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第12話  秘密の話

クリストール歴2019年2月23日<アルゴ自由都市同盟領>


「兄さん、夜は静かにしてくれない?隣が僕の部屋だったから良かったけど、うるさくてよく眠れなかったよ。」

「すまん。今度から気を付ける。」

「メス豚!てめぇは夜中にブヒブヒうるせぇんだよ!静かにできねえなら豚小屋で寝ろ。」

「すいません・・・。反省してます。」

いつもは強気なメアリーも今日はさすがに恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして俯いてしまった。弟と言っても、あの時の音を聞かれるのはさすがに恥ずかしいな、今度から気を付けよう。

「で、おまえは昨日どうだったの?」

「兄さんが隣でうるさかったこと以外は、いつも通り普通に寝たけど?」

「じゃあ、エマとなにもしてないの?」

「うん、僕は兄さんみたいに焦る必要がないからね。」

「えっ、おまえもしかして、あっちの趣味?」

「違う!そんな訳ないでしょ!初めての奴隷だからじっくり楽しんでるんだよ!エマはあのメス豚と違っていい女だよ。」

「ふ~ん。まぁ、おまえの趣味だから良いけど。困ってることがあったら兄さんに相談しろよ?別に恥ずかがることじゃないからな。俺はそっちには全く興味はないけど、そういう人もいるってことには理解してるからさ。」

「だから違うって!」

一瞬、馬車を操縦している兵士がラルフに熱い視線を送っていたのを見た気がしたけど、気にしないでおこう。


それからお昼まで、休憩することなく進み続けた。俺は寝不足ではあったけど、今朝起きた出来事のおかげで興奮して眠れなかったが、メアリーに俺の肩によしかかって気持ち良さそうに眠っていた。この娘は意外と大物かもしれない。

昼の休憩になんとかメアリーと二人きりになって、菊池からもらった武器を試してみたかったが、俺とメアリーが馬車から離れようとすると、ノーマンといつも一緒に俺を護衛している兵士2人が必ず付いてくる。

仕方ない。今日は宿場街の宿に泊まる予定だから、夜になるまで我慢するしかないな。


宿場街に着いて、宿屋の食堂で夕食を食べてから、俺とメアリーはすぐに自分達の部屋に引き籠った。オズワルドはまたニヤニヤしながら、俺達を見送っていたが気にしない。


「ふぅ、やっと二人きりになれたな。」

「ギル様はエッチですねっ」

「そういうことじゃない。確かにそれもするけど、まずは今朝菊池にもらったハンドガンって武器を見てみようぜ。」

「あっ、はい。今出しますねっ」


メアリーは軽く頬を染め、自分の鞄から今日もらったハンドガンと箱、説明書を出してくれた。

まずは説明書を読む。1枚目は菊池からの手紙になっていた。


“今回は初取引ありがとうございました。まだ武器の販売は始まっておりませんので、サンプルでハンドガンのマカロフPM2丁と予備のマガジンを4本、9mmマカロフ弾が240発をお送りします。危険ですので使用上の注意を良く読んでから、正しく使ってください。”


2ページ目以降にはマカロフPMのパーツ名称と説明、3ページ目には弾の込め方、4ページ目には実際の使い方、5ページ目にはメンテナンスの方法、6ページ目には撃つときの姿勢、7ページ目には注意事項等が書かれていた。最後に“ドリホのムービーフォルダにマカロフPMを実際に使った動画がありますので、ご確認ください。”

ドリホを取り出して、その動画を見てみると、黒い服に黒い眼鏡をかけた男が、上半身裸で背中に絵が書いてあるオッサンをマカロフで撃ち殺すシーンが再生された。動画の最後に“関東任侠伝説より抜粋”と表示されたが、なんのことだ?


