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あの娘(こ)は電波か本物か  作者: 沙φ亜竜
第4話 周りがなんだか、騒がしいのじゃ!
24/31

-6-

 真綿ちゃんたち四人を包んでいた安堵感は、もう次の日の放課後には消えてしまうこととなる。


「大変だよ~!」


 慌ただしい様子で廊下を走ってきた孝徳くんが、二年二組の教室に飛び込んできたのだ。


 チャイムが鳴った瞬間に、ちょっとトイレ~! と教室から飛び出していった孝徳くん。

 戻ってきたと思ったらいきなり大声で騒ぎ立て、足音を響かせながら飛び込んできた、というわけだ。

 その手には、なにやら封筒のようなものを持っている。


「孝徳は相変わらず、騒がしいのぉ。いったいどうしたというのじゃ?」

「真綿ちゃん、大変なんだって! これ、見てよっ!」


 孝徳くんは持っていた封筒を真綿ちゃんに手渡す。

 封筒はすでに開封され、手紙は孝徳くんによって読まれたあとのようだ。


「むっ、この封筒、わらわ宛てではないか! なぜ勝手に開けておるのじゃ、孝徳!」

「今はそんなことを言ってる場合じゃないってば! とにかく手紙を読んでみてよっ!」


 文句をぶつける真綿ちゃんに、孝徳くんはそう促す。

 真綿ちゃんは仕方なく、といった様相で手紙に目を落とす。

 勇授くんと紗月ちゃんも、身を乗り出してその手紙をのぞき込んだ。

 そこには、こう書かれてあった。




『中野真綿殿


 藤原勇授の妹、藤原唯夢を預からせてもらった

 すぐに、三丁目にある廃ビルまで来られたし

 なお呼び出しに応じない場合は、強硬手段を使うことも辞さない考えだ

 待っているぞ』




「これって、脅迫状じゃないの! 孝徳くん、これ、どうしたの!?」


 さすがの紗月ちゃんも、慌てた様子を隠せない。


「いや、知らない三年生の女子に渡されたんだ。その人も、渡すように頼まれただけみたいだったけどね」

「それより、どうして唯夢ちゃんがさらわれるのじゃ!?」


 真綿ちゃんが怒りの声を上げる。


「もしかしたら、一緒に遊園地に行ったのを、見られていたのかもしれないわね」


 紗月ちゃんがいつもの落ち着きを取り戻したのか、冷静に分析している。


「だけどこれ、いったい誰からなんだろう?」


 妹がさらわれたらしいというのに、勇授くんはいつもと大差ない調子でつぶやいた。

 ただ、さすがに焦りを感じているということが、その表情からはうかがえる。


「この字……春歌じゃ」

『え?』


 真綿ちゃんの言葉に、他の三人の声が重なった。

 確かに、それが一番ありえそうな話ではある。

 でも、文章も春歌ちゃんらしくはなく、しかも筆で書かれたかなりの達筆な文字。

 普通に考えたら、中学生の女の子が書いたものだとは思えないだろう。


「……真綿、どうして春歌さんの字だってわかるの?」

「え? そ……それは、ま、前にもべつの脅迫状が届いておったのじゃ! あなたは絶対に許しませんとか、そういう内容のな! おぬしらには、心配させまいと黙っておったのじゃがの!」


 勇授くんの疑問に、真綿ちゃんは慌てて言い訳がましい言葉を返す。

 そしてすぐさま、


「ともかくっ! 唯夢ちゃんが心配じゃ、急いで向かうぞよ!」


 と叫び、勇授くんの腕をつかんで引っ張ると、ともに教室を飛び出していった。


「あっ、待ってよ、ふたりともっ!」

「わたしたちも行くわよ」


 そんなふたりを追って、孝徳くんと紗月ちゃんも急いで駆け出していくのだった。


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