勇者の敗北
勇者の話で、今回は初めての割り込み投稿です。
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アグリカ国から帰還した帝国軍は次の進軍の為の準備に取り掛かっていた。アグリカ国から持ち帰った作物は既に無いが、他にも不足している物は帝国には多々あり、その中でも早急に対策が必要なのが武器などを作る為の金属といった素材である。最初の進軍で勇者達が使用した武具を作成する為に少ない素材を掻き集めた結果、今の帝国では深刻な素材不足に陥り、金属を始めとした素材の値段が高騰しているのだ。
また、勇者達の武具を修理するのも一苦労であった。勇者達の力は帝国の予想を上回る物だったので、彼らが使用した武具はかなり消耗していたのだ。その為に多くの素材が必要になり、国民から素材を徴収しなければならず、それに対する国民の不満も高まってしまった。
ナイメア帝国の次の進軍は必然的に資源が豊富にある国を目標に定められた。その国の名はテリマ公国であり、先日攻め入ったアグリカ国と同じようにナイメア帝国と陸続きである。金属などの豊富な資源を保有し、それを製錬する技術が世界一とまで言われている国である。
ナイメア帝国はテリマ公国に対し、資源を無償で永久的に帝国に供給するように通達を送り、それが受け入れられないのならば、帝国に宣戦布告したとみなすという、いつも通りの事をしていた。そして、当然の如く拒否されたので、ナイメア帝国は宣戦布告されたという名目で進軍に向けての準備を開始した。
そのテリマ公国では、アグリカ国を侵攻したナイメア帝国の次の目標は自分達だと分かっていた。侵攻によって武具を消耗し、補給の為に自分達が保有する資源や製錬技術を狙ってくるだろうと。彼らを迎え撃つ準備を滞りなく進めていたのである。
……そして、テリマ公国を始めとした数多の国がナイメア帝国に悟られないように水面下で動き、ある物を完成させていたのだ。勇者達を止める為の抑止力、まさに切り札となるべき物を総力を結集して完成させ、それを今回の帝国の侵攻に対して導入したのである。
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ナイメア帝国はなんとか武具を整え、勇者を引き連れてテリマ公国へと進軍を開始した。
勇者達にはテリマ公国はアグリカ国と同じように魔国の属国になったと伝えられているが、そんな事実は一切無い。帝国が勇者達を動かす為に作った嘘である。しかし彼らは、何の疑いも無く信じてしまったのであった。
帝国軍がナイメア帝国とテリマ公国との国境を越え、小一時間進むと彼らの前に一人の人物が現れた。
「…ナイメア帝国の勇者達とお見受けする!」
その人物とは一人の金髪碧眼の整った顔立ちの女性であり、鎧を身に纏い、腰には一本の剣を帯刀している。彼女の周囲には他に誰もおらず、一人で勇者達の行く道を塞ぐように立っている。
「誰だあの人?」
「すごく綺麗だ…」
勇者達は自分達の前に立ち塞がった女性の美しさに見とれていたが、勇者達以外の帝国軍は慌ただしくなっていた。
「…あ、あいつは!?」
「あれは、戦乙女のアイラだっ!」
「何故テリマ公国に彼女が居るんだっ!?」
その女性の名前はアイラ。戦乙女という異名を持つ彼女が自分達の目の前に現れた事に勇者達以外の帝国軍は驚いていたのである。アイラはテリマ公国の兵でも無く、その国民でも無いからだ。
「簡単な事だ。我がルサレナ王国とテリマ公国は同盟を結んでいる。同盟国の要請を受けて私は参上した次第。テリマ公国に攻め入る事はルサレナ王国に攻め入るのと同様の事だ」
アイラはルサレナ王国という名の国の軍に所属している。彼女が述べた通り、ルサレナ王国とテリマ公国は同盟を締結しており、一方が攻め入られた時にはもう一方が救援に駆け付ける条約を結んでいるため、彼女はそれに基づいてこの場に居るのだ。
「勇者達には恨みは無いが、これ以上の侵攻は断じて許さん。…いざ、尋常に勝負!」
アイラは鞘から剣を抜き、その切っ先を勇者達に向ける。彼女は果敢にも勇者達にたった一人で戦いを挑むようだ。
