初仕事は不安だらけです。
書いていたら長くなったので、二つに分けました。
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リンが店長として営んでいる雑貨屋の【ウィンスト】は、彼女の口が悪い事を差し引いても商売の腕と人柄の良さがある。取り扱われている商品の値段は、店の利益を確実に出しつつも客が買いやすいように抑えられており、彼女の店を利用する者は多い。
また、自分では解決出来ない悩みの相談の為だけに店を訪れる者も多く、彼女はその都度それに対応している。ただ、最近では相談の数が多いので、リンは毎度毎度、
「……オレの店は雑貨屋であって、便利屋じゃないんだけどな」
と、悩みの相談が来る度に愚痴を漏らしている。リンは口が悪いのだが根は優しいので、悩みの相談に来られると大抵は放って置けないので乗っているのだが、店の業務に支障が出る程に来られても困るのは、他ならぬリンだからだ。
……しかし、街の住人の様々な悩みを解決してきたリンであっても、答えに詰まる時はある。さすがに自分が導き出した答えが全て正しいとは限らない事は、リンも承知の事実だ。
そして今、彼女は苦渋の決断というべき選択を迫られていた。
「……リンさん、どうしてですか?」
「そ、それはだな……」
エルムは澄んだ瞳で何かを訴えかけている。対して、それを見せられたリンは今までの経験から得た知識を総動員しても、解決する見込みが少しも立たないと感じ始めていた。既に死んでいるので血も汗も涙も出ないリンであるが、その彼女の額には脂汗が出ているような気もしている。
「どうして、私だけで行かせてくれないんですか?」
リンが出さなければならない苦渋の決断というのは、最近は二人で行っていた商品の配達を、エルム一人だけで行かせるかどうかという物だ。リンは一人で行かせたい気持ちがありつつも、ある理由があって一人で行かせたくない気持ちもあって、その二つの間でリンは葛藤していたのだ。
事の始まりは、二人がいつも通りに雑貨屋の業務をしていた時であった。
「エルム、そろそろ配達行くから準備してくれ」
「分かりましたです!」
雑貨屋に訪れる客が一人も居なくなったのを見たリンは、配達に行こうとエルムに呼び掛け、エルムは元気に返事をする。二人は協力して配達する商品を袋に詰めていく。
「今日も沢山ありますね」
「それだけ店を利用してくれてる人がいるって事なんだよ。待たせるのも悪いから、さっさと───」
行こうと言いかけた時に、店の扉が開かれて数人の客が入って来た。
「すいません。欲しい物があるんですけど……」
「私も!」
「俺もだ!」
年齢も種族もそれぞれ異なる数人の客が、一気に店の中に入って来たのだ。
「あ~、申し訳ないんだけど、オレ達これから配達に行かないといけないから少しだけ待ってくれますか?」
「あの!私急いでいるんで今すぐに欲しいんです!」
「頼む!」
「そう言われてもな……」
客が急いでいるので今すぐにと言われても、これから配達を待っている客が何人もいるので、リンがどうすれば良いか悩んでいると、エルムが彼女の顔を覗き込んできた。
「あの……リンさん、私だけで配達に行って来ても良いですか?その間にリンさんはお店にいれば、お客さんの対応も出来て配達も終わるです」
エルムがリンに言ったのは、業務の分担であった。彼女の言う通りであって、どちらかが店に残って今来店した客の対応をしている間に、もう片方が配達を行えば両方の業務が終わるのだ。
「仕事を分担するって事か?ん~…………」
業務を二人で分担して行うという事は、今まで一人でそれを行っていたリンには全く思いつかなかった事であるが、エルムの提案に彼女は難色を示していた。
ここで思い出して欲しい。一人で配達に行きたいと言って来たのはエルムであるが、そんな彼女は最近まで本当に存在するかどうかも分からないとまで言われていた、超が付く稀少な種族であるフェアリーだという事を。
