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あの娘(こ)は電波か本物か  作者: 沙φ亜竜
第4話 周りがなんだか、騒がしいのじゃ!
22/31

-4-

「それにしても、楽しい余興だったわ」

「にゃははっ! 真綿ちゃん、ほんとに真っ赤だったもんね~!」


 通学路を真綿ちゃんの家へと向かって歩いているいつものメンバーは口々に、主にひとりを対象にしたからかいの言葉を続けていた。

 言うまでもなく、対象となっているのは真綿ちゃんだ。


 本来ならばもうひとり、勇授くんも同じようにからかいの対象となるはずなのだけど。

 どんなに必死になってからかったとしても、いつもの「あはははは」という笑い声が返されるだけだから、自然とターゲットから外されている。

 そんなわけで、よりいっそう真綿ちゃんへの攻撃が激しくなっているのが現状だった。


「わ……わらわは全然、面白くなどなかったぞよ!」


 不満顔で頬を膨らます真綿ちゃんの姿は、どこか子供っぽい印象を与える。

 だからこそ、からかいがいもあるのだろう。


「本当に? ダンボールに押し潰されてるところを助け出されてから、真綿ちゃん、なんだかずっと嬉しそうだったけど?」

「なななななななにを言うておるのかや!? わ、わらわには、なんのことやら、さっぱりじゃ!」

「にゃはははっ! ダンボールに押し潰されたってより、勇授に押し潰されたって感じだったのが、なにか影響してるのかな~?」

「なななななななんじゃそれは!? だいいち押し潰されたら痛いし重いしで、嬉しいはずがなかろう!?」

「あはははは、そうだよね。ぼくもそう思うよ。もし上下が逆だったら、ぼくが真綿の体重でペシャンコに――」


 ゲシッ!

 相変わらずの勇授くんは、真綿ちゃんから蹴りを食らう。


 そんなこんなで、いつもとほとんど変わらない下校途中のひととき。

 ただ、一瞬だけ。

 なぜか会話が途切れた瞬間があった。


「……ん? おぬしら、いきなり黙って、どうしたのかや?」

「え?」

「え~っと……」


 真綿ちゃんの言葉に、なんだかよそよそしい雰囲気で顔を見合わせている三人。


「あははは。なんでもないよ」

「そうかや? まぁ、よいがの」


 怪訝な表情を残しながらも、三人の様子を察してか、それ以上は追求しない真綿ちゃんだった。



 ☆☆☆☆☆



「今日もご苦労じゃったの」

「うん。真綿、また明日ね」

「うむ。また明日じゃ」


 真綿ちゃんの広いお屋敷の前に着き、さよならの挨拶を終えると、彼女は門をくぐって歩いていった。

 危険があるかもしれない、という理由で送り迎えを続けているわけだけど。

 ここまで来れば、もう安全なはずだ。


 今日も真綿ちゃんを無事に送り届けた勇授くんたち。

 いつもなら、真綿ちゃんの隣の家である勇授くんはそのまま自分の家に戻り、孝徳くんと紗月ちゃんはふたりで帰っていくところなのだけど。


「……とりあえず、勇授くんの家に……。いいかしら?」

「うん。どうぞ」


 おそらくは最初から……というよりも、さっきの一瞬の沈黙のときから、決めていたことなのだろう。

 あうんの呼吸でそう言葉を交わすと、勇授くんは紗月ちゃんと孝徳くんを伴って自分の家に入っていった。



 ☆☆☆☆☆



「ねぇ、さっき……」

「うん、そうだね」

「にゃははっ。あれってやっぱり、あれだよね?」


 勇授くんの部屋で三人は、ひそひそと話している。

 もちろん、さっきの一瞬の沈黙の原因となったことについてだ。

 ひそひそとした声を、さらに小さくして話は続けられる。


「そうね。真綿ちゃんを、隠れてじっと見ているみたいだったわ」

「うん。あまりよくは見えなかったけど、サングラスをかけた男の人だったと思う。あと、黒いスーツを着てたよ」

「にゃははっ。怪しいね~」


 そう。

 あのとき三人は、隠れて真綿ちゃんに視線を向けている人影に気づいたのだ。


 とはいえ、気づかれたことを悟られたら、強硬手段に打って出てくるかもしれない。

 そう考えて、気づいていないふりをしたまま、真綿ちゃんを家まで送り届けた。

 そして真綿ちゃんが家に入ったあと、辺りを見回してみると、その人影はすでに消えていたというわけだ。


「もしかして、春歌さんの仲間だったりするのかしら?」

「にゃははっ。でも黒いスーツにサングラスの人だったんだよねぇ? 仲間だとしたら、どんなつながりがあるんだろう? ちょっと怖いなぁ」

「あははは。まぁ、なにがあっても、ぼくたちで真綿を守ればいいんだよ」

「ふふっ、そうね。余計な心配をかけたくないし、真綿ちゃんには内緒にしておきましょう」

「にゃははっ、了解っ!」


 こうして、三人のひそひそ話は終わりを告げる。


「……それじゃあ引き続き、作戦会議といきましょうか」


 かと思いきや、どうやら話はまだまだ続くようだ。


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