「…みんな!私達なら勝てる!」
「行くよっ!魔王を倒す為には、こんな所で負ける訳にはいかないんだっ!」
「「「おおぉぉぉぉっ!!!」」」
和美と佑樹が仲間の勇者達を鼓舞し、彼らもそれに答えるように大声を上げる。勇者達と戦乙女の戦いが、まさに始まろうとしていた。
いくら戦乙女と諸国に恐れられているアイラでも、勇者達には手も足も出ず、あっという間に倒されるだろう。帝国軍はそう思っていた。
勇者達も同様に簡単に倒せると考えていた。戦乙女という異名を持つ彼女であれど、勇者である自分達の敵ではないと。自分達は魔王を倒す為に召喚された勇者なのだから。
……しかし、それらは全て覆される事となった。
「な、なんで魔法が消され…」
「はあぁぁっ!!!」
「がっ!?」
アイラの剣の一振りが男子の勇者の魔法を打ち消すと、彼女はその勢いで彼を切りつけた。男子の勇者は地面にうつ伏せで倒れて動かなくなる。
「……」
「ちょ、ちょっとどうしたの?」
「何で起きな……、ひっ!?」
「ち、ちち、血が出てっ!?」
地面に倒れた男子の勇者が動かない事に異変を感じた勇者達は近づくが、血が地面に広がっている事に気づくと彼らは一斉に浮き足立つ。
「う、うわあぁぁっ!!?」
「いやぁぁぁっ!!?」
「み、みんな待ってっ!落ち着いてっ!?」
「ゆ、勇者様!?お待ち下さいっ!?」
死亡した男子の勇者を見て、勇者達は一斉にこの場から逃げ出した。佑樹や帝国軍の兵士達が呼び止めて落ち着かせようとしたが意味を成さず、この場に留まる者は居なかった。
「麻衣!魔法で生き返らせるんだ!」
「……拓也、私は怪我や病気を治す魔法は使えるけど生き返らせる魔法は使えないし、そもそもそんな魔法なんて無い」
拓也は麻衣に死亡した男子の勇者を魔法で生き返らせるように頼むが、彼女が使える魔法は怪我や病気を治す物であり、人を生き返らせる高度の魔法は使えず、それはこの世界には存在しないのだ。
「……そうか、彼らは戦とは無縁の世界か、もしくは縁遠い世界から来たのか」
アイラは多くの勇者達が怯えて逃げ出しているのを見て、彼らが戦争が無い世界か、あっても縁遠い世界の住人であると推測する。
「ゆ、勇者がやられたっ!?」
「いくら戦乙女と呼ばれるアイラでも、勇者達を倒すのは無理な筈だ!?」
帝国軍も動揺を隠せないようだ。異名があって恐れられているアイラでも、勇者達を倒すのは不可能だと思っていたからだ。
「アイラが持っている剣は……まさか、ブレイブキラーではないのか?」
「ぶ、ブレイブキラーだとっ!?」
アイラが持つ剣を見て、帝国軍の一人の兵士が『ブレイブキラー』ではと推測して口に出すと、帝国軍は一斉に慌ただしくなった。勇者召喚の儀が世界最大の禁術として伝えられているが、それと同様に伝えられているのがブレイブキラーだ。
ブレイブキラーはその名の通り勇者を倒す為の武器である。それがこの世界に存在している理由とは、勇者召喚の儀が世界最大の禁術として伝えられている出来事が起因していたのだ。
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その出来事というのは、召喚された勇者によって世界が滅亡寸前まで追いやられたのだ。
今から遥か昔、ラゼンダ王国やナイメア帝国などとは異なる国々が存在していた時代。ある一つの国がその時代の魔王の力を恐れ、女神に魔王を打ち倒せる者を呼び寄せる召喚の儀を授けるように願い、それに応えた女神は勇者召喚の儀を授けたのだ。
その国は授かった勇者召喚の儀を使い、魔王を倒せる勇者を異世界から呼び寄せると、勇者を祭り上げて魔王討伐に向かわせた。その勇者は見事魔王を打ち倒したのだが、彼らには一つの誤算があった。
……召喚した勇者は、この世界の人とは比べものにならない程に誰よりも強欲であったのだ。
勇者は魔王討伐後に自分を召喚した国に帰還すると褒美を要求したのだが、祭り上げられた彼は欲望の箍が外れており、贅の限りを尽くした料理を毎日用意させる、世界で二つとない大豪邸を建設させるなど多々に渡り、それらの規模は日に日に増していった。