目撃情報が皆無に等しい程に極端に少ないフェアリーは、側に置いておくだけで幸運が自分の下に舞い込んで来るとまで言われている。人身売買は王国の法律で厳しく禁じられているのだが、ひとたび闇商売で出回れば一生遊んで暮らせる程の値が付いて取引されている。
フェアリーであるエルムを狙っている者がいるのはリンも知っているので、自分を慕ってくれている彼女を守る為に常に側に居るのを心掛けている。……だが、いくら自分が住んでいて知り合いが多い街であっても、その少しの油断を狙ってエルムを連れ去ろうとする輩が現れるのではないかと、彼女は考えていた。
もしも、エルムを一人で行動させた時に彼女を狙う者が現れた場合には、リンは助けられない。捕まったりでもしたらエルムはそのまま連れ去られてしまうだろう。取り返しのつかない事になってしまってからては遅いのだが、自分の店の業務も行わなければ信用に関わる。そのジレンマを抱えたリンは答えを出せずにいるのであった。
「あの、……私じゃ駄目なんですか?」
「いや、そういう事じゃなくて……」
時間を今に戻して、エルムは先程から変わらずに澄んだ瞳でリンに訴えかけている。
エルムに様々な事を経験させてみたいと思いながらも、危険な目には遭わせたくないと思っているリンは悩み続けていて、ただただ時間だけが過ぎていく。
「あの、大丈夫ですか?」
「早く決めてくれよ、こっちは急いでいるんだって言っただろ?」
「そう言うなよ。もう少し待とうぜ」
配達に行かせるか否かの簡単なようで難しい決断を悩んでいるリンを見て、その様子を心配して声を掛ける客がいれば、急を要するのに不満を漏らす客もいて、それを宥める客も現れ始めた。
「……仕方無いな、今回はエルム一人で配達に行ってくれ」
「ほ、本当ですか?」
答えが出せずに悩んでいたリンだったが、悩んでいても埒があかないので、本当に心苦しいがエルム一人だけで配達に行かせる事を決めたようだ。
「でもな、オレが今から言う約束事をきちんと守ってくれよ。これを守るって事は自分の身を守る事に繋がるからな」
「わ、分かりましたです」
「それじゃあ───」
エルムを一人で配達に行かせる事を了承したリンだったが、その際に幾つかの約束事を守るように彼女に言い聞かせていく。その他にも、どの商品を誰に配達するのかを記した紙と、先程述べた約束事を書き記した紙の二枚をエルムに渡す。
「分からなくなったらこれを見て思い出してくれ。で、こっちは今日の配達のリストだ」
「はいです。あと荷物は全部私の袋の中に入れれば準備完了です」
「そうだな。この袋から出すのはオレがやるから、エルムは入れてくれ」
二枚の紙を受け取ったエルムは商品が入った袋から、自分が以前に支給品として渡された魔法袋に詰め替える作業をしようとすると、リンは先程まで入っていた袋から商品を取り出して机に並べていく。それを確認したエルムは並べてある商品を自分が持っている魔法袋の口を当て、次々とその中に入れていく。
身体が小さいエルムはそのままでは少しだけしか持てないが、彼女しか使えない魔法袋に入れればどんな大きさの荷物でも、どんな量でも持ち運べる。
「リンさん。私、行ってくるです」
「ああ、気を付けてな」
荷物を全て入れ終えたエルムは魔法袋を自分の腰の辺りに吊り下げて準備が完了すると、背中の羽を動かして浮かんで、雑貨屋を出て配達に向かって行った。
「……やっぱり心配だな」
エルムが配達に出掛けたのを見送ったリンだったが、彼女が危ない目に会ってしまわないか心配になり、様子を見に行こうとする。
「…………あの~、まだですか?」
「え?あ、すいません!今対応するんで!?」
だが、待たされていた客の指摘で、エルムを配達に行かせている間に自分が客の対応をする事を思い出し、リンは自らが行わなければならない業務に戻っていった。
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初めての配達に一人で出掛けたエルムは、リンとの約束を守りながらしっかりと配達の業務をおこなっていた。この街に住んでいる子供達から遊びに誘われても、
