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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

"生存契約"

掲載日:2026/04/14

「───それで」


「皮膚の大半を、陶器と交換したの?」



君は恥ずかしげに頷くと、僕から視線を逸らす


君の皮膚の陶製部分と、そうでない部分を視覚的に視比べる

僕は『実のところ君の皮膚組織は、陶器に劣るものでは全く無い』という事に気付き始めて居た


二人で向かい合って椅子に掛けて居るが、カーテンの隙間からの陽光が、さっきから君をきらきらと光らせ続けて居る

その煌めく反射もまた、肌と陶器の両方から遜色無く行われて居るように、僕には視えた



「貴方は」


「いいですよね」



「ボクと違って、綺麗な肌をして居ますから………」


絞り出すようにそう言うと、君は俯いて何も言わなくなる

僕は短く嘆息すると意を決して、まるで手袋を脱ぐように左手の皮膚を外して視せた



「僕の皮膚も、大半が造り物だよ」


君が、弾かれた様に顔を上げる

僕を視る瞳に、熱が籠ったような気さえした



「…………あまり視るな」


恥じらいながら、左手にまた皮膚を着せる



「綺麗なものじゃない」


君を視る

さっきまでの怯えたような少年は既にそこに居らず、君は僕と同じような───何かしらの技術的熱意、或いはフェティシズムを持った眼で僕を視るようになって居た



「───綺麗ですよ」


僕を視る君の、瞳が揺れて居る



「隠さないで下さい」


「先程の筋繊維、永遠にでも視て居たい程と感じました」



「───肌は綺麗になれなかったからな」


今度は、僕が伏し眼になる番のようだった



「躰のシルエットだけでも、綺麗にしたかったんだ」


君が傍らのテーブルに、バッグから出したクロッキーを拡げる

その上を優美なスケートの演技の様に、鉛筆が通り過ぎていく


一瞥しただけでも解った

君は何かしらの人躰に関わる設計を行い、それを僕に説明しようとして居た



「その筋繊維を使用した、『新しい人躰』の設計図です」


こんな物を読んで瞬時に内容が理解出来るのは、僕だけに違いない


躰の大部分は僕の筋繊維を切除、加工したものを使用し、皮膚は君の得意分野である陶器で制作、骨格は完全に一から制作───

彼の『設計』には、機能や倫理の一切を切り捨てた『美』が、造形というレンズを通して断固として顕現して居た



「この設計の場合」


「僕に言わせれば、『皮膚に拠る美』が不足するように視える」


君が、鉛筆を走らせる手を止める

そして次の言葉を促すように、こっちを視た



「僕ならば、この部分を陶器で無く皮膚にする」


指、

肩、

脇、

爪先……

『模造品ではなく、人間器官にしか美を表現出来ない部分』に、僕は順番に鉛筆で印を付けた


君は腕を組み顎に手を当て、視界を一歩引いたりなどして、真剣な面持ちで設計図を俯瞰し始める


………そして最終的に僕を視て、握手を差し出した



「自分では気付いてるか解らないが、君の皮膚は宝石のようだ」


部分麻酔を、自分の躰の数箇所に突き刺す

特有の酩酊が意識をとろけさせる



「接合を始めよう」


君の肩にも注射器を刺す



「僕たちは肉躰的に、今から『一つのもの』になるんだ」

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