自分の要求に国が応えられないと勇者は不機嫌になり、手当たり次第に破壊行為をしていった。また、褒美の内容が気に入らないとそれを運んできた者を殺害するなど、彼は強大な勇者の力を世界の平和の為ではなく、自らの欲求を満たす為だけに振るうようになっていったのだ。
国は最初の方は何とか勇者の要求に応えようとしていたが、度が過ぎる要求に対して限界を超え、勇者を倒す為に軍を編成して向かわせた。強大な力を持つ勇者といえど数に物を言わせれば勝てると見込んでいたが、勇者の力はそれを上回っていて軍はあっという間に壊滅したのだった。
勇者は自分に軍を向けた国の王の元に向かうと、世界の救世主である自分に歯向かった罰として彼を殺害し、勇者はその国の王として君臨した。自分に逆らう者は種族や老若男女問わず殺し、国を力で支配していった。
勇者はそれだけでは飽き足らず、他の国を次々と攻めていった。敵として立ちはだかる者は殺し、怯えて逃げ出す者は追いかけて殺し、死にたくなくて命乞いする者は容赦なく殺すなど、勇者は数多の人や国を滅ぼしていった。勇者の力は強大で誰にも止められない。このまま世界が滅んでいくのを受け入れるしかないと誰もが思っていた。
……しかし、そんな絶望的な状況でも諦めていない者も居た。彼らは女神に勇者を打ち倒せる力、もしくはそれと同等の武器を自分達に授けるように願い、女神は自分が人々に与えた召喚の儀が起因して世界が滅びかけるとは思ってもいなかったが、世界に直接干渉するのは不可能なので、彼らに数種類の武器を授けたのだった。
その時に授けられた武器というのがブレイブキラーである。彼らはそれを用いて勇者の力を封じながら戦った。数日に渡る激闘の末、遂に勇者を打ち倒したのだが、その時の世界の総人口は死人よりも生き残った者を数えた方が早く済んでしまう程の数になるまで減少してしまったのだ。
勇者との戦いの後に残った者達はこの惨劇を決して忘れないようにと記録を残した。また、過ちを繰り返さないようにと勇者召喚の儀を世界最大の禁術として定め、惨劇と同様に後世に伝え続ける事にしたのだった。
勇者を倒すという役目を終えたブレイブキラーは女神の元へと返っていった。ブレイブキラーは人々には強すぎる力であるが、もしも再び召喚された勇者が暴走してしまった場合に勇者を止められるようにと、女神はこの世界の技術で作成可能なブレイブキラーの製法を授けたのだった。
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時は戻って現在、ブレイブキラーの存在は勇者以外の帝国軍は知っていたが、この戦いで導入されるとは思ってもいなかった。
「し、死にたくないっ!嫌だぁっ!!」
「うわあぁぁぁっ!?」
「勇者様!?お戻り下さいっ!」
帝国軍の兵士は戦線から逃げ出す勇者達を呼び止めるが、それに耳を傾ける者はほとんどいなかった。
「てめぇ!何で殺したっ!?殺す必要はないだろうがっ!!」
「……愚問だな。ここは戦場だ。この場に居るという事は殺される覚悟があるという事だろう?それが無いのならば、お前達が戦場に立つ資格は無い」
拓也はアイラに自分の仲間を殺された事に激昂し、何故こんな事をしたのかと問い詰めるが、彼女は戦場では殺される覚悟を常に持ち、それを持たないのならば戦場に立つ資格は無いと、当たり前の事を言われるように返される。
「うわあぁぁっ!」
「な、何だっ!?」
「そ、空に何か居るよっ!?」
帝国軍の後方から悲鳴が上がり、逃げ出していない勇者達は振り返って空を見上げる。そこには、ドラゴンなどの翼がある生物に乗っている人達が、魔法を放って帝国軍に攻撃している光景があった。
「い、いつの間にっ!?」
「あれは、ルサレナ王国の空襲部隊だっ!」
帝国軍に空から魔法で攻撃しているのは、ルサレナ王国の空襲部隊と呼ばれる集団だ。翼を持つ魔物に乗って上空から魔法で攻撃する部隊であり、ルサレナ王国の主力部隊の一つである。
「ちょっと待って!あそこに居るのって!?」
「な、何で同じ人が!?」
和美が空襲部隊の先頭に居る人物を見て驚く。そこには、自分達と対峙しているアイラと同じ顔の女性が居たからだ。
「総員!波状攻撃を続行し、帝国軍を追い払えっ!」