「私は今お仕事をしてるので、遊んだら駄目なんです」
と、申し訳無い気持ちでいっぱいになるのだが、仕事を途中で投げ出してはいけないという約束があるので断っている。また、一緒に食事をしていかないかと誘われても、
「お仕事中なので、お気持ちだけ受け取るです」
と、自分が大好きな甘い物で誘われたとしても、踏み止まって断っている。他にも、人通りが少ない裏道などには出来る限り通らない、怪しい奴らに追いかけられたら大声で助けを求めるなど、複数の約束事をエルムは守りながら仕事をしていた。
以前のエルムならば、それらの誘いに乗って遊んだり食事をしたりしていただろう。この街に来てから様々な事を受けて学んでいく中で、閉じられた集落で過ごしていた時には考えられなかった出来事によって、彼女は確実に精神的に成長しているのだ。
「えっと、次はここですね」
エルムは今、一軒の家の入り口の扉の前で浮かんでいる。次の配達先は、どうやらここのようだ。
「すいませんです。ご注文の品をお届けに来ましたです」
「はーい」
エルムは戸を叩いて配達に来た事を伝えると、戸は開かれて住人の男性が出て来た。
「おや?珍しいね、エルムちゃんだけかい?」
「はいです。今日は私一人で配達です。……えっと、ご注文の品物はこれですね」
エルムは自分の腰に吊り下げている魔法袋に手を入れ、品物を探って取り出す。その小さい袋には絶対に入らない大きさの品物が飛び出してきた。
「わぁ!」
「ご、ごめんなさいです!大丈夫ですか?」
「い、いや、大丈夫だよ。ちょっとビックリしただけだから。その袋って一体何なんだい?」
「これですか?これは魔法袋っていう不思議な袋だって、リンさんが言ってたです。私しか使えないみたいなんです」
「ま、魔法袋!?そんな物まで持ってるのかい!?」
とても小さい袋から絶対に出てこないであろう大きな物が出た事に、注文した品物を受け取りながらも驚く男性だが、エルムが使っている物が市場には滅多に出回らない稀少な魔法袋だという事に、更に驚く。
「……あの、代金はまだですか?」
「え?ああ、そうだったね。はい」
「ありがとうございますです。……えっと、商品の代金の銀硬貨三枚と配達の手数料の銅硬貨一枚ですね。丁度預かりましたです」
エルムに促されて、男性は商品の代金ど配達の手数料を彼女に手渡す。以前にリンが営んでいる雑貨屋が行う配達には手数料が掛かると言っていたが、その金額は配達一回につき銅硬貨一枚だ。どんなに沢山の商品を注文したとしても、配達する回数で金額が決まるので、一回につき銅硬貨一枚というのはとても安いのだ。一見すると、配達をすればするほど店側が損をするだけだと思われる。
……しかしリンは、配達の手数料を銅硬貨一枚にする代わりに、配達する順番は店側だけが決定権を持ち、それに対しての文句は言わないという約束を客との間で取り決めている。また、配達をする範囲をこの街の中だけに限定していて、他の街へ移動しての配達はしないとしている。
料金が低い設定なのはこのような理由がある事を客にしっかりと伝え、了承してくれればこの料金で配達を行う事にしているので、多くの客が納得して配達を利用しているのだ。
「エルムちゃん、お仕事頑張ってね」
「ありがとうございますです」
エルムは手渡された代金を魔法袋に入れると、次の配達先に向かって行った。
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エルムを一人で配達に行かせてからのリンの仕事振りを見てみると、彼女の普段の仕事の様子を知っている者ならば、皆が口を揃えてこう言うだろう。
…………それとは比べ物にならない程に、大変悲惨な状態だと。
「……リンちゃん、お釣り間違えてるよ?銅硬貨じゃなくて、これ全部銀硬貨だよ?」
「えっ!?」
客に返すお釣りの銅硬貨を、誤って全てを銀硬貨で渡してしまった。色や重さで違いが分かる筈なのに、リンは指摘を受けるまで気づかなかった。
