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プロローグ
まだ春と呼ぶには早い、肌寒い3月の空気。
そんな空気のなか、少女は立っていた。
なにもせず、ただ立っているだけ。
瞬きをすることもなく・・・。
生きている雰囲気さえも感じさせず。
ただ立っていた。
道行く人はそんな少女を無視するかのように通り過ぎていく。
まるで・・・そこにいないかのようなふるまい。
まるで・・・この冷たい空気のように。
家に帰っても少女は無視され続ける。
そこにいてはならない存在かのように。
誰からも見つけてもらえない・・・。
それは彼女がユメノクニへと向かう存在だからだ・・・。