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あの娘(こ)は電波か本物か  作者: 沙φ亜竜
第4話 周りがなんだか、騒がしいのじゃ!
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-1-

 週が明け、月曜日の昼休み。

 屋上へと出るドアの前のスペースに、またもや数人の人影があった。

 それは前のときと同様、いつものメンツ、すなわち真綿ちゃんたち四人なのだけど。


「で? どうだったの!?」


 真綿ちゃんを押し倒すくらいの勢いで問い詰めているのは、珍しくテンションの高まっている紗月ちゃんだった。

 そのあまりの勢いに、真綿ちゃんのほうが若干引いているほどだ。


 昼休み直前、真綿ちゃんの携帯電話にメールの着信があった。

 以前にも情報を送ってきていた、「ガロ」という名前で登録されている人からのメールだ。

 真綿ちゃんは詳しく話さなかったけど、勇授くんが言っていたように、お手伝いさんってことになるのだろうか。


 今回も調査結果の報告が送られてきたのだろう。

 昼休みになると、真綿ちゃんはその内容について考えなしに話そうとした。


「今回は紗月に関する情報みたいじゃの」


 と言ったところで、調査結果の話だとわかった紗月ちゃんが、場所を移動しようと提案した。

 ま、これも前回と同様なのだけど。

 ただ前回と違っていたのは、自分に関する情報だというのを紗月ちゃんが聞いていたことだ。

 というわけで、屋上へと出るドアの前に着いた瞬間、ものすごい勢いで真綿ちゃんを問い詰め始めたのだった。


 どうしてそこまで、と思わなくもないけど。

 自分以外の三人は歴史上の人物の祖先だったり生まれ変わりだったり、といった話があったというのに、自分にだけなかったのを相当気にしていた、ということなのだろう。


「ほらほら、もったいつけてないで、早く白状して楽になりなさい」

「にゃははっ! 紗月ちゃんが壊れてるなぁ! それじゃあ、取り調べだよ!」

「あはははは、そうだね。取り調べを受けるなんて、真綿、なにをやらかしたの? 強盗? 恐喝? 婦女暴行?」

「こら勇授! いくらなんでも、ふざけすぎではないかの?」


 勇授くんのいつもどおり学習能力のないセリフに、真綿ちゃんは怒りでこめかみをピクピクさせている。

 といった周囲の様子なんてお構いなしに、紗月ちゃんは顔をぐいっと近づけてさらに尋問を強化する。


「そんなことより、早く話しなさいな! 話さないとどうなるか……」(にやっ)

「な、なんじゃその笑いは!? わ、わかったから、ちょっと離れるのじゃ!」


 完全に圧され気味の真綿ちゃんが慌てた答えを返すと、紗月ちゃんはようやく身を離す。


「ふう……。驚いたのじゃ。紗月は実はかなり怖いおなごなのじゃな」

「いいから話しなさい」(にこっ)


 ぞくっ。

 笑顔ながらも絶対零度の冷たさを感じさせる紗月ちゃんに、さすがの真綿ちゃんも背筋を凍らせていた。


「わ……わかっておるのじゃ。じゃが、過度に期待はせぬようにの」


 そう前置きをして真綿ちゃんは語り始める。


「紗月は、わらわの国、つまり邪馬台国に仕えていた配下の国の王だったようじゃ。正確には、その王の子孫、ということになるがの。わらわと違って、生まれ変わりで記憶も残っている、ということはなさそうじゃが。紗月の名字、山本というのも、邪馬台国の(もと)に仕える、という意味からつけられた可能性が高そうじゃな」

「ふむふむ、それで?」

「……いや、それだけじゃ」

「…………」


 しばらく沈黙したのち、紗月ちゃんは質問を重ねる。


「それじゃ、その王の名前とかは? 歴史の教科書とかに載ってるような人?」

「いや、名前まではわからぬ。記録として残っている史実にはまったく出てきたりもせぬようじゃ。わらわも覚えておらんしのぉ」

「…………」


 再び沈黙する紗月ちゃん。

 そして。


「つまんない。なんでわたしだけ、歴史の教科書に載ってないのよ」


 大声を張り上げたりはしなかったものの、明らかに不満を漏らす。

 う~ん、そんなに歴史の教科書に載りたかったのだろうか。


「ま……まぁ、そんなに沈むことはなかろう? 勇授や孝徳にしたって、所詮は自分のことではないのじゃからの」


 ……真綿ちゃんが気を遣っているなんて。こんな場面が見られるとは、思ってもいなかった。

 紗月ちゃんもそんな真綿ちゃんの様子には気づいたのだろう。「ま、いいわ」と、自らの気持ちの高ぶりに終止符を打っていた。


「時代のズレはあるわけじゃが、過去に関わりのあった者がこうして集まっておる。おぬしら三人がわらわのそばにおるというのも、深い(えにし)を感じるのぉ」


 場を取りまとめるように、という考えがあったのかはわからないけど、真綿ちゃんは感慨深げにつぶやく。

 ただ、


「あはははは。あの春歌さんって人も?」

「……あやつのことは、無視しておきたいところじゃが……」


 勇授くんからのツッコミには、眉根を寄せるばかりだった。


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