「植物図鑑の新しい物ってありますか?」
「それはここに……、うわぁ!?!」
新しく作成された植物図鑑を棚から取り出すと、その勢いで他の本を床に落としてしまった。それも一冊ではなく何冊も。
「調合した薬を入れる容器を下さい」
「それなら……、あ!?あぁっ!?!?!」
机の上に置いていた容器を取ろうとして手を伸ばすと、指が当たって容器が倒れて他の容器に当たり、それらが連鎖して複数の容器が倒れて転がると床に落ち、机から落ちた全ての容器が壊れてしまった。
「……あ、あの」
「だ、大丈夫だって。予備があるからぁっ!?!」
壊れてしまった容器は他にもあるので、それを倉庫に取りに行こうと歩き出したリンであったが、何故か段差が無い所で躓いて倒れてしまった。しかも、壊れた容器の破片の上に、リンの顔が丁度覆い被さるような形で。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。痛くは無いから」
「いや、顔に破片が刺さってますよ」
「え?……あ」
心配かけまいと顔を上げるリンだったが、彼女の顔には壊れた容器の破片が幾つも突き刺さっており、客がそれを指摘する。痛みを感じない彼女は周りに指摘されるまで、何かが身体のどこかに刺さっていたりする事には気づかない場合が多いのだ。
……と、普段は仕事をそつなくこなすリンからすれば有り得ない失敗を、彼女は何度も起こしていた。
「……本当になんなんだよ、今日は」
「どうしたんだい?なんか、いつものリンちゃんじゃないみたいだよ?」
「何でかは分からないけど、いつも通りの事が上手く出来てないんだよ。今までこういう事無かったし」
リンは顔に突き刺さっている容器の破片を抜き取りながら、今日の自分の業務の状態の悲惨さを嘆いている。常連客達から心配される程の失敗をしているリンだが、その原因は彼女自身、全く分からなかった。
「……あれ?そういえばエルムちゃんは?」
「エルムなら配達に行ってる。初めてだから色々と心配なんだけど、店の業務もあるから一人で行かせてるんだ」
エルムの姿が雑貨屋に無い事に常連客の一人がリンに尋ねると、配達に行かせていると彼女から答えが返ってくる。それを聞いた常連客達は各々顔を見合わせ、不調とも言うべきリンの今の状態に納得がいったと言わんばかりに頷いていた。
「……何?」
「いや、お前がどうしてこんなになってるのかが、俺達は分かったからな」
「そうだね、リンもこんな風になる時が来たって事だね」
「いや、だから何なんだよ?オレは全く分からないから困ってるんだよ」
店の中に居るリン以外はどうして彼女がこうなってしまっているのがが分かっているので笑っていたのだが、リンは依然として分からずにいた。
「分からないなら教えてあげるよ。……今のリンちゃんはね、子供が初めてお使いに出掛けたけど、子供の事が心配で色んな事が出来なくなる親と同じなんだよ。私も自分の息子が小さい時にお使いに行かせたけど不安ばかり募って、家事が疎かになったんだよ」
「俺もだよ。あの日は子供が家に帰って来るまで、仕事に身が入らなかったから怒られたんだよな」
常連客達は口々に自分の子供をお使いに行かせて心配する親のようだと言っている。
「親って、……オレが?」
「そうだよ。二人を見てると本当の親子のように見えるって、皆が言ってるよ」
エルムが雑貨屋で働き始めてから、リンは彼女に読み書きやお金の数え方など、生活する中で必要な事を教えていた。それは、エルムがとても稀少な種族であってもリンは特別扱いせず、この街に住む一人の人として生活する術を教えていたのである。その様子を見ていた住人達は、二人は姉妹のように見えると言う者が居るのだが、親子のように見えると言う者がそれよりも多かった。
「……子供が産めないオレとエルムが、本当の親子のように見える、ねぇ」
