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プロローグ1  ドミトリー編

初めて投稿します。

本日は2話連続で投稿します。

プロローグは設定中心となっておりますが、第1話に繋がるようになっておりますので、面倒かと思いますが読んで頂けると幸甚です。

また、誤字脱字等はご容赦ください。

プロローグ1-ドリトミー 


西暦2023年2月13日<ロシア モスクワ郊外>


ピピピピッ!ピピピピッ!

飾り気の一切ない、ベッドとサイドテーブルしか置いていない8畳ほどの寝室に、目覚まし時計のデジタル音が鳴り響く。

顎ひげを生やした黒髪の男が眼を覚まし、いつものように目覚まし時計を止めようと、サイドテーブルに手を伸ばすが、その手にはスマートフォンが握られていた。

スマホをベッドに置き、目覚まし時計を止める。スマホを観察してみるが、色も形も自分の使っているものとは違う。その証拠にサイドテーブルには充電器に繋がれた自分の見慣れたスマホが置いてある。また、男のスマホはリンゴのロゴの入った製品だが、見慣れないスマホには[DC-01]と書いてあった。


(なんだ、このスマホは。昨日は誰もうちには来てないし・・・。どっかで間違って持って来たか?とりあえず電源入れてみようかな。)


『はじめまして、ドミトリー・スモレンスキー様。私はドリームクリエーション合資会社の菊池と申します。突然のお電話で大変恐縮ではございますが、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか。ちなみに今お話している、そのスマートフォンは、弊社からスモレンスキー様に贈らせていただいたものです。』


スマートフォンからいきなり丁寧な口調の若い男の声が聞こえた。寝起きだったが、相手が丁寧な口調であるため、ドミトリーも普段どおりのビジネスモードで対応した。


「いきなりで少し驚きましたが、私に何の御用ですか。それと、この電話はどうやって私の部屋まで運んだのでしょうか?」


『驚かせてしまい、大変申し訳ございません。とても大切なお話ですので、失礼とは承知でスモレンスキー様にご連絡差し上げました。まず、どのようにその電話をそちらに運んだかについてですが、決して弊社のものがスモレンスキー様のお宅へ侵入して、電話を置いてきたということはございませんので、ご安心ください。弊社独自の新しい技術を使った量子転送サービスでお部屋にお送りいたしました。「ワープ」や「物質転送」と言ったら理解していただけるかと思います。』


(・・・・・。なんだコイツは、頭いかれてんのか?ワープって、大丈夫か?まぁ、このまま少し探りを入れてみるか。)


「量子転送サービスですか・・・。SF映画やアニメでは馴染み深い技術ですが、本当に開発されていたことに驚きました。けど、突然のことなので信じろと言われても難しいですね。」


『はい。この技術は弊社の重要機密事項でございまして、どこにも発表されておりません。したがって、それは当然の感想だと思います。そのスマートフォンに付いておりますカメラを、お近くの平らな場所に向けて、液晶を覗いて頂けませんか?』


ドミトリーはサイドテーブルにスマホを向けると、勝手にカメラモードが起動し、元々持っていたドミトリーのスマホと、デジタルの目覚まし時計が置いてあるだけのサイドテーブルが映っている。


『今から、スマートフォンに内蔵のライトが光りますので驚かないでくださいね。』


菊池が宣言したとおりに数秒後にライトが光り、一瞬画面が真っ白になった。

そのまま液晶を見続けていると、サイドテーブルには湯気の立ったコーヒーカップと名刺が映し出された。画面から視線を外して直接自分の目でサイドテーブルを見てみると、実際にそれまで存在していなかったはずのコーヒーカップと名刺が置いてあった。


(うわっ!本当に転送してんのかこれ?)


『先程煎れたばかりのコーヒーですので、よろしければお召し上がりください。実は私はコーヒーが大好きでございまして、また凝り性でもあるので、社内でも菊池のコーヒーは美味しいと評判になりまして、毎朝社長のコーヒーも入れるようになったんですよ。コーヒー豆も私がブレンドして挽いたものですので、他では味わえない1杯となっております。』


得体のしれない相手から出されたコーヒーカップに、ドミトリーは恐る恐る口を付けて、飲んでみると僅かな酸味と深いコクが口内に広がった。確かに美味しいコーヒーだ。コーヒーをサイドテーブルに戻して、代わりに名刺を手に取って見てみる。


[ドリームクリエーション合資会社 ビジネスソリューション事業部 マネージャー 菊池誠二]


住所や電話番号が書いていないことを除けば白地に黒文字とカラーのロゴが入ったシンプルなどこにでもあるような普通の名刺だ。裏返して見てみるが、裏には何も書いていない。ドミトリーはまだ半信半疑で話を続ける。


「確かに美味しいコーヒーですね。御社の技術力については理解しました。それで、菊池さんは私に一体どんなご用ですか?」


『はい。ご理解いただけて嬉しいです。まずは簡単に弊社の紹介をさせていただきます。弊社はこの量子転送サービスを使った通信販売を開始する予定となっております。通信販売と言いましても、弊社で直接エンドユーザーに販売する商品を取り扱っているわけではなく、商品を持っている加盟店様から、エンドユーザーに商品を転送するサービスを行っております。簡単に言えば、現在世界最大手のショッピングサイトのようなイメージですね。しかし、特殊な技術を使用していることと、エンドユーザーも非常に特殊なペルソナですので、加盟店様は弊社が厳選して選んだ企業様のみとなっております。そこで、今回はスモレンスキー様に是非御社のサービスの加盟店になっていただきたく、お電話を差し上げた次第でございます。』


