~周囲の変化と俺の体調変化~ part2
小説の1パートをどれくらいで終わらせればいいかよく分からず、何か変な始まり&終わり方になってしまっています。
読みやすさを第一に考えていきたい!!
一つ不思議なことがある。
なぜか目が開かないのだ。……いや訂正。目を開いた感覚はあるのだが、それによって周りの風景が網膜に映りこんでくることはなく、ただ暗いだけ。
まさか気絶している間に夜になってしまったのかとも考えたが、この部屋は例え豪雨の真夜中だとしても、周りに明るい建物が多くあるため、カーテンを閉め切ってもここまで真っ暗闇になることなんて在り得ない。
となると考えられるのは、俺の目になにか布的なものを被せて視界を奪っているということなのだが、不思議とそんな感覚は一切ない。
いったい何が起こっているのか、とりあえず起き上がって今の状況を確認しようとしたのだが、どうやらその行為も許されないらしい。
首、胸、腰、両腕、両手首、両太もも、両足首に金具のようななにかが架かっていて、実質起き上がることも出来なければ手を動かして周りの状況を確認することも出来ない。
……さて、ここまで冷静に今の状況を確認してきたが、正直もの凄く怖いぞ。
なんだ、なんなんだ? やべぇよおい、改めて考えてみたらなんだよこの状況。え? 俺なんか悪いことした? そりゃあ確かに一人本ばっか読んでたけど、迷惑をかけた覚えは一度もないよ? わ、やべ、むっちゃ怖くなってきた。汗止まんねぇよ……。だ、誰かー! 助けてよおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅ!
――プシューー
え? 何今の空気が抜けたみたいな音? まさか酸素抜かれてる? え、なんで? 真空パック状態にされちゃう? それでどこかの国に運ぶの? っていうか人間運ぶときに真空にするのじゃなくてそんなことしたら俺死んじゃうジャン! 酸素吸えないと生きれないよ俺! うああああああああああああああああ! こんなことならもっと友達作っとくんだった! 死んだとき悲しむのが肉親だけってなんか寂しいじゃありませんか!
「何泣いているんですか先輩。キモチが悪いので、早くそこから出てくれませんか?」
「ほうぇ? ……ぇ? え?」
死ぬ前に自分の人生でどこが悪かったのかとういう大反省会を頭の中で行っていると、唐突に頭上からおっとりとした、色を付けるとしたら入学式に子供たちの背中を優しく見守ってくれている桜の花の桃色みたいな、そんなフワ~とした声が聞こえてきた。ただし発言内容と顔の表情は、般若のようだったが。
「先輩のくせに情けありませんね(ペロペロ)、年下の私に気品に劣るようでは世も末ですよ(ペロペロ)」
「そんなキャンデーを必死こいて舐めている奴に言われたくないが……」
よく見ると、俺の体に架かっていた金具はすべて取れており、体は自由に動かすことが出来た。まだ痛む小指に若干の恐怖を覚えながら、体をゆっくりと起こす。……そこで改めて、俺がどんな場所に閉じ込められていたのか、そしてここがどこなのかを確認する。
どうやら俺はカプセル式の装置の中に監禁されていたらしい。
よく見ると頭にはまだケーブルらしきものが機械に繋がっている。さっきの空気が抜けたような音は、このカプセルが開いた音だったというわけか。
場所は一応俺の部屋……だよな? なんか見慣れないパソコンやら複雑な機械やらが所狭しと置いてあり、映画に出てくるどっかの秘密スパイの隠れ家みたいな状況になっている。
それでもここが俺の部屋だと判断出来た理由は、天井に貼ってあったアニメキャラのポスターのお陰なのだが、あまりにも部屋の状況とポスターに写っている美少女の表情が合ってなく、なんだかいつもは可愛らしい表情なのに、今は不気味な笑顔を浮かべている女スパイにしか見えないといった有様だ。あとで剥がそう。
「先輩って意外と寛大な心をお持ちなんですね。私の計算だと、この部屋の状況を見た先輩は、「え、マジかよ! 何々、美少女の次はSF? 俺ってば凄い体験しちゃってんじゃねぇの!」的な発言をしたあと、興奮して裸に靴下で私に襲い掛かってくると思いましたが、半分しか合っていませんでした」
「お前の中の俺、最低男過ぎるだろ。あと半分ってなんだよ半分って」
「先ほど『夢吸い取る君三号』から出てきたとき、発狂していたことと、あと私が美少女という部分です」
「……」
自意識過剰な上に、性格も中々の悪さだった。
恐らくコイツ、俺と同じで友達少ないんだろうな。そこだけは同情しといてやるよ。
「今何か先輩、私に対して在らぬ妄想と、侮蔑の眼差しを送りませんでしたか?」
「その考えが在らぬ妄想だ。俺はいつだって無頓着な人間であると自分でも自覚しているよ」
変な所で鋭い女だなぁ、おい。
「そうですか、信用度ゼロパーセントの発言、ありがとうございます」
「……ほんとお前、いい性格してるよな」
「ええ、よく言われます」
何を勘違いしたのか、俺の言葉に対し微笑んできやがったよこの女。まぁ恐らく心の中には恐ろしい量の罵詈雑言が埋めいているんだろうけど。
「ところで、そろそろお前が何をしようとしてるのか、教えろよ」
「何……とおっしゃいますと?」
「いや、この部屋の状況でなに誤魔化そうとしてんだよ。いったいお前は人の部屋で何やろうとしてんだよって聞いてんだ」
「先ほどから先輩、『ナニ』や『やろう』や『お前、なかなかいい体してんな』なんて卑猥な言葉を、よく堂々と美少女の前で言えますね。尊敬しますよ」
手に持った飴をコチラに突きつけながら、自称美少女は上目遣いでコチラを睨んでくる。
いちいちカンに触る発言をする女だなコイツ。あと、誰がいつそんな変態発言をしたんだよ。
と、今気づいたのだが、コイツの身長学校で会った時より縮んでいる気がする。
少なくてもこんな上下関係が生まれるほどの身長差はなかったはずだ。へたすると百五十ないんじゃないか?
「ああ、それはそうですよ。私学校にいるときはアレを着けていますから」
「あれ?」
「ええ。あれですよ、あれ」
そう言うと雨沢は、玄関の方向に体を向け、そしてその先にある何かを指差した。
……足だ。足がある。
少し薄暗い中にひっそりと浮かぶそのシルエットは、まさしく人間の足。
しかもご丁寧に学校で履く、一年生を示す緑色の上履きを履いているのがここからでも分かる。ちなみに二年生は黄色、三年生は青色だ。
「なんだ……あれ?」
「足ですね」
「馬鹿かお前は。なんだってのはアレの見た目の表現を聞いたんじゃなくて、なんで足が俺ん家の玄関に佇んでいるんだって意味のなんだだ」
「アレは私が発明したものです。コンプレックスを解消したいという乙女の願いを叶える魔法の一品、
『背伸び~る君三号』です」
「発明って……」
お前の家系は日々「タイムマシン」を作ることだけを目標にしている一族か!! と突っ込みたかったが、真顔で「そうですよ?」と言われるのが怖くてやめた。
そういえばさっきも『夢吸い取る君三号』なんて単語を当たり前のように使っていたし……、あながち俺のタイムマシン説も間違ってなさそうだ……。