「《アースショット》!《ライトアロー》!《ダークボール》!」
「「「うわあぁぁっ!!?」」」
エルムはお返しとばかりに先程自分に向けて放たれた魔法を、大きさや速さなどを強化した状態で生徒達に向けて矢継ぎ早に放つ。
「……え?ちょっと待って、……な、何で土も光も闇も使えるの!?使える魔法の属性って、多くても三つだよね!?」
「そうだよ!でも、六つも使える奴なんて初めて見たぞ!?」
「ゆ、夢とか幻とかじゃないよね!?」
使用可能な魔法の属性というのは多くても三つというのが、この世界での常識である。その数が多いほど魔法の才が高いと言われており、三つの属性を使えるセレーネは高いと言える。魔法学院の生徒達はセレーネよりも魔法の才が高い者は誰も居ないと思っていたが、それを超える六つの属性の魔法を実際に使用したエルムに驚きを隠せない。
「わ、私よりも使える魔法の属性の数が多いですって?……そ、そんなのあり得ませんわ」
「あり得ないって、実際に見ただろ?これが現実だ」
「……ふふっ、益々私の物になるのが相応しいですわ」
「……おい、エルムを物扱いするんじゃねぇよ。もう一発ぶん殴ってやろうか?」
セレーネは自分よりも魔法の才を持つエルムは自分こそ所有者に相応しいと告げるが、彼女を物として扱った事によって、リンの怒りを買った。
「貴方達、一斉に掛かりなさいっ!個々ではなくて数で圧倒し「お前は黙ってろっ!」ぐぶっ!!?」
今まで個々で向かっていたのでエルム達を捕まえられなかったと考えたセレーネは、一斉に向かうように観客席の生徒達に伝えるが、その途中でリンに顔を再び殴られた。
「ヒータ、ミシズさん達の所に行ってくださいです!」
「ピィ!」
エルムはミシズ達に加勢に向かうと決めたようで、ヒータにそこまで移動してもらうように伝える。
「よし、一斉に行くぞっ!」
「「「「おぉっ!」」」」
「ちょっと、この数は……」
生徒達は個々ではなく数に物を言わせて集団となり、同時にミシズとガロンドに向かっていく。それまで余裕だった二人だったが、この数は難しいようだ。
「私に任せてくださいです!」
「エルムちゃん!?危ないから戻って!」
「何をする気だ?」
二人の元にエルムとヒータが加勢しに現れたが、ミシズは上に戻るように促す。しかしエルムは、それを聞かずにこの場を切り抜ける魔法を行使する。
「この魔法なら、…《リフレクション》!」
「「……えっ!?」」
エルムは物理攻撃を反射する魔法、《リフレクション》を発動させ、自分を中心にミシズとガロンドを覆うように半球状の魔法の障壁を作り出した。その魔法を見た二人は驚くが、エルムが魔法を発動した事ではなく、彼女が発動した魔法に驚いたのだ。
「「「「うわあぁぁぁっ!!?」」」」
ミシズ達に向かっていた生徒達はその勢いのまま魔法の障壁にぶつかると、効力によって跳ね返されて後ろに吹き飛んだ。
「ガロンド、……《リフレクション》って、間違ってなければ無属性の魔法よね?」
「そうだ。……エルム、まさかお前は全ての属性の魔法が使えるのか?」
「はい、そうですよ!」
「「……」」
エルムが全ての属性の魔法を使用可能という驚愕の事実に、ミシズとガロンドは顔を見合わせて言葉を失う。リンの槍の能力は聞かされていたが、これは全くの初耳だったのだ。
「……う、嘘でしょ?全部って……」
「魔法を打ち消す武器を持ってるわ、全部の属性の魔法が使えるわ、この人達って一体何者なんだよっ!?」
「何がなんだか……」
「あれ?皆で夢でも見てるのかな?はははっ……」
二人とは反対に魔法学院の生徒達の反応は十人十色であった。決闘の舞台に居るセレーネはというと、また別の反応をしていた。
「ま、……また私の顔を殴りましたね!」
「エルムを物扱いしたからだ」
「……もう謝っても許しませんわ!《トルネード》!」
「無駄だよ」
セレーネは竜巻を発生させる風の魔法の《トルネード》を発動してリンに向かわせるが、それは彼女の槍によって打ち消された。
「《プロミネンス》!《スプラッシュ》!」
「どんな魔法でやっても同じだ」
セレーネは続けて紅炎を発生させる火の魔法、《プロミネンス》と激流を発生させる水の魔法、《スプラッシュ》を連続で発動させてリンに向かわせるが、同様に打ち消された。