「なんか、よく分からないですけど、かなり危険なものだってことはわかりました。」

「この金属の弾を発射して相手を殺す武器みたいだな。」

「弾入れてみましょうよ!」

「そうだな、2つあるからメアリーもやってみて」

「はい!」

本体のグリップからマガジンを抜いて1発ずつ弾を込めて、マガジンをグリップに戻す。弾は9発入った。

「これで撃てる状態なのかな?」

「あっ、安全装置を外さないと撃てないって書いてありますよ。そして、このスライドっていうのを引かないとダメみたいです。」

「こうかな?」

「たぶん大丈夫です。でも、さっきの動画を見ていると、かなり大きな音が出るみたいでしたね。」

「ここで使ったら、護衛がすぐ入ってくるだろうな。よし、ちょっと抜けだそうか。」

「はい。これ全部持って行きますか?」

「そうだな、一応持って行こうか。重そうだから俺が持つよ。」

「あっ、ありがとうございます。ギル様は優しいですね~。」

「なんか、暗いとこで使う道具ないかな?」

「ドリームショップで探してみましょうか。」


あった!“暗いところでもこれがあれば安心!暗視ゴーグル!”でも、たけぇなこれ!1オンス金貨1枚もするのか!それに注意書きに充電が必要とも書かれているし。

朝の菊池の説明でドリホも充電が必要だったな。電池タイプの充電器というのを一緒にもらったけど、すぐに電池が使えなくなるから、そのうち発電機を買ってくださいって言っていた。それはクラテスに着いてからだな。他にないかな。

“火を使わなくても光が作れる優れ物!懐中電灯!電池付属!”これだな、2つ買っても1/10オンス金貨2枚で済む。早速、懐中電灯を2つ買った。


メアリーに懐中電灯を1つ渡して、二人で部屋の窓からそっと抜け出す。

そのまま、誰にも見られないように裏の林の中に入っていく。

こんなこともあろうかと、今日は1階の部屋にしてもらって良かった。


「よし、そろそろ懐中電灯使ってみるか。」

「はい!実は凄い楽しみでした!」

「ここを押せば良いのかな…。おおっ!これは凄い!」

「わぁ!明るいですね!これなら夜の林の中でも歩けそうですねっ。でも、ちょっと怖いのでくっついても良いですか?」

「もちろん。さっき宿屋の店主に聞いたけど、ここの先に小川があって林が開けてるみたいだから、そこで試してみよう。」

「はいっ!」


腕を組んでご機嫌なメアリーとそのまま15分程歩くと林が開けて、小川に出ると人影があった。アレ?ラフフとエマだ。あいつらこんなとこで何やってんだ?

「誰だ!」

「あっ、俺だよ。ギルフォード。とりあえず、その剣降ろしてくれないか?」

「なぁんだ、兄さんか。こんなとこで何してるの?」

「あぁ、丁度良かった。おまえも誘おうと思ってたんだけど、タイミングがなくてな。ちょっと他の奴らに聞かれたらマズイことだったから、皆寝た頃にお前の部屋行こうと思ってたんだわ。ここにはおまえとエマだけか?」

「そうだけど、なに?ここでそのメス豚殺そうとしてたの?それなら言ってくれたら手伝ったのに。」

「ちげぇよ。とりあえず聞けよ。あ、その前にお前達は何でここに?」

「僕はここでエマに剣の使い方教えてたんだよね。どうせだったら戦えた方が良いでしょ?」

「ふ~ん。まぁ、いいや。」


朝起きたことを全てラルフに話したが、特に驚いた様子もなかった。信じてないのか?


「で、そのもらった武器を試しに来たってわけ?」

「理解が早くて助かるよ。早速試してみようぜ。」


メアリーの鞄から、マカロフを取り出して、説明書に書いてあった撃ち方の姿勢で近くの倒木を狙ってみる。


バァァァンッ!!!


「きゃっ!」

「うぉっ、びっくりした!肩が外れるかと思った。」

「凄い音でしたね。あっ、でも見てください。ちゃんと命中してますよ。」

「ホントだ、凄いなこれ!木がえぐれてる!これで人撃ったら確実に死ぬな。」

「なんか、面白そうだねそれ。僕にも貸してよ。」


もう1丁のマカロフを鞄から取り出して、簡単に使い方を説明してからラルフに渡す。


「結構反動あるから気をつけろよ。」


バァァァンッ!!!


