~周囲の変化と俺の体調変化~ part3
今は本当に10月ですか? と疑いたくなるようなこの暑さ……ヤバイ。
でも油断して、パンツ一枚で寝ると風邪は余裕で引くw
この執筆スピードがいつまで続くことやら……。
「じゃあそろそろ私の目的を、話させて貰いますね」
雨沢は急に真剣な顔をしたかと思うと、先ほど俺の小指を襲ったイスに座り、俺に座るように促してくる。と言っても、座る場所は床しかないので、なにか釈然としないのだが。
「先輩は、夢ってどのようなものだと思います?」
「は? 夢?」
また夢の話か。
「はい。夢です」
「夢ねぇ。まぁ不思議な現象と言えばそうだよな。構造はよく分からないが、別に夢で困ったことなんて一度もないし、いいものだと思うぞ。俺もよくマクラの下に好きなアニメキャラの写真を入れて、夢に出てくるように願ってたし。夢は妄想を体験させてくれる最終手段だと、俺は思う」
「そうですか……やっぱり変態なんですね、先輩」
年下にしんみりと変態宣告を受けた高校生、その名は浦隼人。現在精神パラメーター急低下中でございます。
「せっかくマジメに答えてやったのに、その受け答えはないんじゃないか!」
「いやそもそも私はそんな答えを期待していたわけでもないですし、根本的に質問内容を履き違えている先輩のほうに非があると思いますよ。なので逆に謝ってほしいくらいです」
む、少しカチンときたぞ今の言葉。
大体、なんで俺はこんな不法侵入少女の質問に律儀に答えちゃったりしてるんだよ。人と関わってこなかったと言っても、コイツにだけは関わってはいけない、そんな気がする。
「じゃあ、お前が望んでいた答えってのは、なんだよ?」
なので、さっさと満足してもらい、さっさと目的を達成してもらい、さっさと関係を切ってしまおう作戦を実行します。
「まぁ、正直に言えば先輩の答えなんてどうでもいいのですが……」
俺の右手、震えるな。怒りを覚えたとしても相手は女、過ちを犯すな!
「まぁいいでしょう、いつかは耳にすることだと思いますし、私のことについて少々話させてもらいます」
「ずいぶんと自分勝手な話題の切り替え方だな……」
「夢と私、それは言わば、切っても切れない関係。赤ちゃんにベビーカー、小学生にランドセル、中学二年生にに妙なテンション、そんなあたりまえの組み合わせのように、私と夢は一生のパートナーとなるような、そんな関係」
雨沢は一度空を見上げるようなそぶり(実際には美少女ポスターが貼ってある天井)を見せた後、唐突にピシッと、こちらに人差し指を向け、
「知ってます先輩? 人の夢って見ることが出来るんですよ?」
「ぇ――、え?」
人の夢を見る? ……どゆこと?
ポカンと口を開けていたのが自分でも理解出来た。それくらい、コイツの言っていることに繋がりが見えない。
「そうですね例えば、先輩が空を飛んでいる夢を見たとします。大空を、自分の両手だけを使って有意義に飛んでいる。それはもう最高の気分でしょうね。で、その夢を私は第三者目線で見ることが出来る。言わば、先輩が空を飛んでいるのを飛行機の中でゆったりと眺めることが出来るといった、そんな感じです」
でもですね、と雨沢は一度間を空け、
「ここが難しいところなんですが、夢って必ずしも自分が主人公とは限らないじゃないですか? もしくは、たとえ自分が主人公だったとしても、その自分を第三者目線で眺めるといった夢も存在する。そういった場合、私がその夢を見ようとしても、「第三者目線」という席はすでに取られているわけですから、その夢を見ることが出来なくなるんです」
「ちょ、ちょっと待てよ。人の夢を見る? そんなことが本当に出来るのかよ?」
あまりにも現実ばなれしていて、理解が追いつかない。まず、なんでそんな話を俺にするのかという第一の疑問さえ解決していないのに、色々な情報を詰め込んでくるなって話だ。お前は詰め放題の袋に限界以上の野菜を突っ込む主婦か! ……すべってない、決してすべってないぞ!
「裏世界じゃ、今じゃ当たり前にように人の夢が売買されています。夢の中の出来事を分析すれば、その人がどんな生活を送ってきたのかなども分かっちゃいますしね。しかし、それは所詮人の夢を『見る』ことしか出来ない。そんな中で私は、ついに完成させたんです」
「それって、つまり……」
クイズの出題者が答えを言う瞬間のような活き活きとした表情で、
「二次元から三次元への進出、私は今まで『見る』ことしか出来なかった人の夢を、『体験』出来る機械を発明したんです!」
ババン! なんて効果音が聞こえてきそうな自信のこもった笑顔で、俺の頬に飴を押し付けてくる。やめい、ベトベトするわ。
しかし……体験? バーチャル体験みたいなものだろうか?