「……ま、魔法を打ち消す武器を使うなんて私は聞いてないですわよ!?」
「あぁ、オレは言ってないからな。決闘の相手に自分の手の内を晒すなんて事したら意味が無いだろ?……でもお前は、オレに三つの属性の魔法が使えるって余裕かまして言ってたから、対策は凄く立てやすかった」
リンはセレーネと決闘を受ける際に、自分は魔法が使えないという情報だけを彼女に伝えたが、それ以外の情報は一切伝えなかった。それを聞いたセレーネは自分の勝利は何があっても揺るがないと確信した為に、三つの属性の魔法が使えると余裕綽々と伝えてしまったのである。
「三つの属性の魔法を中心にどのくらいの魔法が打ち消せるか、っていう特訓とかも出来たしな。その時に魔法を使ってくれたのは他でもない、全ての属性の魔法が使えるエルムだ」
リンの特訓の相手にエルムが適任だったのは、全ての属性の魔法が使用可能だからである。三つの属性の魔法を打ち消す検証を起点に、様々な検証を時間の許す限り続けた結果、リンの槍は彼女が使用する事を条件に、あらゆる魔法を打ち消せる武器であると判明したのだった。
「エルムちゃん、全部の属性の魔法が使えるって凄いじゃないの」
「これは心強い」
「私も守られてばかりじゃないです」
全ての属性の魔法が使えるエルムを頼もしく思うミシズとガロンド。二人より身体が小さいエルムが、心強い味方という安心感を与える大きな存在となっていた。
「《リフレクション》を使うなんて卑怯だぞ!」
「そうだそうだ!早く解除しろ!」
「絶対に嫌です!」
生徒達はエルムに《リフレクション》を解除するように言うが、そうすれば自分達に一斉に向かって来るのが分かっていたので、彼女は絶対にしないと言い返した。
「卑怯って、誰が言ってるのよ?」
「うるせぇババア!お前には言ってないんだよ!」
「「……あっ」」
「……ピィ」
ミシズが大人数で自分達を囲む生徒達の方が卑怯ではないのかと呟くが、それを聞いた一人の生徒が彼女の逆鱗に触れてしまったのである。エルムとガロンドとヒータはミシズの変化に気づいたが、生徒達は気づかなかった。
「……エルムちゃん、《リフレクション》を解除して?」
「え、……あ、あの……」
「……いいから早く解除して?」
「は、はいですっ!?」
ミシズが放つ凄まじい威圧を受けて、エルムは《リフレクション》を解除した。
「今だっ!」
「「「「おぉっ!」」」」
エルムが《リフレクション》を解除したのを切っ掛けに、彼女達の周囲に居た生徒達が今度こそ捕まえようと殺到する。
「……誰がババアですって?」
「「「「ひぃっ!?」」」」
しかし、ミシズの唸るような声が響くと生徒達全員の足が止まる。
「ガキ共が、あんた達のその性根、……叩き直してくれるわーーっ!!!」
「「「「ぎゃあぁぁぁっ!!?!?」」」」
ババアと言われて怒りが振り切れたミシズは修羅と化して生徒達へと向かっていき、彼らを次々と掴んでは投げ飛ばしていく。
「ガロンドさん、私達は上に戻ってるです」
「ピィ」
エルムとヒータは捕まらないように再び空へと飛び上がった。
「ミシズ、少しは手加減を「あぁん!?」…いや、何でもない」
ガロンドは怒りで暴走しているミシズに手加減を加えるのを忘れないように伝えようとしたが、その途中で彼女に睨まれたので早々に切り上げた。それ以上続けた場合、自分は今も吹き飛ばされている生徒達と同じ末路を辿ると既に分かっていたからだ。
「あ、貴方はあれも作戦の内に入れていましたの?」
セレーネは観客席で生徒相手に無双するミシズを見て、この状況さえも作戦に入れていたのかとリンに尋ねる。
「……いや、あれは全くの想定外だよ。でも、あれだけ暴れてくれてるから結果オーライだ。それは置いといて、決闘を続けようぜ」
様々な作戦を立てていたリンであったが、ミシズが怒り狂うとは想定していなかった。しかし、結果として強大な戦力に変化したミシズを見て、あのまま続けてもらえば心配はないだろうと判断したのである。そして二人は、場外が騒がしい中で自分達の決闘を継続したのだった。
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ありきたりかもしれませんが、リンの槍の新たな能力は魔法を打ち消す能力です。
決闘の話はまだ少し続きます。




