猫
ここに1つの箱があります。
大きさはあまり大きくはありません。
この箱の中には猫が入っています。
茶色い猫です。縞模様、つまり、虎柄の猫です。
黒い瞳に黒い髭の愛らしい猫です。
この箱の中には猫が入っています。
猫は1匹ではありません。
同じ柄の猫が何匹も入っています。
この箱に中には猫が入っています。
しかし、箱は動きません。
「にゃあ」とも鳴きません。
猫は生きているのか、死んでいるのか。
猫達は眠っているから、箱は動かないし鳴き声も聞こえないのかもしれない。
もしかしたら、死んでいるのかもしれない。
まるでシュレーディンガーの猫。
箱を開けるべきか、それとも開けない方が正解でしょうか?
この箱の蓋には、手書きの可愛い猫の絵が描かれています。
あなたはどう思いますか?
この箱を開けた方がいいですか?それとも開けない方がいい?
この中の猫は生きている?死んでいる?
私はどうするべきでしょう?
教えて下さい。
黒いスーツ姿の20代後半から30代前半に見える男は、大げさにお辞儀した。
右腕を胸に当て、深く腰を曲げる。その背中は小さく震えている。
男は唐突に体を起こした。
男は満面の笑みを浮かべている。
悩みましたか?
箱の中の猫達が今どんな状態なのかを想像しましたか?
彼等は寝転がっているんです。
猫が猫の上に折り重なっているのです。
あなたの頭の中身を見れないのが残念だ。
実は私は嘘をついていました。
箱の中には猫が入っています。
肉も骨もありません。毛皮だって無い。
猫達は、小麦粉などで出来ています。
だって、クッキーですから。
あなたが今、どんな顔をしているのか見れないのが残念だ。
さてこの、可愛い猫の形のクッキー、たった1つだけど、致命的なミスがある。
それは・・・・・・・、
砂糖ではなく、塩が大量にはいっていることだ。