リンは本当の親子のように見えると言われて、嬉しいと思いながらも内心は複雑だった。死んでいるリンは心臓や胃などの臓器は全て機能していない。無論、それは子孫を残す為の臓器も例外ではない。彼女は子供を産む事は出来ないのだ。
その事実を以前から受け入れていたリンは、自分は誰かの親になる事は無いだろうと思っていたのだが、いつの間にかエルムと居ると本当の親子のように見えると言われて、そう言われるのも悪くは無いと感じたのだった。
(……もしかして、爺さんもこう思ってくれてたのか?今となっては、絶対に分からない事だけど)
リンは先代の店長から以前、自分を口が悪いけど孫娘のような奴と言われて受け入れてくれた事を思い出す。その時の先代の店長も今の自分と同じような思いをしていたのかと、不器用ながらも親心という物を理解し始めた彼女であった。
「リン、物思いに浸っているのは良いけどよ、仕事したらどうだ?」
「……あ、悪い悪い。今戻るがっ!!!」
仕事の手が止まっていたリンは仕事に戻ろうとしたのだが、何故か壁に向かって一歩を踏み出し、勢い余って激突する。
「おーい、大丈夫か?」
「……だ、大丈夫だよ。オレは痛くも痒くもないし」
「「「「いや、そっちじゃない」」」」
常連客達から、既に死んでいる身体の心配ではなく、見ていられない程の仕事の惨状を心配されるリンであった。
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リンとエルムが住んでいるレクトイの街は、以前にも言ったが比較的治安は良いと言ってもいいだろう。頑丈な素材で造られた壁が街の周りを囲っており、それが魔物などの侵入を防いでいる。
この街に出入りするには、東西南北それぞれ一ヶ所ずつある関所のどれかを絶対に通らなければならない。壁をよじ登ったり壊そうとして入ろうとすれば、その者は確実に不審な物などが無いか見回っている兵士達に捕まってしまうだろう。厳しいかもしれないが、これらがあるからこそ人々は安心して暮らしていける。
……しかし、どんなに厳しい監視があっても悪事を働こうとする不届き者は居るのだ。
「……おい、あれは見つけたか?」
「ああ、見つけたぜ。さっき一人で近くを通ったのを、俺はこの目で確実に見たぜ」
この場所はレクトイの街にある、一つの通りの物陰。ここら一帯は普段から人通りがあまり無い所であるが、それを利用して怪しい男が五人集まっており、何やら良からぬ事を企んでいる。
「あの噂は本当だったんだな」
「だから、本当だって言ったろ?今までのと違って信憑性がかなり高いし、何よりこの街に住んでいるってのを、ここに居る奴らが言ってたからな」
「そいつを捕まえて売れば、俺達一生遊んで暮らせるぜ」
ここに集まっている男達は、話の内容から察するにレクトイの街の住人では無い。彼らはどうやら、この街に住んでいる誰かを誘拐して闇商売に引き渡し、大金を得ようと企んでいる。関所を何とか怪しまれずに通り抜けられた彼らは、ある噂を聞きつけてレクトイの街に来たようだ。
「とにかく、周りの奴らに勘づかれないように注意して捕まえに行くぞ。出来るだけ静かにな」
「分かってるって。兵士達の目は侮れないから早くそいつを捕まえて、この街から出ようぜ」
男達がこれからやろうとしている事は、王国では禁止されている人身売買のようだ。彼らは自分達がしている事が犯罪である事を認識しているが、一生遊んで暮らせる程の金が手に入るならば構わないと、目標に向かって行動を開始する。悪意に満ちた魔の手が一体誰に及ぼうとしているのかは、この時点で分かる者はいなかった。
……否、この街の上空に留まっている一つの存在だけが男達の動向を、その双眸でしっかりと捉えていた。そして、彼らの魔の手が誰に及ぼうとしているのかも、はっきりと分かっていたのである。それは、自らが守らなければならない者の為に街へと降下していった。
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少し時間を置いて、次の話を投稿します。