「「「了解っ!」」」
アイラと同じ顔の女性は空襲部隊に指示を出し、部隊は波状攻撃を続けていく。
「あ、あれは……、ヴァルツだ!」
「上空には魔の戦乙女が、地上には武の戦乙女が居る。……という事は、知の戦乙女が総指揮を取っているのか!?」
「あの三人の連携は強固だ。そこにブレイブキラーが加わったとなれば……」
ルサレナ王国の戦乙女は一人でなく三人であった。空襲部隊を率いているのはヴァルツという名の女性である。彼女の顔がアイラと同じ顔をしている理由には訳があった。
「な、何で二人は同じ顔をしているんですか?」
「戦乙女の異名を持つ彼女達は三つ子なのです。同じ顔をしているのはその為です」
「三つ子!?でも、もう一人はどこに?」
「知の戦乙女のドーチェは後方から指揮していると思われます」
帝国軍の目の前に居るアイラ、上空の空襲部隊を率いているヴァルツ、そして彼らの前に姿が無いがルサレナ王国軍の指揮を取っているドーチェ。彼女達三人はそれぞれ武の戦乙女、魔の戦乙女、知の戦乙女という異名があり、周辺諸国から恐れられている。
アイラ、ヴァルツ、ドーチェの三人は帝国軍の兵士が述べた通り三つ子である。ルサレナ王国の現国王の娘である彼女達は強い絆で結ばれている。三人は互いに足りない所を補うように助け合いなさいと幼い頃から教えられて来た。剣の技などの武術に長けたアイラ、魔物の操縦などの魔術が得意なヴァルツ、二人のように武術や魔術は全く無いものの先見性や瞬時の状況判断能力などの突出した知術を持つドーチェ。一人では到底不可能な事も互いに手を取り合えば乗り越えられるという思いがあり、それがルサレナ王国の軍にもあるのだ。
そしてそれは他の国の関係にも表れており、豊富な資源と高い製錬技術はあるが軍事力が低いテリマ公国と、軍事力は高いが資源が少なく製錬技術が乏しいルサレナ王国は協議を重ね、同盟を締結したのである。
「ぎゃあ!!」
「こ、今度は何がっ!?」
「い、石っ!?」
空からは魔法だけでなく人の握り拳と同じ大きさの石が帝国軍に降ってきたのである。それも一個ではなく数多の石が途切れる事なく帝国軍に降り続けている。
「ルサレナ王国の投石部隊だ!」
「空襲部隊と投石部隊、奴らの部隊が二つも!」
「他にも来るぞっ!」
上空からはルサレナ王国の空襲部隊が魔法で遠距離から帝国軍を攻撃し、地上からは投石部隊が装置を用いて遠距離から帝国軍を攻撃している。他にも複数の部隊が存在しており、攻撃の機会を伺っているのだ。
今回の戦争においてルサレナ王国は、帝国軍をテリマ公国の領地に引き入れ、ブレイブキラーを持ったアイラが帝国軍の注意を引きつけている間に空襲部隊と投石部隊が悟られないように接近し、帝国軍が体勢を崩した所で一斉に攻撃する作戦を知の戦乙女であるドーチェが立てていて、その作戦が見事にはまったのだ。
ドーチェはナイメア帝国が召喚した勇者は確かに強力だが、裏を返せばナイメア帝国は勇者に頼り切っているのではと仮説を立て、帝国の様々な状況を精査して、勇者さえ抑えればこちらに勝機があるとの結論を出して、今回の作戦を立案したのだ。
反対にナイメア帝国は、当初は優勢かと思われていた戦況は侵攻の要である勇者が殺され、生き残っている勇者もその殆どが逃げ出し、勇者以外の帝国軍もルサレナ王国の攻撃を受けて劣勢に立たされていた。
「……っ!撤退!全軍撤退だっ!」
帝国軍の指令部はこれ以上の進軍は不可能であり、撤退しなければ損害が大きくなると判断し、全軍に撤退の指示を出す。
「て、撤退って!?何で!?」
「勇者様、ここは一旦退きましょう。このままでは全滅してしまいます!」
「でも、ここで退いたら魔王なんか倒せない!」
「お気持ちはお察しします。……ですが、ここは耐えて下さい!」
佑樹は勇者である自分達が今逃げては魔王など倒す事は不可能だと言うが、近くの兵士に手を引かれて戦線を離れていく。残っていた和美、拓也、麻衣の三人も同様に戦線を離れていく。
こうして帝国軍は何の戦利品も得られぬまま、勇者の死亡などの大きな損害を受けて敗走したのである。
「……我々の、勝利だっ!!」
「「「「「うおぉぉぉーーーーっ!!!」」」」」
