春休みの終わりに
掃除とか、片付けとか…言われるとやりたくなくなるんだよな〜という経験をしたことはありませんか?
そんな時、掃除中に面白そうな物が出てきたら…ついつい気になっちゃいますよね。
「いいかげん部屋片付けしなさいよ〜」
少女のお母さんは階段の下から声をかけた。
「うるっさいな…はいはーい」
少女は返事をしつつも、スマホをスワイプする指を止めなかった。
この少女は今年で中学2年生になる。
新学期もそろそろ近づいて来たと言うことで、部屋の掃除をしろと最近うるさく母親に言われるようになった。
しかし、少女は自分の部屋どころか片付けそのものが大の苦手である。
期末テストが始まる頃には急にやる気が出るのだが、普段は全くと言っていいほど掃除をしない。
(しょうがないよね〜やる気出ないし、どうしようもなーい)
と、思っていたが…まだ母親が優しく言っているうちにやらなければ後で父親が帰ってきた時にダブル説教をされる未来が見える…
その場に弟もいれば最悪だ。
その様子をニマニマしながら見てくる弟の憎たらしさったらない。
「流石にやるかぁ…」
大きな溜息を盛大につくと、少女は物を整理し始めた。
勉強机は教科書やプリントに埋もれ、服はタンスやクローゼットからはみ出ている。
やるか…と思ったけれど開始早々片付ける気が失せる光景だ。
とりあえず、机の上から片付け始めることにした少女はプリントと教科書をまとめ始めた。
「うわ、教科書の他に漫画もそのまま置いてたのか…」
だんだん机の上が広くなってきたその時、何か丸っこい物が指先に触れた。
それは、ガチャガチャのカプセルのようだった。
どうやら結構前に買って中身を開けないまま放置していたらしい。
「何が入ってるんだろ…」
カプセルは案外簡単に開いた。
なかに入っていたのは、袋が3つ。1つは小さな草のような物が入った透明な袋、2つ目には砂利が入っていた。3つ目には、透明なビーズのような物が2つ。そして、赤茶色の小さな石。
袋と石の下には説明書のような紙が一枚入っていた。
『テラリウムを作ろう!』
少女は目を輝かせた。
自分だけの綺麗なアクアテラリウムが作れるキッドらしい。
部屋の掃除も忘れて、少女は説明書通りにキッドを組み立て始めた。
「この砂利を最初に敷き詰めて…草と石を好きなように配置…水を少し入れて、透明なビーズみたいなやつを2つ水の中に入れる…」
組み立て終えた頃には、夕飯の時間が迫っていた。
掃除は全然終わっていないが、なかなかの出来だ。
「ちょっとー!ご飯出来たよー!」
母親の声に返事をし少女はリビングと下りていった。
お腹もいっぱいになって、少女は自分の部屋へと戻る。
部屋は全く片付いていない。
(そうだぁ…片付けしなきゃいけないんだ…面倒だなぁ〜)
散らかった服を畳んでいると、音がした。
ピチャンッピチャンッ
何かが水の中で跳ねるような音だ。
少女は音のする方向を見た。
机の上、それも先ほど作ったアクアテラリウムから音がする。
そっと覗いてみると…
「うわぁ…!綺麗…!」
そこには、二匹の小さな魚がいた。
黒いまだら模様の魚と、赤と白の錦鯉のような魚。
二匹は気持ちよさそうにスイスイと冷たい水の中を泳いでいる。
(あのビーズみたいなのは、卵だったのかな…)
少女はしばらく見惚れていたが、ハッと我に返ると掃除を再開した。
「ただいま〜あぁ疲れた…」
しばらくすると、玄関から父親の声が聞こえた。
「おかえり〜」
続いて母親が返事をする。
少女は喉が渇いたので台所へと向かった。
「おかえり〜ちゃんと掃除終わったよ」
コップにジュースを注ぎながら少女が言うと、両親は目を丸くした。
「偉いじゃない!ちゃんと今日中に終わらせたのね」
と、母親。
「やっぱりやればできる子だな!」
と、父親。
少女は得意気に笑ってコップを持つとそそくさと部屋に戻った。
「最初からやっておけば良いのに…」とか、ゴタゴタ言われるのが嫌だというのもあったけれど、テラリウムの鑑賞の邪魔をされたくなかったというのが本音だ。
「本当に綺麗だなぁ〜」
うっとりとテラリウムを見つめる。
魚は自由にスイスイと水面を泳いでいる。
(いいな…自由で楽しそう。)
それに比べ、自分はそろそろ春休み終盤。面倒な学校が待ち構えているのである。
少女はその日、寝る支度をして早めに眠りについた。
夢を見た。冷たい水の中を魚と一緒に泳ぐ夢。
(冷たくて…気持ちがいい…いっそのこと、ずっとここにいられれば…)
目が覚めると、少女はいつも通りベットの上に
いなかった。
足元には砂利があり体は冷たい水に浸かっている。
(嘘、嘘でしょ?夢だよね?夢だよね?!)
体が上手く動かせない。
後ろを見ると作ったテラリウムにもいた二匹の魚がスイスイと泳いでいた。
「出して!出してよ!ねぇ!」
いくら叫んでも、誰もやって来ない。
絶望しかけた少女に、誰かの声が聞こえた。
「こらー、早く起きなさいよ〜?あら?聞こえてないの〜?」
お母さん!お母さんだ、きっと私が下りてこないから心配で来たんだ!
少女はここぞとばかりに声を張り上げた。
「ねぇ!お母さん!私はここだよ!」
少女の母親は、ベットを見て首を傾げた後、机を見た。
「あら可愛いお魚さんが3匹も。いつの間にこんなの買ったのかしら」
…え、3匹?
少女の母親の目には、黒いまだら模様の魚と錦鯉のような魚の他、
美しい白色の魚がスイスイと泳いでいるのが見えていた。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます!
掃除中で楽しそうなオモチャを見つけたら…皆さんはどうしますか?
また、次の作品も読んでいただけると嬉しいです!
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