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あの娘(こ)は電波か本物か  作者: 沙φ亜竜
第5話 わらわはいつでも、ここにいるぞよ!
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-5-

 相思相愛だと確認し合い、友人たちもそれを知ったことで、真綿ちゃんと勇授くんの生活は劇的に変化した。

 ……かというと、実際のところはそうでもない。


 クラスメイトである孝徳くんと紗月ちゃんは毎日のようにふたりを冷やかしているし、それを見て他のクラスメイトも「あ~、あのふたり、やっと上手くいったんだね」と悟り、冷やかしてきたりはしていた。

 とはいえ、真綿ちゃんのほうは真っ赤になって恥ずかしがってくれるものの、肝心の勇授くんはいつもどおりの軽めの笑い声を返すだけだった。


 真綿ちゃんの反応はなかなか面白いかもしれないけど、ふたり揃って恥ずかしがってくれないと、いまいち、からかいがいもないと言わざるを得ないだろう。

 なにせ、真綿ちゃんが真っ赤になって慌てふためいている姿なんて、みんな見慣れているのだから。


「勇授はどうしてそうなのじゃ! もっとわらわを大切に扱ってほしいのじゃが!」

「あはははは。真綿は大切に扱わなくても大丈夫でしょ。頑丈にできてるから」

「だ……誰がじゃ! はっ……! おぬし、わらわが最近ちょっと太ったことを言っておるのかや!?」

「あはははは。いや、そんなこと知らなかったけど」

「うぬっ!? よ……余計なことを言ってしまったのじゃ!」

「あはははは。でも、太ったなんて全然わからないよ?」

「み……見えないところにお肉がついておるのじゃ! というか、太ったなどと言うでない!」

「あはははは。自分で言い出したくせに」

「う、うるさいのじゃ!」

「あはははは。でも見えるところには、確かにお肉がついてないみたいだね~」

「ど……どこを見ておる! このスケベが!」

「あはははは」


 成長が微塵も感じられない胸の辺りを両手で隠しながら、真綿ちゃんが勇授くんに蹴りを入れる。

 だけど、勇授くんはやっぱりいつもの笑い声を響かせるのみ。

 これまでと変わらない、いつもどおりのふたりだった。


 こんな感じで、真綿ちゃんはいつでも真っ赤になって慌てている。

 もっともこの場合、恥ずかしさというよりは、怒りで真っ赤になっているという状態になるだろうけど。


「まったく勇授は……。どうしてこうも、乙女心というものがわからぬのじゃろうか」

「あはははは。真綿と乙女が、どうしてもイコールにならないなぁ」

「……前から思っておったのじゃが、おぬしはどうしてそう、わらわが怒るようなことを口走るのじゃ? 殴られたり蹴られたりするのは、予想できるじゃろうに」

「あはははは」

「……マゾっ気がある気がするぞよ?」

「あはははは」


 そんなふたりにツッコミを入れるのは、言うまでもなくこのふたり。


「ふふっ、真綿ちゃんは完璧にSだし、お似合いよね」

「にゃははっ! 言えてる言えてる!」


 紗月ちゃんと孝徳くんも、これまでどおり、いつもふたりで横に並びながらツッコミを入れる役目を果たしている。


「なぬっ!? わ……わらわのどこがSだと言うのじゃ!?」

『全部』

「…………!?」


 声を揃えて返された答えに、真綿ちゃんが絶句している。


「あはははは」


 もちろんその隣では、勇授くんが笑っていた。


 そうそう、真綿ちゃんは結局そのまま、「わらわ」とか、卑弥呼様っぽいような喋り方を崩していない。

 真綿ちゃんは今回の作戦のために、周りのみんなの祖先の話なんかをでっち上げたと白状していた。

 大化の改新関連の話は、まったくの作り話だったということだ。

 当然ながら、女王卑弥呼の生まれ変わりだというのも、ウソだったことになる。


 真綿ちゃんは勇授くんとの仲を深めたくてそう言っていたと語った。

 それならば、その目標が達成された今、もうそんな言葉遣いをする必要もないはずだ。

 でも真綿ちゃんは、言葉遣いも態度も改めるつもりは一切なさそうだった。


「ふふふふ、じゃがこの喋り方、結構可愛いであろう?」


 とご満悦の様子の真綿ちゃん。相当気に入っているようだ。

 それを聞いた勇授くんは案の定、


「あはははは」


 と笑い声を響かせる。

 なにも言ってあげたりはしていないけど、勇授くんのほうにしても、真綿ちゃんのそんな口調が随分とお気に入りなのだろう。


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