「なるほど。確かに私は特殊な商品を扱っております。私の扱っている商品を必要とするお客様がいるから、私に声が掛ったということですね。ちなみに加盟料や年会費、御社の手数料はどうなっているのですか?」


『お察しのとおりでございます。これからご契約いただくエンドユーザー様から武器のニーズが多いと予想しておりますが、まだ加盟店様の中に武器の販売をしている企業がおりません。そこで、この度はドミトリー様にお声掛けさせていただきました。まだ検証段階でございますので、スモレンスキー様にはテスターとして、取引に関する情報を全て御社に提供していただきたいので、当社の手数料は10%で構いません。ただし、スモレンスキー様はただ、通常の販売データだけではなく、お相手とのやり取りの内容も全て弊社にお送りいただきたいのです。』


「うん。とても魅力的なお話だとは思うのですが、エンドユーザーはどんな方がいらっしゃるのですか?やはり、テロリストや麻薬カルテル、自衛目的の大富豪とか武器輸出禁止国が相手になるのでしょうか?」


『もちろん弊社は営利団体ですから利益の追求という意味では、そういった方々と取引させていただくのも1つの選択肢ではあります。しかし、あくまでも我々は民間の企業ですからそのような犯罪に加担するようなことはしません。

そこで、ここからがとても重要な話になります。弊社の想定しているマーケットはこの世界ではありません。弊社の研究スタッフがこの転送技術の実験途中で偶然にもパラレルワールドの存在を発見しました。そして、弊社の経営陣はこれ以上ないブルーオーシャンである、パラレルワールドでのシェアを獲得することを最優先事項に決定しました。ですから、スモレンスキー様にはこちらの世界とは全くしがらみの無い相手と、こちらの世界の法律に関係なく安全にお取引していただくことができます。』


「(転送の仕組みもよくわからないが、まぁ、そこは信じるとしても、パラレルワールドはさすがにないだろ。しかし、敢えてこんな電話を掛けてきてまで、俺を騙すメリットは何だをうか・・・。)量子転送サービスは実際に見せていただいたので納得しました。ても、パラレルワールドというのはまだ信じられませんね。」


ドミトリーは取引相手の身元がはっきりしない場合、安全を考えて取引をしないようにしている。


『パラレルワールドについては、当社の研究室が研究を進めておりまして、最初のパラレルワールドを発見してから約2年間で5つのパラレルワールドを発見しております。その中で、我々と同じように人類が存在している地球はまだ1つしか見つかっておりません。このパラレルワールドは私たちが住んでいる地球とは別の、地球の可能性ということになりまして、地形や気候、文明、歴史、言語等様々な面で我々の地球とは異なっております。実際の取引相手となる方々は、我々と同じ地球人です。今後も新たなパラレルワールドが発見され続けますので、マーケットの規模は無限に広がっていく可能性があります。』


「もの凄く突拍子のない話なので、色々と突っ込みたいこともあるのですが、確かに量子転送技術が存在するようですし、今までの常識は通用しないものとして、菊池さんの話を信じることにします。しかし、言語が違うのであれば取引をするのは難しいのでは?」


『はい。最初は我々も苦労しましたが、言語学者を集めてパラレルワールドで使用されている言語を解析した結果、古代アッカド語に非常に近い言語だと判明致しました。その後さらに研究を続け、現在では英語、中国語、日本語、ロシア語の四ヶ国語での翻訳システムの開発に成功しております。今、スモレンスキー様がお持ちのスマートフォンにもロシア語の翻訳システムがインストールされておりますので、会話に支障はございません。』


「2年間でよくそこまで、準備ができたものですね。一体どれだけ膨大な費用と、人員が動いているのかが想像もつきませんね。」


『はい。その辺りの情報は、弊社のスポンサーに関わる機密事項となっているため、私も何も知りません。そして、知ったところでお互いにメリットはないと思います。』


「そうですね、私としては安全に商売ができれば問題はありません。」


『そう仰っていただけると助かります。それでは、弊社とご契約していただけるということでよろしいでしょうか?転送装置の使用方法やパラレルワールドの詳細については、1週間ほど研修を受けていただきますので、そちらも併せてよろしくお願いします。』


「(まぁ、パラレルワールドがあるかどうかは別として、こいつらに付き合っていればこの量子転送技術を利用して一山当てられるかもしれない・・・。それに、これだけの秘密を知って断ったところで、きっと元の通りの生活には戻れない。一酸化炭素を転送されるだけでも証拠を残さずに簡単に人を殺せる相手だ。断ったら最悪殺されるな・・・。)

そういうことであれば、わかりました。是非、お願いします。」


ドミトリーはスマートフォンで送られてきた、契約書を受け取り、一通り内容を確認したうえでサインをし、スマートフォンの転送機能を使って送り返した。


『ご契約誠にありがとうございました。それでは、3日後に研修の日程と場所等をご連絡します。契約書にも記載がありましたが、スモレンスキー様には守秘義務がありますので、一切の情報を第三者に漏らさないようお願いいたします。』


「わかりました、よろしくお願いします。」

次話はもう一人の主人公のプロローグです。

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