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あと九十六本... 「追いかけてくる」

 え? あーごめん、聞いてなかった。


 あっはは、ごめんってば。

 ちょっとさ、もう行っちゃったから言うけど、さっきそこに居た子たち。

 見てない? 制服の二人。


 そうそう、カップルみたいな。

 あの子たちの会話、別に聞いてたわけじゃないんだけど耳に入ってさ。ちょっとあたしも思い出す事があったわけよ。


 あ、ちょっと聞こえてた? だけどねー、事件の方じゃなくて、幽霊体験? あははっ、ホントに幽霊を見たわけじゃないよー。ちょっとした不思議体験って言うか、ちょっと怖かったなって思い出。


 別に子供の頃の話だし、一回きりなんだけどねー。でもそれがあたしの唯一ってくらいの不思議体験かな。

 小学生の頃だったかなー。通ってた小学校の周りにさー、裏道みたいなところがあったんだよね。裏道っていうよりは、ふっるい神社の入口に続いてる道っていうの? そこ自体も神社の敷地の一つみたいで、ほぼ何も無かったんだよね。木もやが多くて、ちょっと隔離されてるような道。だから少し大回りになるようなところで、人通りはそんなになかった。


 でさ、その裏道みたいなとこにもあったんだよ、怖い話。

 男の子たちとか、何人かで固まって冒険行こうぜってノリで行ってたみたい。怖い物知らずだよね。

 でさ、あたしも、何でか本当にわかんないんだけど、そこに行く事になったの。しかも一人で。別にさ、イジメとかじゃなかったんだけど、けしかけられた感じ? 行ってみろよって。


 でもとにかくさ、あたし行ったんだよ? その裏道。

 もう雰囲気からして怖かった。昼間なのにすっごい暗いのもそうだし。ずらっと生えてる大きな樹が光を遮っちゃってて。そんなとこなのに、帰り際って夕方でしょ? 余計暗くてさ。

 一応、なんていうの、蛍光灯が入った…ほら、よく道に突っ立ってるヤツ。そうそう! ふっるい街路灯があったんだけど、それがまたそんなに明るくなくてさ、蜘蛛の巣は張ってるし、虫はたかってるし…余計怖いのなんの。


 怖い話よりも、ホントになんか出そうっていう感じの方が強かったかな。で、その怖い話っていうのが、もし神社から何かついてきてたとしても、絶対に振り返っちゃダメってだけの話。

 すごい単純でしょ?

 なんかもうさ、信号の白い部分からはみ出たら地獄に落ちるみたいなの、あったよね? もうあんな感じ。


 それであたし、そこ通ったんだよ。

 裏道通り過ぎちゃえば表に出られるんだけど、とにかく暗いし不気味だったんだよね。夕方だったしさ、街路灯の電気はもうついてた。

 で、結構子供の足だと長く感じるんだよね。真ん中くらいまで来て、神社の入口が近づいてきた時はもう帰りたかったよ。入口のとこからは階段が続いてたんだけど、人がいて。


 え? 違うよ、神主さんみたいな人が掃除してた。

 その人がホーキみたいので階段掃除するのをちょっと見てから、なーんだって感じでそのまま通り過ぎちゃった。


 そこから表に戻るあたりでも、左後ろから地面に人影が伸びてたんだけど、その神主さんだと思うともう何も怖くなくてさ。多分、用事があるとかで降りてきたんだろうね。ちょっと後ろ見れなかったけど。その影がずっと同じ位置で歩いてくるのを、ぼーっと見ながら帰ったよ。


 え? どこが怖い話なのかって?


 いやさ、なんかおかしかったんだよね。

 そうだよ、だってさー、あたしはずっと前に進んでるんだから、街路灯によっては、影が薄くなったり移動したりするわけでしょ。光の当たり具合によっては三つぐらいになったりさ。

 けどさ、その追いかけてきた影、ずっとあたしの左側にあったのよ。そして、神社のその裏道を越えた途端急にいなくなった。一本道で、横道なんてなかったのに。もしそうなるとしたら、林の中か、神社の…なんていうの、建物の壁の上に行かなきゃいけないのよね。それにさ、子供の足と大人の足じゃ、途中で絶対に追い越されたりするでしょ。

 それにさ。表道に出てから振り返ったんだけど、うしろ、誰もいなかったんだよね。


 あれって追いかけてくるのを振り向くな、じゃなくて、足元で追いかけてきてるのをじっと見続けろって事だったんじゃないかなって思ってるの。

 もしあの時に振り向いて、ちょっとでも視線を外してたらどうなってたのかしらね。


 どーよ。怖い話でしょ。そういえばさ、ユリは何か怖い話とかないの?


 え? 何?

 ぞっとした?

 ほんとに?


 ちょっと嬉しいかも。実はこの話したの、ユリが初めてなんだ。

 ところでさー、さっき何の話だったっけ……

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