テリマ公国とルサレナ王国は切り札のブレイブキラーを戦線に投入し、見事に勇者を退けたのだ。アイラがブレイブキラーを空に掲げると、それを見て勝利の実感が湧いたルサレナ王国の兵士達は揃って勝利の雄叫びを上げたのだった。
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勇者が敗北した。その話題はたちまち世界に広まったが、その中でも一番衝撃を受けたのは、言わずもがなナイメア帝国であった。
勇者を信じていた国民は、彼らに裏切られたという気持ちを抱いた者が多数を占めていた。自分達が我慢をしているのに、それを無駄にするのはどういう事だ!などと帝国の役人に抗議をする国民が多かった。
また、テリマ公国に勝利した戦利品である資源を当てにして商売を考えたりしていた者もおり、それが入ってこないと分かると周囲に当たり散らしていた。多くの借金をしていたので、返済の当てが無くなったからである。他にも様々な問題が噴出しており、国民の不満も限界寸前で、いつ大きな暴動が起こってもおかしくない状況に帝国は頭を悩ませる事になった。
ナイメア帝国の王はテリマ公国とルサレナ王国との会談に通信を入れて文字通り乱入したのである。両国は当初、会談が終了してから話しを聞くと拒否したが、ナイメア帝国は何度もしつこく通信を入れてきたので、言い負かせる為に通信を繋ぐのを了承した。
ナイメア帝国は通信が繋がるとテリマ公国に狙いを定めた。ブレイブキラーは他国との戦争では使用してはならない国際条約があるので、それに違反しているテリマ公国に揺さぶりを掛けようとしたのだが、
「確かにブレイブキラーは他国との戦争に使用してはならないという国際条約がある。……しかし、勇者召喚の儀で召喚した勇者を戦争に導入した国との戦争での使用は、制限付きで認められているのはご存知の筈では?」
と、ブレイブキラーの使用に関する国際条約のたった一つの例外が今回は適用される事を指摘されて返答が出来なくなった。
また、ナイメア帝国はテリマ公国との戦争にルサレナ王国が介入した件について、ルサレナ王国に矛先を向けた。第三国の無関係な国が何故戦争に参加したのだと揺さぶりを掛けようとしたのだが、
「ルサレナ王国はテリマ公国と同盟を締結している。その時に定めた同盟条約に基づいて今回の戦争に参加したのだ。この条約は永世中立国のシーバス国の立ち会いの元に締結されたので、とやかく言われる筋合いは無い」
と、ルサレナ王国はテリマ公国との正当な同盟条約に基づいて戦争に介入したと答えが返ってきたのだ。永世中立国が立ち会って結ばれた正当な条約にナイメア帝国が文句をつける資格はないのだ。しかし、ナイメア帝国はそれでも引き下がらず、今回の戦争で帝国が受けた被害に対して賠償を請求すると宣言したが、テリマ公国とルサレナ王国はそれを一蹴して通信を強制的に遮断したのだった。
ナイメア帝国は得られる筈だった資源が全く手に入らず、侵攻の切り札である勇者もブレイブキラーによって倒されてしまい、残った勇者達は仲間が殺された事によって戦意を大きく失ってしまったのである。
ただでさえ何もかも綱渡りの状況のナイメア帝国は、先日の戦争に掛かる物資などを捻出した為に、いつ財政が崩壊してもおかしくない状態になってしまった。それを打開しようにも良案は無い。
本来、戦争というのは一回行うだけでも莫大な費用が掛かるのだ。それを短期間に二回も行ったナイメア帝国は早々に息切れし、自分で自分の首を絞める結果となった。戦争によって得られる物があったのならば少しは良くなると思うのだが、知っての通りに先日の戦争でナイメア帝国は何も得られなかった。
ナイメア帝国は少し前から崩壊の坂道を転がり落ちているが、その速さは今回の戦争で更に速くなった。それはもう誰にも止められない。ナイメア帝国の崩壊の未来は、遠くない日に訪れるだろう。
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ブレイブキラーなどの名前は安直過ぎるかと思いますが、ネーミングセンスに自信は無いのでご了承ください。