「これ凄いね。これなら剣の下手な兄さんでも使えるんじゃない?」

「別に下手じゃねぇ、俺は普通でおまえが異常なだけだから。」

「でも、僕はやっぱり剣の方が性に合ってるかな、これだと人を斬ったときみたいな感覚が得られそうにないし、腕が鈍りそうだ。とりあえず返しとくね。」

「あーそうかい。」


さすがに剣の達人ともなると言うことが違いますねぇ。どうせ俺なんか姉上やラルフにも当然一度も勝ったことないし、騎士団予備校でも中の上くらいの成績で…。


「あの~、ギル様、私も撃ってみても良いですか?」

「ん?あぁ、撃つのは良いけど大丈夫か?」

「大丈夫です、力には自信があるんですよっ。」


俺が持っていたマカロフをメアリーに渡し、メアリーも同じように倒木の狙って撃つ。


バァァァンッ!!!


「あはっ!これ、凄く楽しいです!」

「なんともなかった?」

「はい、大丈夫でしたよ?」


俺は1回撃っただけでも少し腕が痺れたのに、俺よりかなり細いメアリーが普通に撃ってるのはちょっと引いたけど、これならメアリーも戦力になりそうだな。俺の隠し玉にしよう。


「あああっ!こんなところにいた!!」

「誰だ!?」

俺は咄嗟にマカロフを声の方に向けた。

「俺ですよ!ノーマンです!あっ!それこっちに向けないでください!」

「あぁ、すまん。なんでここに?」

「さっき、ギルフォード様とメアリーさんが林に入って行くところが、見えたんで心配して着いてきたんですよ。危ないから、出かけるときはちゃんと俺に声掛けてください!って、あああああっっ!!!ラルフ様までいる!!!!!!」

「見られてたのか。心配かけてすまんな。」

「今度から気を付けてくれれば良いです。ところで、ちょっと見てましたけど、それ凄いですね!」


ここまで見られたなら仕方ないな、こいつらに事情を説明するしかなさそうだ。


幸いにもノーマンと一緒に来た2人の兵士も、いつもノーマンと一緒に俺の護衛をしている初級騎士のオーウェン17歳と、同じく初級騎士のオリバー18歳。二人とも初級騎士ではあるが、ノーマンにかなり鍛えられているらしく、13騎士団対抗の剣術大会でも予選を突破し、本戦2回戦にまで進んだ実力の持ち主だ。当のノーマンも20歳という若さで、本戦の準決勝まで残っている。

3人とも代々第7騎士団の騎士家の息子で、家柄もしっかりしているから信用できるだろう。


俺はノーマン達にも今朝起きたこと等を全て説明した。


「なるほど…。これは本当に凄いです。このことは他に話しましたか?」

「いや、先にいたラルフとエマ以外はお前達が始めてだな。」

「これは絶対に誰にも言わない方が良いです。その武器を狙ってどんな奴が襲ってくるかわかりませんから。こちらの態勢が完璧に整うまでは口外しないことにしましょう。」

「俺もそのつもりだったんだけど、おまえらが来たからな。」

「ああ、そうですよね。すみませんでした。」

「でも、お前達には話すつもりだったからいいよ。オーウェン、オリバー、お前達もこのことは絶対に他言しないように。」

「「はいっ!!」」

「もう一度、見せてもらっても良いですか。今度はこの兜を狙ってみてください。」

「じゃあ、そこの倒木の上に置いてみてくれ。」


バァァァンッ!!!


「あれ?外れた。もう1回。」


バァァァンッ!!!


「なかなか当たらないな。ちょっとメアリー撃ってみて。」


バァァァンッ!!!


「え?1発かよ!凄いなメアリー!」

「はいっ!これ得意かもしれないですっ。」

メアリーが撃った兜を見てみると、額部分の真中の辺りに穴が空いていた。


「凄いです!鉄兜も貫通するんですね!ギルフォード様、これがたくさん手に入れば、必ずギルフォード様がカロス大陸の統一どころか、テムリ大陸もいけますよ!」

「統一か・・・。確かにこれがあれば、どこの軍にも負ける気はしないな。よし、宿に戻って少し今後の可能性について話そうか!」


「「「はい!!」」」




ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!


明日も21時に投稿予定ですので宜しくお願いします!

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