黒羽結美
「お前らは何を考えているんだ。」
俺の耳に入ってくるのは教師のあきれた声だった。俺は入学式で本当に寝てしまった。
「は、はぁ。」
何となくで返す。正直眠すぎてそんなこと考えていられない。なんだこの教師。外れを引いたな。ちなみに怒られてるのは俺だけではない。まぁそんなことは教師の言動から分かることなのだが。
「ごめんなさい。寝坊しちゃいました。」
こいつは初日から寝坊して学校に遅刻した。俺は時間通り来てるだけましなのではないかと思ってしまう。
「ったく。これからは気をつけろよ。」
そう言い残して教室に入っていった。
「ねぇねぇ。入学式寝てたんでしょ?どーして?もしかして夜更かしでもした?」
急に話しかけてきた。なれなれしすぎないかこいつ。
「いや、オールした。」
「え?寝てないの?そりゃ寝るわ。」
なんか分かってくれたらしい。
「お前は、」
「じゃあ先教室入ってるねー。」
聞くだけ聞いていきやがった。自由すぎるだろ。と思いつつ俺も教室に入ると自己紹介的なものが始まっていた。始まっていたというのもおかしいか。残ってるのは怒られてた俺らだけだ。
「次、黒羽。」
「はい。」
あいつは黒羽っていうのか。まぁ覚えててどうという問題ではないが。
「黒羽結美です。好きなことは、まぁ特にないです。よろしくお願いしまーす!」
こんな適当でいいのか自己紹介。と思ってしまったが
「最後。柊。」
やっぱり俺か。何も考えてないどうしよう。
「あー。柊祈叶です。よろしくお願いします。」
もっと適当になってしまった。いや。逆に考えるんだ。シンプルイズベスト。そーだそのとおりだ。
「うーん。もうすることがなくなったな。」
え?うそでしょ?まだなんかあるでしょ?
「じゃあ。席順決めるか。」
なんでそーなる。入学初日だろなんかいろいろあっただろ。本当に外れだなこの教師。
「先生。先生からのお話などはないのですか?」
まるで俺の気持ちを代弁するかのような意見が出された。
「お前らは入学式で話聞くの疲れただろ。だから俺はもうそんなに話さん。」
前言撤回めっちゃいい教師だ。入学式寝てたけど。
「じゃあくじを引け。早く決めたらそれだけ早く帰れる。」
うぉー!とクラスで巻き起こる歓声。これ終わったら帰り?マジかよ。最高じゃん。そんなこと思いつつ俺はくじを引く。さぁ、これが高校生活の分岐点だ。
そして新しい席に着く。俺の席は窓際の1番裏。神ポジだ。しかし1つ問題が・・・
「おぉ。君が後ろとは奇遇だねー。」
なんで前にこいつがいるんだ。
「あぁ。できればなってほしくなかったよ。」
「ひどいこと言うなー。まぁ、これからよろしくねっ!」
「お、おう。」
こいつとしばらく席が近いのか。疲れそうだな。
「よし。決まったな。じゃあ今日は終了!下校しろ!!」
本当に終わりやがった。
「ねぇねぇ祈叶くん。一緒に帰ろうか。」
「断る!」
そんなこんなで俺の高校生活はスタートした。あぁ。先が思いやられるな・・・