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あの娘(こ)は電波か本物か  作者: 沙φ亜竜
第3話 わらわをおびやかすのは、どこの誰じゃ!?
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-6-

 さて、五人でお日様ランドに来てみた真綿ちゃんたちだったわけだけど。

 遊園地などの乗り物というのは、なかなか五人で一緒に乗れるものはない。

 というわけで、ここはふた組に分かれておこう、という話になった。


 その結果決まったのが、勇授くんと真綿ちゃんの組と、孝徳くんと紗月ちゃんと唯夢ちゃんの組だ。

 唯夢ちゃんは勇授くんの妹なのだから、一緒のほうがいいんじゃないかという意見もあったのだけど、それは紗月ちゃんが否定した。

 紗月ちゃんいわく、勇授くんと真綿ちゃんのふたりに小さい唯夢ちゃんを任せるのは心配だから、とのこと。


「ゆいむ、小さくなんてありません!」


 と言って、唯夢ちゃんが可愛らしく頬を膨らませていたけど。


 とりあえず、組み合わせも決まったところで、思う存分、お日様ランドを楽しむことに専念し始める。

 組分けしたとはいっても、一緒に乗るのを分けるだけで、どれに乗るかはみんなで決め、列がある場合には一緒に並んだ。

 途中、サービス券を使って昼食を取ったときを除いて、ひたすらたくさんの乗り物などを楽しむ真綿ちゃんたち。


 ただ真綿ちゃんは、どうもちょっとだけ、楽しむ方向性が違っているように思えた。

 ともあれ、相手が相手だけになかなか上手くはいかない様子。

 どういう感じだったのかというと……。




 その1。ジェットコースター。


 きゃーきゃーと叫ぶ女の子と、ぼくがついてるから大丈夫だよ、と声をかける男の子。

 といったことを想像したのだろうけど。

 ジェットコースターに乗っているあいだは安全装置でがっちりと体を固定されるため寄り添ったりもできず、どちらにしても風を切る音でまともに会話なんて交わせない。

 降りたら降りたで足はふらつき、しかも真綿ちゃんは酔ってしまったようで、色気もなにもない展開に……。


「真綿、大丈夫?」


 と、木陰で背中をさすられることになるなんて、真綿ちゃんとしては屈辱だっただろう。

 もっとも、そんなことを考えていられる状態ではなかったみたいだけど。




 その2。コーヒーカップ。


 さすがに絶叫マシーン系は無理があったかのぉ、と思い直し、楽しく笑い合えそうな乗り物を選んでみた真綿ちゃん。

 ところが、コーヒーカップというのもなかなかハードな乗り物で、しかも勇授くんのテンションが意外にも高まり、真ん中のハンドルをひたすらぐるぐると回転させるという行動に出たりして、大変なことになっていた。

 結果、再び真綿ちゃんは酔ってしまい、降りたあとに足もとはふらふら、顔は青ざめ、またもや木陰で背中をさすってもらう羽目に。




 その3。お化け屋敷。


 乗り物系はダメじゃ!

 ということで、次に選択されたのはこれ。


「きゃあ、怖いのじゃ」


 真綿ちゃんらしくなく怖がって、薄暗がりのお化け屋敷の中、勇授くんに身を寄せる。

 ここまでやったなら、いくら鈍感な勇授くんといえども、いい雰囲気になる……かと思いきや。


「うわああああああああああ!」


 ビクッ!

 真綿ちゃんのほうが驚いてしまうほどの叫び声を上げ、勇授くんは逃げるようにお化け屋敷を駆け抜けてしまう。

 どうやら勇授くんは、お化けが心底苦手みたいだった。


「ちょ……、待つのじゃ勇授! わらわを置いていくでない!」


 こんなところでひとりぼっちになるのは、さすがに嫌じゃ!

 そう思って必死に追いかける真綿ちゃん。

 というわけで、なんの進展もなく一瞬にしてお化け屋敷終了。




 その4。観覧車。


 こ……これなら定番じゃろう! 今度こそ……!

 意気込んで乗り込む真綿ちゃん。


 ここならお化けなんていないし、完全に密閉された空間だから逃げ出すこともできない。

 そう思ったのだろうけど、今度は自分自身のことが考慮から抜け落ちていた。

 真綿ちゃんは、高所恐怖症だったのだ。


「うぐあっ、めちゃめちゃ高いぞよ!? ひぃ、風でゴンドラが揺れておる! 落ちたりしないかや!?」


 勇授くんのことを考えている余裕なんてなく、ガタガタと震えるばかり。

 高さだけならジェットコースターだってかなりあったわけだけど、観覧車の場合ゆっくりだからか、ジェットコースターよりも高さを意識してしまうようだ。


 くぅ……、どうしてこうも、思いどおりにならないのじゃ……!

 などと悔やみつつも、真綿ちゃんは頭を抱えてガタガタと震え続ける。

 でも。


「真綿、大丈夫?」


 そっと、

 勇授くんが真綿ちゃんを包み込む。

 その温もりと優しさを感じて、真綿ちゃんの体の震えも、収まってきたようだ。


 …………なんだか、落ち着くのじゃ……。


 ぎゅっ……。

 控えめながら勇授くんにしがみつく真綿ちゃんと、そんな真綿ちゃんを優しく抱きしめ返す勇授くん。


「ぼくにつかまってれば、落ちないからね」


 ……いやいや、それはないでしょ。落ちるなら一緒に落ちちゃうだろうし。

 思わずそんなツッコミを入れたくなってしまう場面だけど。

 若干ずれた感覚の勇授くんではあったものの、真綿ちゃんはとても幸せそうだった。




 なかなか思惑どおりにいかなかった真綿ちゃんだったけど、こうして最終的にはどうにか望んだような結果を得ることができた。

 とはいえ、そのときのふたりの様子を隣のゴンドラからバッチリのぞき見ていた残りの三人によって、あとでたっぷりと冷やかされてしまうことになるのだけど。


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